
共有名義の不動産で、他の共有者が借金を滞納していると「自分の持分まで差し押さえられるのでは?」と不安になりますよね。
結論から言うと、あなたの持分が直接差し押さえられることは原則ありません。しかし、放置すると見知らぬ第三者と不動産を共有することになり、大きなトラブルに発展する可能性があります。
この記事では、共有持分が差し押さえられた場合に何が起こるのか、そしてあなたの状況に応じた最適な対処法を、わかりやすく解説します。差し押さえ前にできる予防策から、差し押さえ後の具体的な対応方法まで、実践的な情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも共有持分の差し押さえとは?基本を解説
共有持分の差し押さえとは、共有名義の不動産において、特定の共有者が債務を滞納した際に、その共有者が所有する持分割合のみが強制執行の対象となることを指します。
たとえば、親から相続した実家を兄弟3人で共有しているケースで、そのうち1人が借金を返済できなくなった場合、債権者はその人の持分(例:3分の1)に対して差押命令を申し立てることができます。この手続きは民事執行法に基づいて執行裁判所が行うもので、登記簿にも差し押さえの事実が記載されるため、法的に明確な状態となります。
重要なのは、あくまで「滞納者本人の持分のみ」が対象となる点です。他の共有者の所有権には直接影響しないため、あなた自身が債務を負っていない限り、あなたの持分が勝手に処分されることはありません。
なぜ差し押さえが起こるのか?主な3つの原因
共有持分が差し押さえられる原因は、主に債務の延滞によるものです。具体的には以下の3つのパターンが大半を占めています。
住宅ローンやカードローンなどの債務滞納が最も多いケースでしょう。金融機関からの借入金を長期間返済できない状態が続くと、債権者は法的手続きを通じて債務者の財産を差し押さえます。共有持分も財産の一部として扱われるため、差し押さえの対象となるのです。
次に固定資産税や住民税などの税金滞納があります。地方税法に基づく滞納処分では、裁判所を介さずに行政が直接差し押さえを実行できる点が特徴です。税金は連帯納付義務が発生する場合もあるため、注意が必要となります。
最後に損害賠償金などの支払い遅延も原因の一つです。交通事故の賠償金や、事業上のトラブルによる損害賠償など、裁判で確定した債務を履行しない場合も、強制執行の対象となります。
差し押さえられるのは「滞納者の持分のみ」が原則

民法の原則では、共有者それぞれが独立した所有権を持っているため、差し押さえは債務者本人の持分にのみ及びます。
例えば、父親の相続で取得した不動産を母親と子供2人の計3人で共有しており、そのうち1人の子供が消費者金融への返済を滞納したとしましょう。この場合、差し押さえられるのはその子供の持分(4分の1)だけで、母親や他の子供の持分(各4分の1ずつ)には法的な影響はありません。
登記事項証明書を確認すると、差し押さえの対象となった共有者の持分欄にのみ「差押」の記載がされ、他の共有者の部分には何も記載されないことからも、この区別は明確です。
したがって、あなた自身が債務を負っていない限り、あなたの財産権は法的に保護されています。ただし、後述するように間接的な影響が生じる可能性はあるため、完全に無関係とは言えない点には注意が必要でしょう。
【要注意】不動産全体が差し押さえられる例外的なケース
原則として滞納者の持分のみが対象ですが、例外的に不動産全体が差し押さえの対象となるケースも存在します。
一つ目は固定資産税の連帯納付義務が発生している場合です。地方税法では、共有不動産の固定資産税について、共有者全員が連帯して納税する義務を負うと定められています。つまり、ある共有者が固定資産税を滞納した場合、行政は他の共有者に対しても全額の納付を請求できるのです。この場合、不動産全体に対して滞納処分が行われる可能性があります。
二つ目は不動産全体に抵当権が設定されている場合です。共有者全員が連帯債務者として住宅ローンを組んでいるケースでは、一人でも返済が滞ると、金融機関は不動産全体に設定された抵当権を実行できます。この場合は持分ごとの差し押さえではなく、不動産全体が競売にかけられることになるでしょう。
これらの例外ケースでは、あなた自身が滞納していなくても財産を失うリスクがあるため、共有者の経済状況には十分な注意を払う必要があります。
他の共有者の持分が差し押さえられたら、あなたに起こる3つのこと

共有者の持分が差し押さえられても、あなたの所有権自体は守られます。しかし、それで終わりではありません。差し押さえ後の手続きの流れを知っておくことで、将来起こりうるトラブルに備えることができるでしょう。
ここでは、差し押さえから競売、そして新たな共有者の出現まで、時系列で何が起こるのかを解説します。特に最後のステップで発生するトラブルは、あなたの生活に直接的な影響を及ぼす可能性が高いため、注意深く確認してください。
