後継者が決まらず、従業員への承継を検討したケース

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相談者プロフィール

山田正雄さん(仮)、67歳、愛知県名古屋市在住。製造業(金属加工)を経営する代表取締役。従業員15名、年商約2億円の中小企業を35年間経営。長男(38歳・大手商社勤務)、長女(35歳・専業主婦)がいるが、いずれも事業承継の意思はない。

【会社の情報】
設立から35年の金属加工業。主要取引先は自動車部品メーカー3社。従業員15名(うち管理職3名)。年商2億円、営業利益約1,500万円。借入金は設備投資用の3,000万円。

ご相談内容

正雄さんは35年前に金属加工業を起業し、地域の自動車産業を支える企業として成長させてきました。しかし、67歳を迎えた今、後継者問題に直面していました。長男は大手商社で順調にキャリアを積んでおり、長女も家庭を優先したいとのことで、いずれも事業を継ぐ意思がありませんでした。

「このまま自分が倒れたら会社はどうなるのか」「従業員やその家族の生活はどうなるのか」という不安が日に日に大きくなっていました。第三者への売却も検討しましたが、長年一緒に働いてきた従業員たちの雇用や待遇が保証されるか心配でした。

そんな中、製造部長の佐々木さん(45歳・勤続20年)が「もし可能であれば、会社を引き継がせていただきたい」と申し出てくれました。技術力も人望もある佐々木さんなら安心して任せられると思う一方で、「従業員への事業承継なんて本当にできるのか」「税金や手続きはどうなるのか」「失敗したら会社が潰れてしまうのでは」といった不安で夜も眠れない日々が続きました。

インターネットで事業承継について調べても専門用語ばかりで理解が難しく、「やはり専門家に相談しなければ」と思い、事業承継の相談所に連絡することにしました。

ご提案内容

ご相談を受けた際、まず会社の財務状況、佐々木さんの経営能力や資金調達能力、他の従業員の意向などを詳しく確認しました。税理士、社労士、司法書士と連携し、従業員承継に最適なスキームを検討しました。

佐々木さんの資金力を考慮し、段階的な株式譲渡プランをご提案しました。まず佐々木さんを取締役に昇格させ、3年間の移行期間を設けて経営ノウハウを継承。その間に株式の一部を譲渡し、最終的に代表権を移譲する計画を立てました。

資金面では、事業承継税制の活用や金融機関からの承継資金調達についてもサポートしました。また、他の従業員への説明会も開催し、承継後の雇用条件や会社方針について透明性を保ちながら進めました。取引先への挨拶回りも段階的に実施し、信頼関係の維持に努めました。

相談者の声

最初は「従業員承継なんて本当にできるのか」と半信半疑でした。でも、専門家の方々が具体的なプランを示してくれて、段階的に進められることが分かり安心しました。佐々木さんも真剣に取り組んでくれて、他の従業員たちも応援してくれています。

3年間の移行期間があることで、焦らずに経営ノウハウを伝えることができました。取引先からも「後継者がしっかりしているから安心」と言っていただき、会社の未来に希望が持てるようになりました。35年間築いてきた会社を信頼できる人に託せて、本当に良かったです。

担当者のコメント

山田様のケースは、従業員承継の理想的な形だったと思います。後継候補者である佐々木さんの人柄と能力、そして他の従業員からの信頼が何より重要でした。事業承継は一朝一夕にはできませんが、適切な準備期間と専門家のサポートがあれば、必ず成功させることができます。

後継者問題でお悩みの経営者の方は、一人で抱え込まず早めにご相談ください。従業員承継、親族承継、第三者承継など、それぞれの状況に応じた最適な解決策をご提案いたします。

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