【相談者の情報】
菊地拓也さん(仮)、43歳、埼玉県川口市在住。
大手外食チェーン店長、年収約520万円、勤続22年。
2023年春より別居中で、現在は川口市内の賃貸アパートにひとり暮らし。
元妻・彩香さん(仮・40歳)と長男(15歳・中学3年生)、長女(11歳・小学5年生)の2人の子どもが、購入したマンションに居住している。
【住宅・ローンの情報】
2013年に川口市内の分譲マンション(3LDK・72㎡)を購入。
購入価格は3,480万円で、住宅ローン残債は約2,890万円。
相談時点での市場査定額は約2,500〜2,600万円と、残債が売却額を上回るオーバーローン状態にあった。
月々のローン返済は10万4千円。
ご相談の内容
拓也さんが妻の不倫を知ったのは2022年の秋のことでした。問い詰めると彩香さんは否定せず、「あなたがいつも仕事でいなかった」と言いました。外食業界の店長として深夜まで働き続けてきた22年間を、その一言で総括されたような気持ちになったと言います。
話し合いを重ねましたが、修復には至りませんでした。2023年3月、拓也さんが家を出る形で別居が始まりました。子どもたちが住んでいる家だからと、ローンの支払いは拓也さんが続けることにしました。しかし手取り約36万円の中から、ローン10万4千円と賃貸アパートの家賃6万8千円、子どもへの仕送り3万円を合わせると、毎月20万円以上が住居費と仕送りだけで消えていく計算になります。別居から4ヶ月ほどで、貯金を切り崩し始めました。
離婚協議の中でマンションの扱いが最大の争点になりました。彩香さんは「子どもが卒業するまで住み続けたい」と主張し、拓也さんも子どもを追い出したいわけではないため強く言い出せませんでした。弁護士に相談したところ、「売却してローンを清算するか、どちらかが引き受けるしかない」という回答でした。しかし査定を取ると、売却額よりもローン残債のほうが数百万円多いことが判明。「売ったとしても借金が残るだけ」という現実に、拓也さんは行き詰まりを感じました。弁護士から「自己破産も選択肢のひとつ」と言われたとき、22年間まじめに働いてきた自分がその言葉と結びつかず、しばらくは何も調べられなくなったといいます。
状況が動いたのは2024年1月でした。住宅ローンの引き落としが、口座残高不足で初めて失敗しました。銀行からの通知を見て、「これ以上先延ばしにできない」と感じました。同じ日の夜、受験を控えた長男から「お父さん、俺の受験が終わったらどうするの?」と電話があり、「ちゃんと考えてる」とだけ答えました。電話を切った後、しばらく動けませんでした。翌日、「任意売却 埼玉 相談」で検索し、問い合わせフォームから連絡を入れました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回の相談では、拓也さんが「任意売却をすると信用情報がめちゃくちゃになる」「売っても借金が残るなら意味がない」という認識をお持ちでした。まず、この2点を丁寧に整理するところから始めました。
任意売却は確かに信用情報に影響しますが、競売に至った場合と比べて売却価格・手続きの透明性・引き渡し条件の柔軟性において大きな差があります。また、売却後に残る残債については、金融機関との交渉により月々無理のない金額での分割返済に切り替えることが可能なケースが多く、「売ったとしても一括で数百万円を求められるわけではない」という点をご説明しました。
次に、現在の状況を整理しました。ローンの引き落とし失敗は1回であり、金融機関への連絡と並行して任意売却の準備を進めることで、競売手続きが始まる前に対応できるタイミングでした。拓也さんの最優先事項は「長男の高校受験・入学が終わるまで子どもたちの住居を守ること」でしたので、そのスケジュールを軸に売却時期を設定する方向で進めることにしました。
彩香さんへの説明は、拓也さんを通じて段階的に行いました。「このまま放置すると競売になる可能性があり、その場合は引き渡し時期も価格も選べなくなる」という事実をベースに、任意売却のほうが子どもたちへの影響を最小限にできることを伝えていただきました。彩香さんも状況を理解し、売却への同意を得ることができました(ローン名義は拓也さん単独でしたが、居住者として彩香さんの協力が不可欠でした)。
長男の高校合格・入学手続きが完了した2025年4月以降を目標に売却活動を開始。川口市内の駅徒歩8分・9階という条件は子育て世帯に需要があり、適切な価格設定と早期の買い手獲得により、2025年6月に売却が成立しました。売却額は2,580万円。残債2,890万円との差額約310万円については、金融機関との交渉の結果、月々2万円程度の無理のない分割返済での合意に至りました。彩香さんと子どもたちは売却前に市内の賃貸物件へ転居し、引き渡しもスムーズに完了しました。
相談者の声

任意売却って、もっと後ろめたいことだと思っていました。調べれば調べるほど怖い情報ばかり出てきて、「やっぱり自分は逃げているんじゃないか」という気持ちになっていました。でも、相談してみると、今の状況を冷静に整理して、「次に何をすればいいか」を一つずつ示してもらえたので、少し落ち着けました。
一番助かったのは、子どもたちの転居タイミングを自分たちで決められたことです。長男の受験と入学が終わるまで動かなくていい、という方針を最初に確認してもらえたことで、「子どもを振り回してしまう」という罪悪感が少し和らぎました。正直、もっと早く相談していれば、あの眠れない夜の時間は短くて済んだと思います。
売却後に残った借金については、分割での返済になっていますが、金額が明確になっただけでも気持ちがちがいます。月々2万円なら、今の収入で無理なく払えます。50代をちゃんと立て直せる気がしています。
担当者のコメント

菊地様がご相談に来られたとき、非常に疲弊されていました。住宅ローンの問題だけでなく、離婚協議の精神的な負担、子どもたちへの気遣い、仕事との両立が重なった状態でした。最初の面談では、解決策よりも先に、現状の整理をきちんと行うことを優先しました。
今回のケースで特に工夫したのは、「売却時期の設計」です。任意売却は一般的に早期対応が有利ですが、菊地さんにとってのリスクは金融的なものだけではありませんでした。長男の受験期に家族の生活が大きく動くことによる影響を最小化するため、金融機関への状況報告を丁寧に行いながら、売却開始のタイミングを調整しました。
離婚や不倫といった事情を抱えて相談に来られる方は、「自分の状況を話すこと自体に抵抗がある」というケースが多いです。でも、事情を正確に把握できるほど、適切な対応策を考えることができます。恥ずかしいことは何もありません。問題が複雑に見えるほど、早めにご相談いただくことをお勧めします。