1. 共有持分が「競売」にかけられる
差し押さえられた持分は、最終的に裁判所による競売手続きにかけられます。これは民事執行法に基づく強制競売で、執行裁判所が売却基準価額を決定し、入札によって買受人を決める仕組みです。
競売では、不動産全体ではなく「持分のみ」が売却対象となります。例えば、3分の1の持分が競売にかけられる場合、買受人が取得するのもその3分の1の共有持分権だけです。ただし、持分のみの購入では不動産全体を自由に使えないため、通常の不動産市場価格よりもかなり安い価格で落札されるのが一般的でしょう。
競売の情報は裁判所のウェブサイトや競売物件情報サイトに公開されるため、不動産投資業者や専門の買取業者が入札に参加します。入札期間が終了し、最も高い価格を提示した者が買受人となり、代金を納付すると所有権が移転する流れです。この時点で、登記簿上の共有者が変更されます。
2. 見知らぬ第三者(多くは不動産業者)が新たな共有者になる
競売で持分を落札するのは、ほとんどの場合、共有持分を専門に扱う不動産業者です。一般の個人が共有持分のみを購入することは稀で、この分野に精通した専門業者が買受人となるケースが大半を占めます。
これらの業者は、持分を取得した後に他の共有者へ買取を持ちかけたり、共有物分割請求訴訟を起こして不動産全体の売却を求めたりすることを前提にビジネスを行っています。つまり、最初から「利益を得るために共有関係を利用する」目的で参入してくるのです。
あなたにとっては、これまで家族や親族だった共有者が、突然ビジネスライクな不動産業者に変わることを意味します。相続で取得した実家を兄弟で共有していた場合、ある日突然、見知らぬ会社が共有者として登場し、連絡を取ってくるという状況になるでしょう。この段階から、本格的なトラブルの始まりとなります。
3. 新たな共有者との間でトラブルが発生する
新しい共有者となった不動産業者は、投資した資金を回収するために様々な法的手段を講じてきます。具体的には以下のようなトラブルが発生する可能性が高いでしょう。
賃料相当損害金の請求は最も頻繁に起こるトラブルです。あなたがその不動産に居住している場合、新たな共有者は「自分の持分に相当する部分を使用している」として、賃料相当額の支払いを求めてきます。例えば、3分の1の持分を持つ業者から、月々の家賃相当額の3分の1を請求されるケースです。
共有物分割請求訴訟も深刻な問題となります。民法第256条に基づき、共有者はいつでも共有状態の解消を求めることができます。業者はこの権利を行使し、不動産全体を売却して現金化することを裁判所に求めてくるでしょう。裁判所が競売による分割を命じた場合、あなたの意思に関係なく、住んでいる家が売却されてしまう可能性があります。
安価での持分買取要求も典型的な手法です。業者は「このまま訴訟になれば費用も時間もかかる」と交渉を持ちかけ、あなたの持分を市場価格より安く買い取ろうとします。精神的な負担を理由に、不利な条件で売却してしまう方も少なくありません。
ケース別|共有持分の差し押さえへの具体的な対処法

ここからは、あなたの状況に応じた具体的な対処法を解説します。差し押さえ前と後では取れる選択肢が異なるため、タイミングを見極めた早期対応が重要です。
それぞれの方法について、実行する際の注意点や必要な手続きも含めて説明しますので、自分の状況に最も適した方法を見つけてください。
【差し押さえ前】にできること
差し押さえが実行される前であれば、比較的多くの選択肢が残されています。この段階での対応が、その後のトラブルを大きく左右するでしょう。
早めの行動を取ることで、競売や見知らぬ第三者の介入を防ぎ、共有関係を自分たちでコントロールできる可能性が高まります。以下では、不動産を守りたい場合と手放したい場合に分けて、具体的な方法を紹介します。
不動産を守りたい場合①:滞納者の持分を買い取る
共有者が債務を抱えている段階で、その持分をあなたが買い取る方法です。持分の売買契約を結ぶことで、差し押さえ前に共有関係を整理できます。
この方法の最大のメリットは、第三者の介入を完全に防げる点です。家族間や親族間で不動産を守りたい場合、特に実家などの思い入れのある物件では有効な選択肢となるでしょう。買取価格は市場価格よりも低めに設定されることが多く、当事者間で自由に決められます。
ただし、詐害行為取消権には十分注意が必要です。債権者を害する目的で財産を移転したと判断されると、売買契約自体が取り消される可能性があります。具体的には、明らかに安すぎる価格での売買や、差し押さえ直前のタイミングでの取引は、詐害行為とみなされるリスクが高いでしょう。
適正な時価での取引であることを示すため、不動産鑑定士による査定を受けておくことをおすすめします。また、売買契約書は司法書士に依頼して適切に作成し、代金の支払いも銀行振込など記録が残る方法で行うべきです。
不動産を守りたい場合②:滞納者の債務を肩代わりする(第三者弁済)
