0120-711-783
受付
時間
電話相談10:00~19:00
メール・LINE相談24時間受付

認知症の母の実家が空き家に。成年後見と売却手続きで悩み、維持費の負担に限界を感じていた

空き家

相談者様のプロフィール

中村真由美さん(仮)、52歳、神奈川県横浜市青葉区在住。
医療機器メーカーの営業事務職、年収420万円、勤続22年。
夫(55歳・会社員)、長男(27歳・都内勤務)、次男(24歳・実家暮らし)の4人家族。
実母(78歳)は千葉県市川市の実家で一人暮らしをしていたが、昨年秋にアルツハイマー型認知症と診断され(要介護2)、現在は横浜市内の有料老人ホームに入居中。
実弟(49歳)は大阪在住。実家は築45年の木造2階建て(母の単独名義)で、母の入居後は空き家状態が続いていた。

ご相談の内容

真由美さんの母は、5年前に父を亡くしてから市川市の実家で一人暮らしをしていました。昨年9月、自宅で転倒して救急搬送された際、物忘れの症状が顕著になり、認知症専門医を受診したところアルツハイマー型認知症と診断されました。真由美さんは週に2〜3回、仕事帰りに片道1時間半かけて実家に通い、母の様子を見守っていました。

転機となったのは今年1月、母がガスをつけっぱなしにして外出し、近所の方が通報したことでした。ケアマネージャーから「一人暮らしは限界」と告げられ、真由美さんは夫と相談の上、横浜市内の有料老人ホームへの入居を決断しました。入居一時金300万円と月額18万円の費用のうち、母の年金12万円では足りず、真由美さん夫婦が月6万円を補填することになりました。

母の入居後、市川の実家は空き家になりました。真由美さんは月2回、通気や掃除、郵便物の確認のために通い続けましたが、固定資産税年14万円、光熱費や火災保険で年6万円、庭の草刈りは1回2万円と維持費がかさみました。ある日、近所から「庭の木の枝が越境している」とクレームがあり、業者に3万円を支払って対応しました。

夫からは「いつまで空き家の維持費を払い続けるんだ。母さんももう戻れないんだから売ったらどうだ」と言われ、真由美さん自身も経済的な限界を感じていました。母の貯金は施設費用であと2年ほどでなくなる見込みで、その後は自分たちの老後資金を切り崩すことになります。しかし、母はときどき「いつか家に帰りたい」と口にし、真由美さんは罪悪感を抱いていました。

インターネットで「認知症 不動産売却」と検索すると、「成年後見制度」や「家庭裁判所の許可」といった専門用語が並び、何から手をつければいいのか分かりませんでした。不動産会社に査定を依頼しましたが、「認知症の方の名義では後見人がつかないと売却できません」と言われ、途方に暮れました。さらに大阪の弟から「売るなら売却代金は半分もらう権利がある」と連絡があり、「今まで介護も家の管理も全部私がやってきたのに」と憤りを感じつつも、法律的にどうなのか分からず反論できませんでした。

夜中に目が覚めて「母があと10年生きたら、いくらかかるのか」と電卓を叩いては絶望し、会社も休みがちになっていました。結局、私一人で全部背負っているという孤独感に押しつぶされそうになり、専門家に相談することを決意しました。

相談所からのご提案・解決までの流れ

初回相談で、まず真由美さんのこれまでの努力と苦労をしっかりと受け止め、状況を整理しました。認知症のお母様名義の不動産を売却するには、成年後見制度の利用が必要であること、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要になることを丁寧に説明しました。

提案として、司法書士と連携して成年後見人の申立てを行うことにしました。真由美さんご自身が後見人候補者となれること、後見人になっても日常的な施設費用の支払いや母の生活に必要な支出は問題なく行えることを確認し、不安を軽減しました。申立てから審判まで約3か月かかることを見越してスケジュールを立て、その間も空き家管理のアドバイスを行いました。

後見人選任後、家庭裁判所に居住用不動産売却の許可申立てを行いました。「お母様の今後の施設費用や医療費に充てるため」という明確な理由を示し、施設のケアマネージャーからの意見書も添付することで、約1か月半で許可を得ることができました。

売却活動では、築年数は古いものの駅徒歩圏内で土地面積が広いことから、リフォームまたは建て替え需要を見込んだ売り出しを行いました。近隣相場を踏まえ2,400万円で売却が成立し、諸経費を差し引いて約2,280万円が手元に残りました。

弟さんとの関係については、法定相続人として今後の遺産分割の際に考慮されることを説明し、現時点での売却代金は全額お母様の財産として後見制度のもと管理されること、真由美さんがこれまで負担した交通費や維持費については領収書を保管しておくことで将来の寄与分として主張できる可能性があることをアドバイスしました。弟さんには後見人である真由美さんから正式に売却の経緯を文書で報告し、理解を得ることができました。

売却代金は後見制度のもと適切に管理され、施設費用と医療費に充当することで、今後5年以上は安定した介護生活が送れる見通しとなりました。真由美さん夫婦の月6万円の補填も不要となり、経済的・精神的負担が大きく軽減されました。

相談者の声

相談するまでは、認知症の母の家を売ることに強い罪悪感がありました。母が「家に帰りたい」と言うたびに胸が痛み、でも現実的には無理で、その板挟みで苦しんでいました。夫や弟からはプレッシャーをかけられ、息子たちは無関心で、誰にも理解してもらえない孤独を感じていました。

初めて相談したとき、担当の方が「よく頑張ってこられましたね」と言ってくださって、初めて自分の努力を認めてもらえた気がして、涙が出ました。成年後見制度について、難しい言葉ではなく具体的な手順で説明してくださり、「これなら進められる」と思えました。

後見人になることで母の財産を勝手に使えなくなるのではと心配していましたが、施設費用の支払いや日常的な支出は問題なくできると知って安心しました。裁判所の許可が必要と聞いて最初は不安でしたが、申立て書類の準備も丁寧にサポートしていただき、思ったよりスムーズに許可が出ました。

売却が決まったとき、母に報告するのが怖かったのですが、ケアマネさんと相談して優しく伝えたところ、その日は理解してくれたようでした。認知症の母を裏切ったのではなく、母のために最善を尽くしたのだと、今は思えるようになりました。弟との関係も、正式な文書で報告することで納得してもらえ、余計な争いを避けられました。

何より、月6万円の補填がなくなり、市川への往復もなくなったことで、生活に余裕が生まれました。会社も以前のように通えるようになり、週末には母の施設を訪ねる心の余裕もできました。一人で抱え込まず、専門家に相談して本当に良かったです。

担当者のコメント

真由美さんは、お母様の介護と空き家管理の両方を一人で背負い、心身ともに限界に達していらっしゃいました。認知症のご家族の不動産売却は、法律的な手続きの複雑さに加えて、ご本人への罪悪感や家族間の意見の相違など、多くの心理的負担を伴います。

今回のケースでは、成年後見制度を正しく理解していただくことが最も重要でした。後見人になることで自由が奪われるというイメージをお持ちの方は多いのですが、実際には本人の利益のために適切に財産を管理し、生活を支えるための制度です。真由美さんが後見人となることで、お母様にとって最も身近で事情をよく知る方が意思決定できる体制が整いました。

弟さんとの関係についても、感情的な対立を避け、法的な手続きに則って透明性を保つことで、将来的なトラブルを予防できました。ご家族間の金銭問題は、曖昧にせず正式に記録を残すことが大切です。