相談者の情報
吉田健太郎さん(仮)、47歳、神奈川県相模原市南区在住。
中小製造業(金属部品メーカー)の営業職で勤続15年。年収は約480万円。
妻の美香さん(45歳)はスーパーでパート勤務(週4日、年収約120万円)。
長女の彩花さん(19歳)は美容系専門学校1年生、長男の颯太さん(16歳)は高校2年生で野球部に所属。
【物件・ローンの情報】
2007年に購入した築18年の戸建て住宅(木造2階建て・3LDK)。
購入価格は3,200万円で、住宅ローン残債は約1,850万円。
月々の返済額は約9.8万円(ボーナス払い併用で年2回各20万円)。
査定額は約1,400万円前後。
ご相談の内容
吉田さんの生活が変わり始めたのは3年前のことでした。勤務先の業績悪化により残業時間が大幅に削減され、月収が実質4万円ほど減少しました。それでも「一時的なもの」と考え、貯金を取り崩しながら生活を維持していました。
しかし2年前、長女の専門学校進学が決まり、初年度で約150万円の費用が必要になりました。奨学金を利用したものの、教材費や交通費など想定外の出費が続きました。同時期に長男の野球部活動でも遠征費や道具代がかさみ、家計は圧迫されていきました。妻がパート勤務を週5日に増やそうとしましたが、体調を崩して結局週4日に戻さざるを得ませんでした。
1年半前の夏、ボーナスが前年比30%減となり、初めて住宅ローンのボーナス払いができませんでした。銀行から督促の電話があり、すぐに支払いましたが「次はないようにしてください」と厳しく言われました。秋には車検代と長男の修学旅行費が重なり、クレジットカードのリボ払いを使い始めました。
冬のボーナス払いも遅延し、通常の月払いも2ヶ月滞納してしまいました。銀行から「このままでは法的措置を取らざるを得ない」という書面が届き、妻に初めて滞納のことを打ち明けました。しかし妻は「なんとかなるでしょ」と楽観的な反応で、吉田さんは消費者金融から30万円を借り入れて住宅ローンを支払いましたが、その返済が新たな負担となりました。
半年前、銀行から「期限の利益喪失通知」が届き、ローン残債全額の一括返済を求められました。同時に「競売手続きに入る可能性」という文言を目にし、初めて事の重大さを実感しました。夜、布団の中でスマホで「住宅ローン 払えない」「競売 回避」などを検索し、「任意売却」という言葉を初めて知りましたが、「本当に家を手放さなければならないのか」という思いと葛藤しました。
3ヶ月前、妻に競売の可能性を伝えると初めて深刻な表情になりました。長女は「私が学校辞めて働く」と言い出し、吉田さんは余計に追い詰められました。毎晩のように「任意売却 デメリット」「競売 任意売契 違い」などを検索しましたが、情報が多すぎて混乱し、「どうせ高額な手数料を取られるだけでは」という不信感もありました。
1ヶ月前、銀行から「競売開始決定通知書」が届きました。裁判所からの書類を開けた瞬間、手が震えました。その日の夜、妻の前で初めて泣きました。妻も泣きながら「二人で決めたことだから。でも、もう専門家に相談しよう」と言ってくれました。
決意の瞬間は2週間前でした。長男が「お父さん、最近元気ないけど大丈夫?」と声をかけてきました。いつも明るい息子の心配そうな顔を見て、「このままじゃダメだ。子供たちに心配かけ続けるわけにはいかない」と決意しました。週末、妻と二人で話し合い、「家は失うかもしれないけど、家族がバラバラになるよりマシ」という結論に至り、相談を決めました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
吉田さんご夫婦からのご相談を受けた時点で、競売開始決定通知が既に届いており、時間的な猶予がほとんどない状況でした。まず裁判所のスケジュールを確認し、競売の入札開始日までに任意売却を完了させる必要があると判断しました。
初回面談では、吉田さんの収支状況を詳細に把握し、任意売却後の生活設計も含めて総合的なプランを立てました。残債が約1,850万円に対し、査定額が約1,400万円とアンダーローン状態でしたが、債権者である銀行との交渉により、残債の返済計画について柔軟に対応してもらえる可能性を説明しました。
