母の住環境を守りたいが兄弟は売却を主張。遺産分割協議がまとまらず家族関係が悪化してしまった
相談者様のプロフィール
松本恵子さん(仮)、52歳、千葉県船橋市在住。
市立小学校教諭として28年勤務、年収480万円。夫(54歳・会社員)と娘2人(24歳・21歳)の4人家族。
実家の家族は、昨年3月に父親(享年78歳)を亡くし、認知症初期の母親(76歳)、長男(56歳・会社役員)、次男(49歳・自営業)との4人兄弟姉妹。
遺産は実家の土地建物(評価額約4,500万円)と預貯金(約1,800万円)。
ご相談の内容
父親が急性心筋梗塞で亡くなった後、当初は「母親が住み続ける」という方針で一致していました。しかし、長男の雄一さんが「将来的なことを考えて売却して現金で分けるべき」と主張し始めました。次男の康夫さんも自営業の資金繰りに困っており、「早く現金化したい」と同調。恵子さんは教師という立場から「母親の住環境を変えるべきではない」と反対しましたが、兄弟からは「公務員だから安定収入があっていいよね」「現実的じゃない」と言われ続けました。
話し合いは次第に険悪になり、年末年始も実家に集まることができませんでした。恵子さんは週2回母親の様子を見に通っていましたが、母親は「お父さんはどこ?」と時々聞く状態で、家族の争いを理解できずにいました。恵子さんは夜中に目が覚めてしまうことが増え、スマホで相続関連の情報を調べては「家族がバラバラになるのでは」という不安に襲われていました。職場でも集中できず、子どもたちから「先生、大丈夫?」と心配される始末でした。
相談所からのご提案・解決までの流れ
まず、恵子さんの不安を整理し、遺産分割協議の選択肢を詳しく説明しました。実家を売却せずに済む方法として、「代償分割」という手法をご提案しました。これは、恵子さんが実家を相続し、兄弟に対して相続分に相当する現金を支払う方法です。
恵子さんの経済状況を詳しく伺い、住宅ローンの借り換えや教育ローンの見直しにより、月々の支出を約3万円削減できることが判明しました。さらに、実家の一部を母親の介護のために改修し、将来的には小規模なデイサービス事業として活用する可能性も検討しました。
兄弟との話し合いでは、中立的な立場から家族会議に同席し、それぞれの事情を整理しました。長男には将来の母親の介護費用について具体的な試算を提示し、次男には事業資金として必要な金額と返済計画を確認しました。最終的に、恵子さんが実家を相続し、長男に1,200万円、次男に800万円の代償金を分割で支払う合意に達しました。
相談者の声

最初は弁護士費用が数百万円かかると思っていましたし、家庭裁判所での調停は家族の恥だと感じていました。でも、実際に相談してみると、家族それぞれの事情を理解した上で現実的な解決策を提案していただけました。代償分割という方法があることも知らなかったので、とても勉強になりました。
何より、兄弟との関係を修復できたことが一番嬉しいです。お正月には3年ぶりに実家に集まることができ、母も喜んでいました。週2回の母の見守りも、今では兄弟で分担できています。教師の仕事にも集中できるようになり、子どもたちからも「先生、元気になったね」と言われます。一人で抱え込まずに、もっと早く相談すれば良かったと思います。
担当者のコメント

恵子さんは教師としての責任感が強く、家族の争いを恥ずかしく思われていました。しかし、相続問題は決して特別なことではなく、多くの家族が経験する課題です。重要なのは、感情的な対立に発展する前に、客観的な情報と選択肢を整理することです。
今回のケースでは、恵子さんの母親への想いを大切にしながら、兄弟の経済的な事情も考慮した解決策を見つけることができました。代償分割は経済的負担が大きくなりがちですが、長期的な視点で家計を見直すことで実現可能となります。家族の絆を保ちながら相続問題を解決できた好例だと思います。
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