相談者プロフィール
相談者の情報
堀内隆司さん(仮)、51歳、埼玉県川越市在住。
自動車部品メーカーの旋盤工として23年勤務。
妻(49歳・パート勤務)、長男(21歳・専門学校生)の3人暮らし。
長女(24歳)は昨年結婚し、さいたま市で生活している。
年収は約380万円で、3年前の残業込み480万円から大幅に減少。
物件・ローンの情報
2008年に購入した木造2階建ての建売住宅。
購入価格は2,980万円。
住宅ローン残債は約1,420万円で、月々の返済額は約8万3,000円。
固定資産税、住民税、国民健康保険税を合わせて約82万円を滞納しており、市役所から差押予告通知書が届いている状態。
ご相談の内容
堀内さんの生活が苦しくなり始めたのは、3年前のことでした。勤務先の工場で受注が減り、それまで月7〜8万円あった残業代がほぼゼロになりました。「一時的なものだろう」と考え、当初は生活を変えませんでした。しかし同じ時期に長男が専門学校に進学し、入学金と学費で貯金の大半を使い切ることになりました。
住宅ローンだけは何としても払い続けようと決めていた堀内さんは、固定資産税の支払いを「来月まとめて払えばいい」と先送りにしました。これが滞納の始まりでした。その後、住民税、妻の国民健康保険税と、払えない税金が増えていきました。市役所で分納の相談をして月3万円の計画を立てましたが、3回目で払えなくなり、その後は市役所からの電話にも出られなくなりました。
半年前、ついに「差押予告通知書」が届きました。給与が差し押さえられれば、会社の経理に知られることになります。23年間働いてきた職場で、そんな形で事情が明らかになることへの恐怖は、夜中に何度も堀内さんを目覚めさせました。妻には「なんとかする」とだけ伝えていましたが、具体的なことは話せずにいました。
状況がさらに悪化したのは2ヶ月前、長女の結婚式でした。ご祝儀の10万円を捻出するため、消費者金融から15万円を借りました。これで月々の支出が完全に収入を超えてしまいました。
1ヶ月前、妻が郵便物の中から市役所の封筒を見つけ、すべてを打ち明けることになりました。「なんで言ってくれなかったの」と泣く妻に、堀内さんは何も言えませんでした。数日後、妻がスマートフォンで「税金滞納 家 売却」と検索し、任意売却という方法を見つけました。「この家を売るしかないんじゃないか」と妻から切り出されたとき、堀内さんも心のどこかでそう思っていました。
来年就職を控える長男には、まだ何も話していません。実家がなくなることをどう伝えればいいのか、言葉が見つかりませんでした。それでも、給与差押えが現実になる前に動かなければ、もっと取り返しのつかないことになる。そう考え、相談を決意しました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談を受け、まず堀内さんご夫妻の状況を整理しました。住宅ローンの返済は続けられていましたが、税金の滞納額が約82万円に膨らんでおり、給与差押えが目前に迫っていました。住宅ローン残債約1,420万円に対し、物件の市場価値は900〜1,100万円程度と見込まれ、売却してもローンが残る「オーバーローン」の状態でした。
最初に行ったのは、市役所との交渉です。任意売却を進める意思があることを伝え、売却完了までの間、差押えを猶予してもらえるよう働きかけました。堀内さんが最も恐れていた「給与差押えによる会社への露見」を防ぐことが、まず重要でした。
次に、債権者である金融機関との交渉を開始しました。オーバーローン状態での売却となるため、残債の一部が免除されない限り売却は成立しません。堀内さんの収入状況や今後の返済能力を丁寧に説明し、売却後の残債については無理のない分割返済で合意を得ることができました。
物件の販売活動では、長男の専門学校卒業まで半年あることを考慮し、引き渡し時期を調整できる買主を探しました。結果として、投資目的の買主が見つかり、3ヶ月後の引き渡しで合意。堀内さんご家族は、その間に長男の通学に支障のない範囲で新居を探す時間を確保できました。
売却代金から住宅ローンの一部と滞納税金の全額を完済し、残ったローン残債約400万円については月1万5,000円の分割返済となりました。消費者金融からの借入15万円も売却代金から返済し、堀内さんの月々の負担は大幅に軽減されました。
相談者の声

任意売却という言葉を初めて聞いたとき、正直よくわかりませんでした。ネットで調べると「ブラックリストに載る」とか「自己破産と同じ」といった情報も出てきて、怖くなったこともあります。でも実際に相談してみると、丁寧に仕組みを説明してもらえて、自分たちの状況に合った方法があることを知りました。
一番つらかったのは、妻に黙っていた2年間です。毎月届く督促状を隠し、市役所からの電話を無視し続けました。打ち明けたとき、妻が怒るより先に泣いたのを見て、自分のしてきたことの重さを思い知りました。でも、それからは妻と一緒に問題に向き合えるようになりました。
16年住んだ家を手放すのは寂しいです。子どもたちの身長を測った柱の傷を見ると、今でも胸が詰まります。でも、担当の方に「家は手放しても、ご家族との思い出は残ります」と言われたとき、少し気持ちが楽になりました。
息子には引っ越しが決まってから事情を話しました。「親父、もっと早く言ってくれればよかったのに」と言われました。怒られると思っていたので、拍子抜けしました。来年の就職に向けて、息子は「俺が働き始めたら少しは助けられるから」と言ってくれています。
今は川越市内の賃貸アパートで暮らしています。部屋は狭くなりましたが、月々の支払いは以前より3万円以上減りました。夜中に目が覚めることもなくなりました。あのとき相談していなかったら、今頃どうなっていたかと思うと、本当に相談してよかったと思います。
担当者のコメント

堀内さんが初めて相談にいらしたとき、奥様が隣で何度も頷いていらっしゃったのが印象的でした。お二人で問題に向き合おうとされている姿勢が伝わってきました。
税金の滞納は、住宅ローンの滞納とは異なる難しさがあります。自己破産をしても税金は免除されませんし、放置すれば給与や預金の差押えに至ります。堀内さんのように「住宅ローンは払えているから大丈夫」と考える方も多いのですが、税金の滞納が進むと、結果的に生活全体が立ち行かなくなるケースは少なくありません。
今回のケースでは、市役所との交渉で差押えを猶予してもらえたことが大きなポイントでした。任意売却を進める意思を明確に示すことで、行政側も協力的に対応してくれることがあります。早めにご相談いただいたことで、選択肢を残したまま解決に導くことができました。
50代で長年住んだ家を手放すことは、経済的な問題以上に心理的な負担が大きいものです。堀内さんも最初は「逃げるようで情けない」とおっしゃっていました。でも、問題から目を背けずに解決に向けて動くことは、逃げることとは正反対です。ご家族のために決断された堀内さんの姿勢を、心から尊敬しています。
税金の滞納でお悩みの方は、督促状が届いた段階で早めにご相談ください。状況が悪化する前であれば、より多くの選択肢の中から最適な解決策を見つけることができます。
