相談者様のプロフィール
藤田健一さん(仮)、52歳、神奈川県相模原市南区在住。
製造業の品質管理担当で、年収は約480万円。会社勤続28年。
妻(50歳・パート)、長女(24歳・社会人)、次女(21歳・大学4年生)の4人家族。
【物件・ローンの情報】
2007年に購入した築18年の戸建て住宅(3LDK)。
住宅ローン残債は約1,420万円。月々の返済は約8.5万円。 現在の市場相場は1,100万円前後。
ご相談内容
健一さんは28年間、同じ会社で真面目に働いてきました。2年前、岩手県に住む実父が脳梗塞で倒れ、要介護3の認定を受けました。母はすでに他界しており、姉の家庭も経済的に厳しい状況だったため、長男として父の有料老人ホーム費用を負担することを決めました。月々15万円の施設費用の大半を健一さんが担うことになりました。
もともと住宅ローンと次女の大学費用で家計はギリギリでした。そこに父の介護費用が加わり、妻のパート収入を合わせても毎月4〜5万円の赤字に。最初は貯金を切り崩していましたが、200万円ほどあった貯蓄は1年でほぼ底をつきました。健一さんは会社の同僚には一切相談できず、カードローンに手を出し始めました。
2024年4月、ついに住宅ローンの引き落としができなくなりました。銀行から督促状が届きましたが、来月のボーナスで何とかしようと先延ばしにしました。しかし夏のボーナスは次女の授業料と父の施設費の滞納分で消え、8月までに3ヶ月分の住宅ローンが未払いになりました。銀行の担当者から「このままでは競売になる可能性があります」と電話があったとき、健一さんは初めて現実を直視しました。
妻には状況を隠し続けていました。「仕事のストレスだから」とはぐらかし、夜中に布団の中でスマホを見ながら「住宅ローン 払えない」「競売 避ける方法」と検索する日々が続きました。検索結果には「ブラックリストに載る」「残債の一括請求」など不安を煽る情報ばかりで、どうしていいか分からなくなりました。
ある日、妻から「最近様子がおかしい。何か隠してない?」と問い詰められ、ついに全てを打ち明けました。妻は最初驚いていましたが、「もっと早く相談してくれればよかったのに」と涙を流しました。その夜、二人で今後のことを話し合い、任意売却の相談所に連絡する決意をしました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回のご相談では、健一さんご夫婦の現状を詳しく伺いました。まず任意売却と競売の違い、手続きの流れ、売却後の生活設計について丁寧にご説明しました。健一さんが最も心配されていた「残債の一括請求」については、現実的には分割返済の交渉が可能であることをお伝えし、不安を和らげました。
次に、現在の家計状況を整理し、カードローンの残債も含めた全体の債務を把握しました。父の介護費用については、公的な支援制度の活用や姉との負担割合の見直しも提案しました。健一さんは「姉に迷惑をかけたくない」と言われましたが、長期的に無理のない範囲での協力をお願いすることも大切だとお伝えしました。
債権者である銀行との交渉では、健一さんの事情を丁寧に説明し、任意売却への理解を得ました。売却活動は約3ヶ月間行い、相場に近い1,150万円で買い手が見つかりました。残債約270万円については、月々2万円の分割返済で合意することができました。
売却後の住まいについては、同じ相模原市内で家賃7万円の2LDK賃貸マンションを紹介しました。次女が就職すれば独立する予定だったため、夫婦二人での生活を考えた物件です。引っ越し費用の工面も含めて、無理のない生活再建プランを一緒に組み立てました。
相談者の声

相談するまでは、家族に心配をかけまいと一人で抱え込んでいました。特に父の介護費用を負担することは長男としての責任だと思っていたので、誰にも弱音を吐けませんでした。妻に打ち明けたときは、怒られると思っていましたが、逆に「一緒に考えよう」と言ってもらえて救われました。
任意売却については、ネットで調べれば調べるほど不安が大きくなり、相談するのも怖かったです。でも、実際に相談してみると、専門の方が親身になって話を聞いてくれて、現実的な解決策を示してくれました。特に残債の分割返済ができることを知ったときは、本当にほっとしました。
家は手放すことになりましたが、家族がバラバラにならずに済みました。今は賃貸での生活ですが、住宅ローンの重圧から解放されて、気持ちが随分楽になりました。父の介護についても、姉と改めて話し合い、少しずつ負担を分担してもらえることになりました。もっと早く相談していれば、こんなに悩まずに済んだと思います。
担当者のコメント

健一さんは非常に責任感が強く、家族思いの方でした。だからこそ一人で抱え込んでしまい、状況が悪化するまで誰にも相談できなかったのだと思います。初回のご相談では表情も硬く、何度も「自分が情けない」と自分を責める言葉を口にされていました。
今回のケースで大切にしたのは、健一さんの努力を否定せず、これまで頑張ってこられたことを認めることでした。介護と住宅ローンの両立は、誰にでも起こり得る問題です。一人で解決できることではありません。
任意売却は決して恥ずかしいことではなく、家族を守るための前向きな選択です。健一さんご夫婦が最終的に笑顔で新生活をスタートされたとき、私たちも本当に嬉しく思いました。住宅ローンの返済に困ったときは、一人で悩まず、できるだけ早くご相談ください。解決の道は必ずあります。