同時に、消費者金融からの借入やクレジットカードのリボ払いについても整理が必要でした。これらの債務整理について司法書士と連携し、任意売却と並行して進めることをご提案しました。
物件の売却活動では、お子さんの学校や奥様のパート先に通いやすいエリアで賃貸物件を探すことを優先しました。売却価格を適正に設定し、早期売却を目指す一方で、引っ越し先の目途が立つまで引き渡し時期を調整できる買主を探しました。
幸い、投資目的で物件を探していた買主が見つかり、引き渡し時期について柔軟に対応してくれることになりました。売買契約から決済まで約2ヶ月の猶予を設け、その間に吉田さんご家族が引っ越し先を決定し、お子さんの転校手続きなども落ち着いて進められるようサポートしました。
債権者との交渉では、売却後の残債約450万円について、吉田さんの収入状況を考慮し、月々2万円ずつの分割返済で合意を得ることができました。また、引っ越し費用として売却代金から30万円を確保することも認めてもらいました。
最終的に、競売の入札開始日の約3週間前に決済を完了し、無事に任意売却を終えることができました。吉田さんご家族は相模原市内の2LDKの賃貸アパート(家賃7.5万円)に転居し、お子さんたちも転校することなく通学を続けられる環境を維持できました。
相談者の声

正直、競売の通知が届いた時は人生が終わったと思いました。それまで妻にも言えず一人で抱え込んでいて、夜も眠れない日々が続いていました。相談するのも怖かったです。高額な費用を請求されるのではないか、騙されるのではないかという不安もありました。
でも、初めて電話で相談した時に担当の方が「よく相談してくださいましたね。まだ間に合いますから一緒に解決していきましょう」と言ってくれて、涙が出そうになりました。それまで誰にも責められることなく、むしろ励ましてもらえたことが救いでした。
任意売却について何も知らなかったので、「家を売っても借金は残るんですよね?」「ブラックリストに載ったらもう何もできないんですよね?」と不安だらけでした。でも、残債は分割で返済できること、引っ越し費用も出してもらえること、何より競売よりずっと良い条件で売れることを丁寧に説明してもらい、少しずつ希望が見えてきました。
家を手放すのは本当に辛かったです。長女が小学生の時に「自分の部屋ができた!」と喜んでいた顔、長男が庭で野球の素振りをしていた姿が忘れられません。でも今は、家という箱よりも家族という中身が大事だと思えるようになりました。
新しいアパートは狭いですが、家族4人で食卓を囲む時間は前より増えました。住宅ローンがなくなり、月々の返済も無理のない金額になったことで、気持ちに余裕ができました。妻も「お父さんの顔が明るくなった」と言ってくれます。相談して本当に良かったです。
担当者のコメント

吉田さんのケースは、業績悪化による収入減とお子さんの進学時期が重なり、住宅ローンの返済が困難になった典型的な例です。特にボーナス払いを併用されている場合、ボーナスが減額されると一気に返済が厳しくなります。
多くの方が吉田さんと同じように、家族に心配をかけたくないという思いから一人で抱え込み、相談が遅れてしまいます。しかし、競売開始決定通知が届いてからでも、まだ任意売却で解決できる可能性は十分にあります。
今回のケースでは、時間的な制約がある中で迅速に動く必要がありました。幸い吉田さんご夫婦の協力と、柔軟に対応してくださった買主、そして債権者の理解があり、お子さんたちの生活環境を大きく変えることなく解決できました。
任意売却は単に家を手放すだけでなく、生活を立て直すための前向きな選択です。残債の返済計画も収入に見合った無理のない金額に調整できますし、引っ越し費用の確保も可能です。一人で悩まず、できるだけ早い段階でご相談いただくことで、より多くの選択肢を検討できます。
住宅ローンの返済に不安を感じている方は、督促状が届く前に、ぜひ一度ご相談ください。
