相談者のプロフィール
【相談車の情報】
宮本さおりさん(仮)、38歳、東京都江東区在住。
大手物流会社勤務・営業事務職(年収約430万円)。
夫・浩二さん(41歳・システムエンジニア・年収約560万円)との2人暮らし。
【住宅・ローンの情報】
2019年に老後対策として投資用ワンルームマンション(23区内・築11年・専有面積約22㎡)を購入。
購入価格2,280万円、投資用ローン残債は約2,050万円(さおりさん単独名義)。
相談時点の推定売却価格は約1,650万円で、約400万円のオーバーローン状態。
空室期間は14ヶ月。
月々の持ち出し(ローン返済68,000円+管理費・修繕積立金12,000円)は約80,000円。
ご相談の内容
さおりさんが投資用ワンルームを購入したのは2019年のことです。職場の先輩から紹介された不動産営業担当者との面談で、「毎月の家賃収入が将来の年金補填になる」「節税効果もある」という説明を聞き、老後への備えとして購入を決めました。夫の浩二さんは「もっとよく調べた方がいい」と慎重でしたが、「月々の手出しは1〜2万円で済む計算だから問題ない」とさおりさんは判断しました。
購入後2年間は入居者が続き、毎月の家賃収入(78,000円)でローン返済と管理費をほぼ賄えていました。しかし2024年2月、入居者の退去をきっかけに状況が変わりました。管理会社から「築年数と設備の古さから、現在の賃料設定では入居が決まりにくい」と告げられ、賃料を78,000円から68,000円に引き下げましたが、内覧のキャンセルが続き、空室のまま時間が過ぎていきました。
空室になってからの14ヶ月間、毎月の持ち出しは約80,000円。2人の収入があるため生活は成り立っていましたが、「5年以内にマイホームを買おう」と夫婦で積み立てていた貯蓄が、ワンルームの維持費として出ていく状況が続きました。夫の浩二さんの不満は少しずつ大きくなり、ある夜「あのとき止めたのに」という言葉が出ました。さおりさんは反論できませんでした。購入を主導したのは自分だという事実があったからです。それ以来、夫婦間でこの物件の話題を避けるようになっていきました。
「売りたいが売れない」と気づいたのは2024年秋ごろです。残債約2,050万円に対し、査定価格は約1,650万円。差額は約400万円で、普通に売却しても残債を完済できないことがわかりました。「持ち続けることもつらい、でも売ることもできない」という状態が半年近く続きました。
「投資用マンション 売りたい オーバーローン」で検索しても、「損切りして売れ」「持ち続けるしかない」という両極端の情報しか見当たらず、自分の状況に合う答えが見つかりませんでした。そこで初めて任意売却という選択肢を目にしましたが、「住宅ローンだけの制度では」という思い込みがあり、投資用ローンに適用できるとは考えていませんでした。
ご提案・解決までの流れ
初回の相談では、さおりさんが抱えていた複数の誤解を一つずつ整理するところから始めました。
まず「任意売却は住宅ローンにしか使えない」という思い込みについて説明しました。任意売却は住宅ローンに限らず、不動産を担保とするローン全般において、債権者の同意のもと市場価格での売却を進める手続きです。投資用ローンであっても、債権者である金融機関が合意すれば手続きを進めることができます。
次に「残債約400万円を一括返済しなければならない」という不安についてです。任意売却後に残る残債は、さおりさんの収入水準に応じた分割返済の条件を金融機関と交渉する形をとります。一括返済が求められるケースは通常想定されないことを説明しました。
さおりさんが特に気にしていた「夫の信用情報への影響」については、ローンがさおりさんの単独名義である以上、原則として夫の浩二さんの信用情報には影響しないことをお伝えしました。一方で、さおりさん自身の信用情報には一定期間(一般的に5年程度)事故情報として登録されること、その間は新たに住宅ローンを組むことが難しくなる可能性があることも、正直にお伝えしました。「5年以内にマイホームを」というご夫婦の計画については、浩二さん単独名義での住宅ローンを検討するという選択肢があることも合わせて説明しました。
売却活動は、さおりさんが平日に勤務していることを考慮し、内覧の日程調整を週末・休日を中心に設定しました。金融機関への任意売却承諾の申請、売却価格の協議、残債の分割返済条件の交渉を順を追って進め、最終的に市場価格に近い条件での売却が成立しました。残債約400万円については、さおりさんの収入に見合った月々の分割返済条件で金融機関と合意しました。
相談者の声

任意売却って住宅ローンの人が使うものだと思っていたので、最初に「投資用ローンでも使えます」と言われたときは、正直半信半疑でした。でも手続きの流れを説明してもらって、自分の状況に当てはまることがわかって、ようやく動き出せた感じです。
夫の信用情報に影響しないと確認できたのも大きかったです。購入したのは私の判断だったので、夫に迷惑をかけたくなかった。その点をきちんと調べて答えてもらえたのは助かりました。
ただ、自分の信用情報に傷がつくことと、その間は住宅ローンが組みにくくなることは、相談してから初めてちゃんと理解しました。マイホームの計画を少し後ろ倒しにする必要が出てきましたが、夫は「その分は俺が組めばいい話だから、気にするな」と言っていました。
月8万円の持ち出しがなくなったことで、夫婦間の空気がだいぶ変わりました。解決してから初めて、この半年間どれだけ重かったかを実感しました。
担当者のコメント

宮本さんのケースで印象的だったのは、問題の構造は比較的シンプルだったにもかかわらず、「投資用には使えない」「残債は一括返済」「夫の信用にも影響する」という誤解が重なり、相談までの時間が半年以上かかっていた点でした。正確な情報にたどり着けないまま、出口のない状態に置かれていたわけです。
投資用ワンルームを購入した方の中には、空室リスクや売却時の価格下落リスクを十分に説明されないまま契約しているケースが少なくありません。「持ち続けるか売るか」の二択しかないと思い込んでいる方も多いのですが、任意売却という選択肢は投資用不動産にも適用できます。
信用情報への影響など、デメリットについてもご相談の場でお伝えするようにしています。メリットだけを強調して背中を押すのではなく、今後の生活設計に与える影響を含めて整理した上で、ご自身で判断していただくことが大切だと考えています。空室が続いていて出口が見えないと感じている方は、一度状況を整理する意味でも、早めにご相談ください。