共有者の債務をあなたが代わりに返済する方法が第三者弁済です。民法第474条に基づき、債務者以外の第三者でも債務を弁済することができます。
この方法を選ぶメリットは、共有者本人が債務から解放され、差し押さえそのものを防げる点です。特に家族間では「困っている家族を助けたい」という思いから選択されることが多い方法でしょう。手続きとしては、債権者に対して弁済の意思を伝え、指定された口座に返済額を振り込むだけで完了します。
ただし、弁済した金額については求償権が発生します。これは、あなたが立て替えた金額を後日、債務者本人に請求できる権利です。とはいえ、経済的に困窮している共有者から実際に回収できるかは不透明でしょう。結果的にあなたの負担となる可能性が高いため、資金面での覚悟が必要となります。
また、一度肩代わりすると「またお願いできる」と思われ、繰り返し依存されるリスクもあります。第三者弁済を行う際は、今後の関係性も含めて慎重に判断すべきです。
不動産を手放したい場合:共有者全員で不動産全体を売却する
差し押さえ前であれば、共有者全員の合意のもとで不動産全体を通常の不動産市場で売却できます。これは金銭的に最も有利な方法と言えるでしょう。
共有持分のみの売却と比較すると、不動産全体の売却は市場価格で取引されるため、はるかに高い金額で売れます。売却代金は各共有者の持分割合に応じて分配されるため、公平性も保たれます。例えば、3,000万円で売却できた不動産の3分の1の持分を持っていれば、1,000万円を受け取れる計算です。
手続きとしては、共有者全員が売買契約書に署名・押印する必要があります。一人でも反対すれば成立しないため、事前に十分な話し合いが欠かせません。不動産仲介業者に依頼し、適切な査定額を提示してもらうことで、共有者全員が納得しやすくなるでしょう。
債務を抱えている共有者にとっても、売却代金で債務を整理できるメリットがあります。差し押さえで競売にかけられるよりも高く売れるため、債権者への返済に充てられる金額も多くなるはずです。
【差し押さえ後】にできること
差し押さえが実行され、競売手続きが始まってしまった後でも、対処法は残されています。ただし、選択肢は限られ、スピーディな判断が求められる状況です。
競売の入札期間は通常1週間程度と短く、その間に決断しなければなりません。ここでは、差し押さえ後の現実的な対応方法を2つ紹介します。
不動産を守りたい場合:競売で持分を自分で落札する
競売に参加し、差し押さえられた持分を自分で落札する方法です。競売は誰でも参加できるため、入札に必要な保証金を用意できれば、あなた自身が買受人となることが可能です。
この方法の利点は、見知らぬ第三者が共有者になることを防げる点でしょう。競売での落札価格は市場価格より安いことが多いため、通常の売買よりも低いコストで持分を取得できる可能性があります。落札後は代金を納付し、登記手続きを経て正式に持分を取得する流れです。
ただし、競売参加には売却基準価額の20%程度の保証金が必要となります。また、他の入札者がいた場合、最高額を提示しなければ落札できません。不動産業者などのプロが参加していると、予想以上に高い金額になることもあるでしょう。
さらに、落札できなかった場合は結局、第三者が共有者となってしまいます。確実性を求めるなら、次に紹介する方法の方が現実的かもしれません。資金の準備ができるか、競り合いになった場合の上限額をどこまで設定するかなど、事前の計画が重要です。
不動産を手放したい場合:自分の共有持分のみを専門の買取業者に売却する
共有関係から抜け出したいなら、あなた自身の持分を専門の買取業者に売却する方法が最も現実的でしょう。この方法は、他の共有者の同意が一切不要で、あなた単独の判断で実行できる点が大きな特徴です。
共有持分の買取を専門とする業者は、競売後に参入してくる業者と交渉するストレスや、賃料相当損害金を請求されるリスクを避けられる点を理解しています。そのため、持分のみの売却でも適正な価格で買い取ってくれることが多いです。
手続きも非常にシンプルで、査定を依頼してから最短数日で現金化できる場合もあります。登記手続きは買取業者が手配してくれるため、複雑な法的知識も不要です。売却後は共有関係から完全に離れることができ、その後のトラブルに巻き込まれる心配もなくなるでしょう。
ただし、不動産全体を売却する場合と比べると売却価格は低くなります。それでも、長期的なトラブルや精神的な負担を考えれば、早期に共有関係を解消できるメリットは大きいはずです。複数の業者から査定を取り、信頼できる専門業者を選ぶことが成功のポイントとなります。
共有持分の差し押さえに関してよくある質問(Q&A)

共有持分の差し押さえについて、実際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。細かい疑問を解消することで、より的確な判断ができるようになるでしょう。
