相談者様のプロフィール
岡田真澄さん(仮)、38歳、神奈川県川崎市中原区在住。
医療機器メーカーの営業事務として15年勤務、年収約420万円。
夫(40歳・IT企業勤務)とは別居中で、長女(9歳・小学3年生)、長男(6歳・小学1年生)の2人の子どもを育てている。
2018年に夫婦で埼玉県さいたま市大宮区の投資用マンション(1LDK)を購入。購入価格2,800万円、現在のローン残債約1,950万円。
物件は夫が10分の7、真澄さんが10分の3の共有名義で、現在は賃貸中。
ご相談の内容
真澄さんは夫と共に、将来の教育資金や老後の備えとして投資用マンションを購入しました。頭金500万円のうち一部は真澄さんの貯金からも出したため、共有名義としました。しかし2022年頃から夫婦関係が悪化し、2024年6月に夫が別居。半年後には正式に離婚の意思を伝えられました。
貯金や車などの財産分与は比較的スムーズに進みましたが、投資用マンションで完全に行き詰まりました。夫は「俺が見つけて、ローンも俺名義なんだから俺のものだ」と主張。真澄さんは「頭金も出したし、共有名義なのに納得できない」と反論しましたが、具体的にどう処分すべきか分からず話が進みませんでした。
夜中に目が覚めると、「マンションどうしよう」「子どもの学費は大丈夫か」と不安が次々に襲ってきました。眠れない夜、布団の中でスマホで「離婚 投資マンション 共有名義」「財産分与 不動産 売却」などと検索し続けましたが、法律用語が多くて理解しきれず、余計に混乱するばかりでした。
長女の琴音が「ママ、最近元気ないね」と心配そうに言ってきたとき、思わず涙が出そうになりましたが必死にこらえました。子どもたちの前では笑顔を作りましたが、夜一人になると台所で泣いてしまうこともありました。母親に相談しても「とにかく財産はちゃんと貰いなさい」と言われるだけで、具体的な助けにはなりませんでした。
2025年9月、夫側から弁護士を立てると通告され、真澄さんも焦りを感じました。会社の先輩女性にぽろっと相談したところ、「私も離婚のとき不動産で揉めたけど、専門家に早めに相談して解決できたから大丈夫」とアドバイスを受けました。このまま放置すると不利になるかもしれないという不安が一気に高まり、相談を決意しました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談を受け、まず真澄さんの状況と希望を丁寧にお伺いしました。最も重視されていたのは、「子どもたちに経済的な不安を与えず、公平に分けてすっきり縁を切りたい」という点でした。共有名義のまま離婚後も元夫と関わり続けることは精神的に大きな負担になると判断し、早期売却の方向で進めることをご提案しました。
まず物件の査定を複数の不動産会社に依頼し、適正な市場価格を把握しました。査定額は約2,600万円で、ローン残債1,950万円を差し引いても約650万円の売却益が見込めることが分かりました。この売却益を持分割合(夫7割、真澄さん3割)で分配すると、真澄さんには約195万円が手元に残る計算になります。
次に、元夫側の弁護士と協議を行い、売却方針について合意を取り付けました。元夫は当初「自分のもの」と主張していましたが、共有名義である以上、一方的な処分はできないこと、売却益を持分に応じて分配することが法的に妥当であることを説明しました。また、売却を進めることで元夫側もローンから解放され、新生活を始めやすくなるというメリットを提示したことで、最終的に売却に同意していただけました。
賃借人には丁寧に事情を説明し、退去時期について調整を行いました。賃借人も理解を示してくださり、3ヶ月後の退去で合意。その後、室内をクリーニングし、購入希望者を募りました。立地が良く賃貸実績もあったため、約1ヶ月で買い手が見つかり、スムーズに売買契約を締結できました。
売却完了後、ローンを完済し、残った売却益を持分に応じて分配しました。真澄さんには約195万円が手元に残り、これを新生活の準備資金や子どもたちの教育資金として活用していただけることになりました。離婚協議も並行して進め、財産分与が完了したことで、その他の条件についても円満に合意に至りました。
相談者の声

最初は共有名義だから半分もらえると思っていましたが、持分割合があることを知りませんでした。でも、自分が出した頭金分はきちんと評価してもらえて、持分として権利が認められていたことが分かり、少し安心しました。
一番不安だったのは、夫が勝手に処分してしまうのではないかということでした。でも担当の方が「共有名義なので、お二人の合意がなければ売却も処分もできません」とはっきり説明してくださって、自分にも権利があることが分かりました。
売却するまでの間、賃借人の方への対応や不動産会社とのやり取りなど、全てサポートしていただけたので、本当に助かりました。子育てと仕事で忙しい中、自分だけでは絶対に進められなかったと思います。
元夫とは離婚後もう関わりたくないと思っていたので、マンションを売却してきれいに縁を切れたことが何よりの安心です。手元に残ったお金は、子どもたちの教育資金として大切に使いたいと思っています。夜も眠れるようになり、やっと前を向いて生活できるようになりました。
担当者のコメント

離婚に伴う不動産の処分は、感情的な対立が絡むため、非常にデリケートな問題です。特に共有名義の投資用マンションは、権利関係が複雑で、ご自身だけで解決するのは困難なケースが多くあります。
岡田さんの場合、共有名義であることを逆に活用し、元ご主人に対して「一方的な処分はできない」という法的根拠を示すことで、対等な協議のテーブルに着くことができました。また、売却という選択肢を提示することで、双方にとってメリットのある解決策を見出せました。
多くの方が「共有名義だから半分もらえる」と誤解されていますが、実際は持分割合に応じた分配になります。ただし、頭金の拠出状況や実質的な負担割合によっては、持分の見直しを求めることも可能です。早い段階で専門家に相談することで、ご自身の権利を正しく理解し、適切に主張することができます。
離婚後も共有名義のまま不動産を保有し続けることは、将来的なトラブルの種になります。相手方の返済が滞れば自分にも影響が及びますし、売却や活用の際には常に相手の同意が必要になります。可能な限り離婚時に清算することをお勧めします。お子様のためにも、早期に解決して新しい生活をスタートしていただきたいと思います。
