相談者プロフィール
相談者の情報
永瀬拓也さん(仮)、43歳、埼玉県越谷市在住。
物流倉庫でパート勤務中(前職は産業機器メーカーの営業職。大手自動車部品メーカーから転職するも、業績悪化で退職勧奨を受け退職)。
現在の月収は手取り約16万円。 妻(40歳・スーパーのパート、月収約8万円)、長女(13歳・中学1年生)、長男(9歳・小学3年生)の4人家族。
物件・ローンの情報
2018年に新築で購入した3LDK分譲マンション(72㎡)。
住宅ローン残債は約2,870万円。月々の返済は約10万4,000円。
管理費・修繕積立金が月額約2万3,000円。
ご相談の内容
永瀬さんは2018年にマンションを購入し、大手自動車部品メーカーの営業職として年収約580万円を得ながら、安定した生活を送っていました。2024年秋、取引先の産業機器メーカーから営業部門の責任者として誘われ、年収アップと通勤時間の短縮を見込んで転職を決意しました。ところが入社してみると、営業部門は慢性的な人手不足で管理職とは名ばかりの状態でした。2025年に入ると主力取引先が発注を大幅に絞り、会社全体の業績が急速に悪化。ボーナスは支給ゼロとなり、永瀬さん自身も退職勧奨を受けて2025年8月に退職することになりました。
43歳で管理職経験わずか半年という経歴では、正社員としての再就職は厳しく、10月からは地元の物流倉庫でパート勤務を始めました。月収は手取り約16万円。妻のパート収入約8万円と合わせても世帯月収は約24万円で、住宅ローンの返済約10万4,000円に管理費・修繕積立金の約2万3,000円を加えると、住居費だけで月12万7,000円を占める状況でした。2025年12月にはじめてローンの引き落としに残高が足りず延滞が発生し、翌月に貯蓄から補填したものの、1月、2月と延滞が続きました。銀行からは返済条件の変更(リスケジュール)の提案もありましたが、パート収入の現状では月々の返済額を多少下げたところで根本的な解決にはならないことは永瀬さん自身がよくわかっていました。
3回目の延滞の後、銀行から「期限の利益喪失」に関する通知が届いたとき、永瀬さんはこのまま何もしなければ競売に進むということを理解しました。夜中に目が覚めては頭の中でお金の計算を繰り返し、翌日の仕事中にぼんやりしてしまうことも増えていました。妻の美咲さんには「家を売ることも考えないといけない」と伝えていましたが、長女の結衣さんが中学に上がったばかりで友人関係もようやく安定してきた時期だったため、引っ越しに踏み切ることへのためらいが夫婦の間にありました。栃木で一人暮らしをしている母親には、心配をかけたくないという思いから何も話せないままでした。
ネットで「住宅ローン 払えない どうなる」と検索したのをきっかけに、任意売却や競売について調べ始めましたが、「任意売却したら自己破産しなければならないのでは」「売却後の残債は一括返済を求められるのでは」「競売になれば近所にすべて知られるのでは」といった誤解や不安が重なり、なかなか行動に移せませんでした。それでも、任意売却の専門業者のサイトで自分と似た状況の解決事例を読み、「ちゃんと解決できた人がいる」と知ったことで、ようやく相談の電話をかける決心がつきました。電話をかけたのは倉庫の昼休み、駐車場に停めた車の中からでした。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談を受けた際、まず永瀬さんご夫婦の現在の収支状況とご希望を丁寧に伺いました。特に「競売だけは避けたい」「できれば越谷市内に残って長女を転校させたくない」という二つの希望を確認した上で、任意売却の仕組みと今後の流れをわかりやすくご説明しました。永瀬さんが抱えていた「任意売却=自己破産」という誤解に対しては、任意売却はあくまで債権者の同意を得て市場価格に近い金額で売却する方法であり、自己破産とは別の手続きであることを丁寧にお伝えしました。また、売却後に残る債務についても、一括返済ではなく無理のない範囲で分割返済の交渉ができるケースが多いことをご説明し、不安の解消に努めました。
債権者である金融機関との交渉を速やかに開始し、競売手続きに移行する前に任意売却を進める了承を得ました。物件の査定を行ったところ、売却見込み価格は約2,550万円で、ローン残債約2,870万円に対して約320万円の残債務が発生する見通しでした。売却活動にあたっては、マンション内の住人や近隣への情報漏洩を最小限に抑えるよう配慮し、内覧のスケジュールも永瀬さんご家族の生活に合わせて調整しました。約2ヶ月の売却活動を経て買い手が見つかり、2,530万円での売却が成立しました。残債務の約340万円については、永瀬さんの現在の収入状況を踏まえ、月額1万円からの分割返済で債権者との合意を取り付けることができました。
引っ越し先については、永瀬さんご夫婦の最大の希望であった「越谷市内で長女の学区を変えない」という条件を優先し、同じ中学校区内の賃貸マンション(2LDK、家賃7万5,000円)を見つけることができました。引き渡し時期も学期の切れ目に合わせて調整し、お子様たちの生活への影響を最小限に抑えました。
相談者の声

最初に電話をかけたときは、声が震えていたと思います。何を話せばいいのかもわからないまま電話しましたが、相談員の方が「まずは状況を聞かせてください」と落ち着いた口調で言ってくれて、少しずつ話すことができました。
一番ほっとしたのは、任意売却と自己破産は別のものだと教えてもらったときです。ネットで調べているうちに、自分の中で二つがごちゃまぜになっていて、「家を売ったら人生が終わるんじゃないか」くらいに思い詰めていました。残債も一括で払わなくてはいけないと思い込んでいたので、分割返済の交渉ができると聞いたときは正直に言って安心しました。
家は手放すことになりましたが、同じ地域に住み続けられて、娘も転校せずに済みました。息子も同じ小学校に通えています。以前のマンションより部屋は狭くなりましたが、住居費は月5万円以上下がったので、生活はかなり楽になりました。今は正社員の再就職に向けて動きながら、月々の分割返済もきちんと続けています。
もっと早く相談していれば、眠れない夜を何ヶ月も過ごさなくて済んだと思います。母にもまだ全部は話せていませんが、いつかきちんと報告するつもりです。
担当者のコメント

永瀬さんは最初のお電話のとき、声の緊張がはっきりと伝わってきました。ただ、お話を伺ううちに、ご自身の状況をきちんと整理されている方だという印象を受けました。転職の経緯や家計の状況、ローンの延滞回数まで正確に把握されていて、こちらとしても対応を進めやすいケースでした。
今回特に意識したのは、お子様の生活環境を守ることです。永瀬さんご夫婦の一番の心配が長女の転校問題でしたので、売却活動と並行して同学区内の賃貸物件を早めにお探ししました。引き渡し時期の調整も含め、学校生活に影響が出ないスケジュールを組めたことは良かったと思います。
住宅ローンの問題は、転職や収入減など、本人の努力だけでは防げない事情から生じることも少なくありません。延滞が始まってから時間が経つほど選択肢は狭まっていきます。「まだ大丈夫」と思えるうちに、一度ご相談いただくことが、ご家族の生活を守る一番の近道です。
