母の思い出が詰まった実家を相続。車がないと生活できない立地で売却か維持かで悩み、家族との温度差に苦しんだ。

  • 相続

相談者様のプロフィール

西川美香さん(仮)、43歳、埼玉県川口市在住。
総合病院の看護師として18年勤務、年収480万円。夫の隆志さん(45歳・会社員)、長女の愛美さん(高校2年生・17歳)、長男の拓海くん(中学1年生・13歳)の4人家族。
群馬県みどり市の実家を相続したが、最寄り駅から車で20分、バスは1日4本という立地で、運転免許を持たない美香さんには居住が困難な状況。

ご相談の内容

3ヶ月前、群馬県みどり市の実家で一人暮らしをしていた母親が心筋梗塞で急逝しました。美香さんは一人娘で、築40年の木造2階建て(土地150坪)を相続することになりました。母が大切にしていた庭や家庭菜園もあり、思い出の詰まった家でしたが、山間部にあるため車がないと生活できない立地です。美香さんは都市部住まいで運転免許を持っておらず、実家での生活は現実的に困難でした。

地元の不動産業者3社に査定を依頼したところ、450万円から600万円という予想以上に低い価格を提示されました。一方で、固定資産税は年間8万円、管理費を含めると年間20万円以上の維持費がかかることが判明しました。夫からは「売却一択でしょう」と合理的な判断を求められましたが、母の思い出が詰まった家を手放すことに強い罪悪感を感じていました。

仕事中もふと実家のことを思い出し、集中力が欠ける日が続きました。夜中に目が覚めて「賃貸に出せないだろうか」「リフォームして別荘として使えないか」と同じことを何度も考えてしまい、朝方にようやく眠りにつく日が増えました。インターネットで「田舎 実家 相続 売れない」「空き家 維持費」などを深夜に検索しましたが、情報が多すぎてかえって混乱している状態でした。

相談所からのご提案・解決までの流れ

まず、美香さんの感情面でのケアを重視し、母親への思いや罪悪感について丁寧にお話を伺いました。その上で、実家の現状を客観的に分析し、複数の選択肢をご提示しました。

第一段階として、空き家バンクへの登録と賃貸可能性の調査を行いました。しかし、立地条件や築年数、設備の老朽化を考慮すると、賃貸需要は極めて低いことが判明しました。リフォーム費用も500万円以上必要で、投資回収は困難でした。

第二段階では、売却に向けた戦略を検討しました。古民家再生に興味のある都市部住民や、田舎暮らしを希望する方をターゲットに、母親が手入れしていた庭の四季桜や家庭菜園の魅力をアピールポイントとして整理しました。

最終的に、美香さんの希望を尊重し、春の四季桜が咲く時期まで1年間維持し、家族で最後のお別れをしてから売却するプランを提案しました。その間の維持費負担を軽減するため、不要な家財整理や簡易清掃を行い、火災保険の見直しも実施しました。

相談者の声

最初は母の思い出を手放すことが母への裏切りのように感じていましたが、相談を通じて、母が一番望んでいたのは私たち家族の幸せだったことに気づけました。1年間かけて家族でゆっくりお別れができたことで、罪悪感なく次のステップに進むことができました。

空き家バンクに登録すればすぐに借り手が見つかると思っていましたが、現実は甘くありませんでした。でも、専門家の方に客観的な分析をしていただいたおかげで、感情的にならずに冷静な判断ができました。売却後は家族の時間を大切にするようになり、週末には近場でも新しい思い出を作るようになりました。夫も私の気持ちを理解してくれて、家族の絆が深まったように感じています。

担当者のコメント

相続した実家の問題は、単なる不動産の処分ではなく、故人への思いや家族の絆に関わる深い問題です。美香さんのように罪悪感を抱える方は非常に多く、まずは気持ちに寄り添うことを大切にしています。

今回は美香さんの「母の思いを大切にしたい」という気持ちを尊重し、1年間の猶予期間を設けました。この期間があったことで、家族全員が納得できる形で売却に踏み切ることができました。相続不動産の問題は時間が経つほど選択肢が狭まります。感情的な整理と現実的な判断の両方をサポートすることで、後悔のない解決につながると考えています。立地条件が厳しい物件でも、適切な戦略があれば必ず道は開けます。

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