相談者プロフィール
相談者の情報
早川誠一さん(仮)、48歳、埼玉県川口市在住。
食品加工会社(川口市内の冷凍食品メーカー)勤務・製造ラインリーダー職。
現在の年収は約320万円。
前職は大手食品メーカーに22年間勤務し、年収は約560万円だったが、45歳のときに早期希望退職制度を利用して転職。現職は2年目。
家族は妻・久美子さん(46歳・パート勤務、年収約90万円)、長男・翔太さん(19歳・専門学校在学中)、長女・美咲さん(15歳・中学3年生)の4人暮らし。
物件・ローンの情報
2008年に川口市内の戸建て(4LDK・現在築17年)を3,480万円で購入。
住宅ローン残債は約2,190万円、月々の返済額は約10万2,000円。
売却時の査定相場は約1,650〜1,750万円。
ご相談の内容
早川さんが転職を決めたのは45歳のときです。勤続22年の大手食品メーカーが早期希望退職制度を打ち出したタイミングで、「退職金が割増しになる今しかない」と考えて応募しました。同業他社への転職活動では、管理職ポジションを中心に複数社に応募しましたが、なかなか内定が出ず、最終的に現在の中小食品加工会社に製造現場のリーダー職として入社することになりました。
年収はおよそ240万円下がり、320万円台になりました。「1年で実績を出して給与交渉する」と最初は思っていましたが、2年が経っても状況は変わらず、毎月の収支は赤字が続きました。妻・久美子さんのパート収入を合わせても月の手取りは約33万円。住宅ローン返済・光熱費・食費・長男への生活補助・保険料などを合計すると、月に3〜5万円の赤字になる月が続きました。転職直後に受け取った退職金の一部、約400万円を生活費の補填に充ててしのいできましたが、2年でほぼ底をつきました。やがてクレジットカードのリボ払いを使い始め、残高は気づけば80万円を超えていました。
転機は2024年11月、住宅ローンの引き落としが残高不足で初めて落ちなかったことです。銀行から封書が届いた日、昼休みに会社の廊下でそれを開封しましたが、しばらく内容が頭に入ってきませんでした。翌月はなんとか入金しましたが、「次は無理かもしれない」という感覚が消えなくなりました。
年末、中学3年生の長女・美咲さんから「高校、どこ受けても大丈夫?」と聞かれました。「大丈夫だよ」と返事をして、そのあと台所でしばらく動けなかったと言います。その翌週、スマートフォンで「住宅ローン 払えない 埼玉」と検索したのが、情報収集の始まりでした。
調べるうちに「任意売却」という言葉を知りましたが、自己破産とセットで行うものだと思い込んでいました。また、「相談会社に電話するだけで銀行に連絡が入り、何か手続きが動き出してしまうのでは」という不安もあり、すぐには動けませんでした。売却しても残債が残れば結局解決しないのでは、という疑問も頭から離れませんでした。
ご相談の電話は、平日の昼休みに会社の駐車場の車の中でかけていただきました。「妻にはまだ話せていなかったので、家でかける気にはなれなかった」とおっしゃっていました。その日の夜、帰宅して妻に「ちょっと調べてみた」と切り出すと、久美子さんは「そう」とだけ言い、夕飯の支度を続けたそうです。責めるような言葉はありませんでしたが、その日はそれ以上の会話にはなりませんでした。
ご提案内容・解決までの流れ
初回のご相談では、まず現在の収支状況と住宅ローンの滞納状況、カードローンの残高を整理するところから始めました。早川さんが抱えていた「任意売却=自己破産」という誤解については、最初にきちんと説明させていただきました。任意売却は自己破産なしで行うことができ、債権者(金融機関)の合意のもとで市場で売却する手続きです。自己破産が必要かどうかは、売却後に残る残債の額や家計の状況によって判断するものであり、任意売却そのものとは切り離して考える必要があります。
次に、物件の査定結果(1,650〜1,750万円)とローン残債(約2,190万円)の差額、つまり売却後に残る残債が約440〜540万円になることを、数字をもとに丁寧にご説明しました。残債の扱いについては、金融機関との交渉により分割返済の取り決めを行うことが一般的であること、返済額を家計の実情に合わせて調整できる可能性があることもお伝えしました。
売却活動については、川口市内の築17年・4LDK戸建てとして、子育て世帯向けの需要があるエリアであることをいかして買い手を探しました。学区や生活利便性を訴求したことで、早川さんの希望に近い価格帯での売却が実現しました。
売却後は、ご長女・美咲さんの高校進学のタイミングに合わせて、同じ川口市内の賃貸物件へ転居されました。学区を変えずに済んだことで、美咲さんの受験への影響も最小限にとどめることができました。カードローンについても、収支が改善されたことで返済計画を立て直すことができました。
相談者の声

任意売却のことをネットで調べたとき、自己破産しないとできないものだと思っていました。相談してみると、まったくそうではないと教えてもらえて、まず気持ちが楽になりました。「電話するだけで銀行に何か連絡が入る」と思って怖かったのですが、それも誤解だったとわかりました。
残債が残ることは最初から説明してもらっていたので、覚悟はしていました。でも、その残債をどう返していくかについても一緒に考えてもらえて、「終わりが見えた」という感覚がありました。
妻とは、相談を始めてからようやくちゃんと話せるようになりました。数字が見えてきてからは、妻も一緒に面談に来てくれるようになって、二人で決めた選択という形にできたのは良かったと思っています。長女の高校進学の学区を変えずに済んだことも、正直ほっとしました。長男には詳しい事情は話していませんが、家族で乗り越えられたとは思っています。ローンのために働いている感覚がずっとあったので、それがなくなっただけでも、気持ちがだいぶ違います。
担当者のコメント

早川さんは、初回のお電話のとき、状況を説明しながら言葉が詰まる場面がありました。感情的に追い詰められているというよりも、長い時間をかけて一人で抱えてきた疲れが出ているように感じました。
ご相談のなかで印象的だったのは、「妻に自分が失敗したと認める形にしたくない」という言葉でした。そのお気持ちを踏まえて、奥様にも同席していただく面談の場では、早川さんが一方的に追い詰められるのではなく、二人で現状を確認して選択肢を選ぶという進め方を意識しました。
任意売却に対しては「自己破産とセットで行うもの」「相談しただけで手続きが始まる」といった誤解をお持ちの方が多くいらっしゃいます。動けない理由の多くが、こうした誤解から来ていることも少なくありません。ローンの滞納が続くほど、選べる選択肢は少なくなります。「まだ相談するほどではないかもしれない」と思っている段階でのご相談が、結果として解決の幅を広げることにつながります。少しでも不安を感じたら、まず話を聞いてもらうことから始めていただければと思います。
