父の遺産である実家の評価額で兄弟が対立。妥当な不動産価格がわからず家族の板挟み状態に

  • 相続

相談者様のプロフィール

山田雅子さん(仮)、52歳、東京都世田谷区成城在住。
都内私立中学校で国語教師として28年勤務、年収520万円。夫(54歳・商社勤務)、長男(24歳・IT企業勤務)、長女(21歳・大学4年生)の4人家族。昨年12月に父親(78歳)を急性心筋梗塞で亡くし、兄(55歳・建設会社経営)、弟(48歳・公務員)との3人で相続手続きを進めている。

相続財産は東京都杉並区善福寺の実家(築35年・土地面積180㎡)、預貯金約800万円、株式・投資信託約300万円。

ご相談の内容

父親の四十九日を過ぎた2月頃から遺産分割の話し合いを開始しましたが、実家の評価額について兄弟間で大きな意見の相違が生じました。兄の正男さんは建設会社を経営しており、不動産会社3社の査定結果を根拠に「この立地なら8000万円は下らない。7800万円から8200万円の査定が出ている」と主張。一方、弟の康夫さんは公務員として冷静な判断を重視し「築35年の古家付きで現実的には5000万円程度。固定資産税評価額も4200万円だし、過大評価は危険だ」と反発しています。

雅子さんは中間的な6000万円程度が妥当だと考えていましたが、3月に入ってから夜中に何度も目が覚めるようになりました。4月のゴールデンウィーク前の話し合いでは、兄から「雅子は女だから不動産のことはわからない。俺と康夫で決めるから」と言われ、教師として長年働いてきた誇りを傷つけられた思いでした。家に帰って夫に初めて弱音を吐くと「専門家に相談してみてはどうか」とアドバイスを受けました。

5月からインターネットで相続関連の情報を調べましたが、固定資産税評価額、路線価、実勢価格の違いがよくわからず、不動産鑑定士への依頼も費用が30万円かかることを知り躊躇していました。本当は父が大切にしていた実家を3人で納得いく形で処分し、思い出を大切にしながら新しいスタートを切りたいと願っています。

相談所からのご提案・解決までの流れ

まず、不動産評価の基本的な仕組みについて丁寧に説明しました。相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額、実勢価格にはそれぞれ異なる目的と算定方法があることを理解していただきました。今回のケースでは、遺産分割のために適正な時価を把握する必要があるため、中立的な不動産鑑定士による評価をご提案しました。

鑑定費用については、相続人3人で分担することで負担を軽減し、信頼できる不動産鑑定士をご紹介しました。鑑定の結果、実家の評価額は6800万円と算定され、雅子さんの直感に近い金額となりました。この客観的な評価額を基に、改めて遺産分割協議を実施。

兄弟間での感情的な対立を避けるため、当相談所のファイナンシャルプランナーが調整役として協議に同席しました。最終的に実家は売却し、売却代金と預貯金・有価証券を合わせて3等分することで合意に至りました。売却は信頼できる不動産会社に依頼し、7200万円で成約。各相続人が約2700万円ずつを取得する結果となりました。

相談者の声

兄弟それぞれが自分の立場から主張していましたが、客観的な鑑定評価が出たことで冷静に話し合えるようになりました。私は不動産の専門知識がないからと軽視されていると感じていましたが、実際には直感的に適正な価格帯を把握していたことがわかり、自信を取り戻せました。

相談前は固定資産税評価額と実勢価格の違いも理解できていませんでしたが、丁寧に説明していただき、相続における不動産評価の重要性を理解できました。調整役として専門家に入っていただいたおかげで、兄弟関係を壊すことなく円満に解決できたことが何より嬉しいです。父も天国で安心していると思います。

担当者のコメント

不動産評価をめぐる相続人間の対立は非常によくあるケースです。それぞれが異なる情報源や立場から判断するため、感情的な対立に発展しがちです。雅子さんは板挟みの状況で大変苦労されましたが、客観的な専門家評価を軸に解決の道筋をつけることができました。

今回のポイントは、早期に中立的な不動産鑑定を実施したことと、感情的にならずに数字に基づいて議論できる環境を整えたことです。相続は家族の絆を試す場面でもありますが、適切な専門家のサポートがあれば必ず円満解決への道が開けます。遺産分割で悩まれている方は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。

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