後継者不在の建設会社をM&Aで承継した事例

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相談者プロフィール

田村義男さん(仮)、72歳、群馬県高崎市在住。地域密着型の建設会社を経営して45年。年商約2億円、従業員12名の会社を一代で築き上げた。妻(69歳・専業主婦)、長女(45歳・主婦・県外在住)、次女(42歳・会社員・県外在住)の4人家族。娘2人とも建設業には関心がなく、後継者不在の状況。

【事業・財産の状況】
自社株式評価額約4,000万円、事業用不動産約6,000万円、個人資産約2,000万円。会社は地元自治体や地域企業との長年の信頼関係があり、安定した受注を確保。借入金も少なく財務状況は良好。

ご相談内容

義男さんは20代で建設会社を立ち上げ、地域のインフラ整備や住宅建築に携わってきました。従業員の中には30年以上勤めているベテランもおり、家族のような絆で結ばれた会社でした。しかし、70歳を過ぎて体力の限界を感じ、そろそろ引退を考えるようになりました。

娘2人は県外で家庭を築いており、建設業を継ぐ意思はありません。「会社を畳むしかないのか」と考えましたが、長年働いてくれた従業員たちの雇用がなくなることや、取引先に迷惑をかけることを思うと、簡単に廃業する決断はできませんでした。

「誰か信頼できる人に会社を託せないだろうか」と考えましたが、知り合いの経営者に相談しても「建設業界は厳しい」「若い人は継ぎたがらない」といった反応で、具体的な解決策は見つかりませんでした。

テレビや新聞で「M&A」という言葉を聞いたことはありましたが、「大企業の話で、うちのような小さな会社には関係ない」「買い叩かれるのではないか」「従業員が解雇されるのではないか」といった不安がありました。それでも「従業員の生活を守りたい」「お客様との関係を維持したい」という思いから、専門家に相談してみることにしました。

ご提案内容

ご相談を受けた際、まず義男さんの会社への想いと従業員・顧客への責任感を丁寧に伺いました。第三者承継(M&A)の仕組みや中小企業でも十分に活用できることを分かりやすくご説明し、「従業員の雇用維持を条件とした承継が可能」であることをお伝えしました。

M&A専門の仲介会社と連携し、会社の詳細な企業価値評価を実施しました。財務面だけでなく、地域での信頼関係や技術力、従業員のスキルなども含めて総合的に評価し、承継先候補の選定を開始しました。

承継先の条件として、以下の点を重視しました:

  • 従業員の雇用維持
  • 既存顧客との取引継続
  • 地域密着型の経営方針の維持
  • 企業文化の尊重

複数の候補先と面談を重ねた結果、隣県で同規模の建設業を営む若手経営者とのマッチングが成立しました。買い手側は事業拡大を目指しており、義男さんの会社の技術力と顧客基盤に高い評価を示しました。

交渉では、従業員の雇用条件や既存顧客への対応について詳細に協議し、双方が納得できる条件で合意に至りました。義男さんは段階的に経営から退き、新経営者への引き継ぎをサポートする体制を整えました。

相談者の声

最初はM&Aなんて自分の会社には関係ないと思っていましたが、相談してみて考えが変わりました。従業員の雇用を守りながら会社を継続できる方法があることを知り、希望が見えました。

新しい経営者の方は若くて意欲的で、従業員たちとも良い関係を築いてくれています。お客様からも「会社が続いて良かった」と言ってもらえて、本当に安心しました。廃業ではなく承継という形で会社の歴史を次の世代につなげることができて、45年間の苦労が報われた気持ちです。

担当者のコメント

今回のケースは、第三者承継により会社の継続と従業員の雇用を両立できた好例です。中小企業のM&Aでは、単純な財務的価値だけでなく、人材や顧客関係、地域での信頼といった無形資産も重要な評価要素となります。

後継者不在の問題は多くの中小企業が抱える課題ですが、適切な相手とのマッチングにより、廃業ではなく事業継続という選択肢があります。重要なのは早めの準備と、承継先の選定における条件設定です。従業員や顧客を大切にする経営者の想いは、必ず理解してくれる承継先が見つかります。

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