相談者プロフィール
相談者の情報
宮本 浩二さん(仮)、48歳、埼玉県川口市在住。
自動車板金会社に板金塗装工として勤務。勤続23年。年収約420万円。
妻(45歳・スーパーパート勤務)、長男(20歳・自動車整備専門学校2年)、長女(16歳・高校2年)の4人家族。
物件・ローンの情報
2008年に購入した一戸建て(築17年・木造2階建て4LDK)。
住宅ローン残債は約2,050万円(変動金利)。月々の返済は約83,000円。
カードローン3社の残債合計は約185万円。住宅ローンは3ヶ月滞納中。
ご相談の内容
宮本さんが住宅ローンを組んだのは31歳のとき。当時の年収は480万円ほどあり、返済は決して楽ではなかったものの、毎月なんとか回っていました。カードローンを初めて使ったのは、長男が中学に入学した頃です。外壁の修繕費用やエアコンの買い替えなど、まとまった出費のたびに少しずつ借り入れが増え、「一時的なつなぎ」のつもりがいつのまにか3社・総額185万円になっていました。
状況が一気に悪化したのは2021年頃です。コロナ禍の影響で会社の受注が変動し、残業代が大幅に減少。一時期の年収は370万円台まで落ち込みました。さらに2023年には変動金利の上昇で住宅ローンの月々の返済が8,000円ほど増加。同じ時期に長男が自動車整備の専門学校に進学し、奨学金では足りない分を毎月3万円補填することになりました。住宅ローン83,000円、カードローン3社合計55,000円、長男への仕送り30,000円——月々の返済・支出の合計は約168,000円に達し、夫婦の手取りを合わせた約30万円に対して毎月3〜5万円の赤字が慢性化していました。
2024年4月、給与振込日に住宅ローンの口座残高が足りず、初めて引き落とし不能になりました。翌月は妻・由美さんのパート代をかき集めてなんとか対応しましたが、6月・7月も同じ状況が続き、3ヶ月の滞納になっていました。
9月、地方銀行から書面が届きました。「このまま滞納が続けば一括返済を求める場合がある」という内容で、「競売」という言葉も記載されていました。宮本さんはその書類を引き出しにしまい、しばらく妻には見せませんでした。「もう少し自分でなんとかできるかもしれない」という気持ちと、「妻に話したら終わりになる気がした」という思いが重なっていたと言います。
事態が動いたのは、妻の由美さんが先に通帳の残高に気づいたことがきっかけでした。ある夜、「ねえ、住宅ローン、止まってるよね」と言われ、宮本さんはその夜、すべてを話しました。由美さんは怒ることも責めることもなく、ただ黙って泣いていた——それがかえって宮本さんには重くのしかかりました。
その後も宮本さんは深夜に目が覚めてスマホで情報を調べる夜が続きました。「競売 流れ」「任意売却 デメリット」「滞納 自己破産 仕事 影響」——画面を見ながら、「このまま長女の大学進学も諦めさせることになるのか」という考えが何度も頭をよぎりました。相談窓口の問い合わせフォームを開いては閉じることを3度繰り返した末、由美さんが調べてきた「任意売却なら引越し費用が出る場合もある」という情報を見て、ようやく問い合わせを送信しました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談を受けた段階で、まず宮本さんの状況を整理しました。住宅ローンの残債が約2,050万円に対し、物件の推定売却価格が1,650〜1,750万円程度であることから、売却だけでは300〜400万円程度の残債が残る見込みです。加えてカードローン3社の残債が約185万円あるため、住宅ローンの解決と並行して、残債の取り扱いについても検討が必要な状況でした。
ステップ① 債権者への交渉と任意売却の合意取得 住宅ローンを担保する地方銀行に対し、競売ではなく任意売却での解決を提案しました。競売になれば銀行側も回収額が低くなるリスクがあるため、任意売却への合意を得ることができました。売却後に残る残債(いわゆる「残責務」)については、宮本さんの収入状況をもとに無理のない分割返済の交渉を行いました。
ステップ② 売却活動と価格設定 川口市内の物件として適正な市場価格を調査し、1,700万円を売り出し価格として設定。購入検討者への対応は当所が窓口となり、宮本さんご家族の生活に支障が出ないよう内覧のスケジュール調整も行いました。約2ヶ月の売却活動を経て、1,680万円での売却が成立しました。
ステップ③ カードローンの整理と専門家の連携 カードローン3社の残債約185万円については、弁護士と連携し、任意整理(借入先との直接交渉による返済条件の変更)を進めました。利息のカットと分割返済への切り替えにより、月々の負担を大幅に圧縮することができました。
ステップ④ 引越し先の確保と費用の調整 売却の交渉過程で、引越し費用として一定額を売却代金から充当できるよう債権者と合意しました。宮本さんご夫婦の希望通り、長男の通学に支障のない川口市内で賃貸物件を確保。月々の家賃は65,000円で、住宅ローン時代の83,000円から抑えることができました。
相談者の声

任意売却のことは自分でも調べていましたが、「信用情報に傷がつく」という記事を読んで、クレジットカードが一切使えなくなると思い込んでいました。でも相談してみたら、滞納した時点ですでに信用情報には記録されていると聞いて、「それなら早く動いたほうがよかった」と思いました。調べれば調べるほど怖くなって、動けなくなっていたのが正直なところです。
競売になったら引越し費用すら出ないという話は妻が調べてきたんですが、それを聞いて初めて「早く動かないとまずい」と思えた気がします。相談する前は「どうせ営業電話がかかってくるだけだろう」と思っていたんですが、実際に話を聞いてもらったら、こちらの状況を整理して順番に説明してくれて、初めて「出口がある」と感じました。
売却後に残った住宅ローンの残債についても、分割で返済できる形にしてもらえたので、今の収入でも無理なく払えています。長女の進学の話も、妻と少しずつできるようになってきました。翔太が整備士の資格を取って、さくらが進学できれば、とりあえず自分たちの役目は果たせたかなと思っています。
担当者のコメント

宮本さんのような状況、つまり住宅ローンとカードローンが複合的に積み重なっているケースは、一つひとつの問題を切り離して考えると解決策が見えにくくなります。住宅だけ解決してもカードローンが残れば生活は改善しませんし、逆にカードローンだけ整理しても、競売になれば引越し費用すら残らない。全体を一度に見渡して、優先順位をつけて動くことが重要です。
今回、宮本さんがもう少し早く相談してくれていれば、売却条件や残債の交渉においても選択肢が広がっていたことは確かです。ただ、「自分でなんとかしなければ」という気持ちで限界まで抱えてしまう方は非常に多く、それは決して責められることではありません。
一つお伝えしたいのは、滞納が始まってから競売の手続きが本格化するまでには一定の時間があるということです。その間に動けるかどうかで、結果は大きく変わります。「まだ間に合わないかもしれない」ではなく、「まだ間に合うかもしれない」という視点で、早めにご相談いただければと思います。