Q. 差し押さえられたら、私にも通知は来ますか?
A. 原則として、他の共有者への直接的な通知義務はありません。
差押命令は債務者本人と債権者に送達されますが、他の共有者に対しては法的な通知義務が設けられていないのが実情です。ただし、登記簿には差し押さえの事実が記載されるため、登記事項証明書を取得すれば確認できます。
共有不動産に関する重要な変更を把握するには、定期的に登記簿を確認する習慣をつけるとよいでしょう。法務局の窓口やオンラインサービスを利用すれば、誰でも登記情報を取得できます。1通数百円程度のコストで、自分の財産状況を把握できるため、年に1〜2回程度の確認をおすすめします。
また、競売手続きが開始されると、裁判所が現地調査に来ることがあります。その際に初めて差し押さえの事実を知るケースも少なくありません。共有者の経済状況に不安がある場合は、より頻繁に登記情報をチェックする必要があるでしょう。
Q. 弁護士に相談すべきタイミングはいつですか?費用はどのくらいかかりますか?
A. 共有者に債務問題の兆候が見えた時点で、早めに相談することをおすすめします。
具体的には、共有者が返済に困っていると聞いた時、督促状が届いているのを知った時、または差し押さえの可能性を感じた時が相談のタイミングです。問題が小さいうちに専門家の助言を受けることで、取れる選択肢が広がります。
弁護士費用は相談内容や依頼する業務によって異なりますが、初回相談は30分5,000円〜1万円程度が一般的です。多くの法律事務所では初回無料相談を実施しているため、まずはそうした機会を利用してみるとよいでしょう。
実際に案件を依頼する場合、持分買取の交渉代理であれば着手金10万円〜30万円程度、共有物分割請求訴訟の対応であれば30万円〜50万円程度が目安となります。ただし、事案の複雑さや不動産の価格によって変動するため、必ず見積もりを取って確認してください。法律相談だけでも、今後の方針を明確にする大きな助けとなるはずです。
Q. 共有者が誰かも分からないのですが、どうすればいいですか?
A. 登記事項証明書を取得すれば、現在の共有者を確認できます。
法務局で不動産の登記簿を取得すると、所有者の氏名と住所が記載されています。相続などで何代にもわたって名義変更がされていない場合は、登記簿上の住所が古い情報になっていることもありますが、少なくとも法的な所有者は特定できるでしょう。
登記簿に記載された住所に手紙を送っても届かない場合は、住民票の取得や戸籍の追跡によって現住所を調べることが可能です。ただし、プライバシー保護の観点から、正当な理由がなければ他人の住民票は取得できません。共有不動産の管理や売却など、正当な目的があることを示す必要があります。
自分で調査するのが難しい場合は、司法書士や弁護士に依頼することで、職務上の権限を利用した調査が可能です。特に相続が絡んでいる場合、相続人の確定には戸籍を遡る専門的な作業が必要となるため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。費用は5万円〜15万円程度が相場でしょう。
まとめ:共有持分の差し押さえは早めの行動が鍵
共有持分の差し押さえは、あなた自身の持分に直接影響しないものの、放置すると深刻なトラブルに発展する可能性があります。
特に重要なポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 差し押さえられるのは滞納者の持分のみで、あなたの所有権は原則として守られる
- 競売後、見知らぬ不動産業者が共有者となり、賃料請求や共有物分割請求などのトラブルが発生する
- 差し押さえ前なら、持分買取や不動産全体の売却など多くの選択肢がある
- 差し押さえ後でも、競売参加や自分の持分売却という対処法が残されている
最も避けるべきは「何もせずに様子を見る」という選択です。時間が経つほど状況は悪化し、取れる選択肢も減っていきます。
共有者に債務問題の兆候が見られたら、まずは登記情報を確認し、早めに専門家へ相談しましょう。弁護士や司法書士、共有持分の買取を専門とする業者など、状況に応じた相談先があります。初回無料相談を活用すれば、費用をかけずに方向性を定めることも可能です。
また、自分の持分を売却して共有関係から抜け出したい場合は、信頼できる買取業者に査定を依頼してみてください。複数社から見積もりを取ることで、適正な価格を把握できるでしょう。
共有持分の問題は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることが解決への近道です。早めの行動で、あなたの大切な財産を守りましょう。

