父の介護を担った長男が実家相続を希望するも、兄妹から「平等分割」を主張され、家族関係が悪化。
相談者様のプロフィール
小林雄一さん(仮)、51歳、東京都練馬区在住。
中小企業の経理部長として15年勤務、年収650万円。妻の恵子さん(49歳・パート勤務)、長男の翔太くん(大学3年生・21歳)、次男の健太くん(高校3年生・18歳)の4人家族。
2ヶ月前に父親(78歳)を脳梗塞で亡くし、長女の典子さん(48歳・千葉県船橋市在住)、次男の健二さん(45歳・神奈川県横浜市在住)との3人兄妹で相続問題に直面。
相続財産は杉並区の実家(評価額2,500万円)と預貯金・投資信託約2,000万円。
ご相談の内容
雄一さんは長男として父親の介護を主に担ってきました。仕事を早退して通院に付き添い、週末は実家で父親の世話をする生活が3年間続きました。父親からは生前「実家は雄一に任せる」と言われており、正式な遺言書はありませんでしたが、当然実家を相続できると考えていました。
しかし四十九日法要での初回協議で状況は一変しました。妹の典子さんは「法定相続分通り3分の1ずつ平等に分けるべき」と主張し、弟の健二さんも「実家は売却して現金で分割すべき」と発言しました。雄一さんが「長男として介護を担った」と説明しても、「それは当然のこと」と一蹴されてしまいました。
特に典子さんの夫が「法定相続分は権利だから当然もらう」と妻を後押しし、健二さんも「兄貴だけ得するのはおかしい」と感情的になることが増えました。典子さんが不動産鑑定を依頼し、実家の評価額2,500万円が判明すると「私の相続分は1,500万円」と具体的な金額を提示され、雄一さんは困惑しました。
子供の頃から仲の良かった3人兄妹でしたが、お金の話になると人が変わったように感じました。長男の翔太くんが大学3年生、次男の健太くんが高校3年生で教育費が最もかかる時期に、家族関係まで悪化してしまい、夜も眠れない日が続きました。妻の恵子さんからは「お金より家族の絆の方が大切」と言われる一方で、「あなただけが損をする必要はない」とも言われ、板挟み状態でした。
相談所からのご提案・解決までの流れ
まず、雄一さんの介護貢献について客観的に評価するため、通院記録や介護サービス利用状況、雄一さんが負担した費用などを詳細に整理しました。民法では「寄与分」として介護貢献を相続分に反映させる制度があることをご説明し、具体的な金額算定を行いました。
次に、3人兄妹それぞれの事情を整理しました。典子さんは専業主婦で将来への不安があること、健二さんはIT企業勤務で収入は安定しているが住宅ローンを抱えていることなど、背景にある事情を把握しました。
解決策として、実家を雄一さんが相続し、その代わりに預貯金・投資信託2,000万円を典子さん・健二さんで分割する「代償分割」を提案しました。ただし、雄一さんの寄与分300万円を考慮し、実家の価値を2,200万円として計算することで、各相続人の取得額を調整しました。
最終的に雄一さんが実家(2,200万円相当)、典子さんが現金1,100万円、健二さんが現金900万円を取得する内容で合意に至りました。雄一さんは典子さんに代償金200万円を分割払いで支払うことで調整し、全員が納得できる解決となりました。
相談者の声

正直なところ、最初は「長男だから実家をもらって当然」という気持ちでしたが、妹や弟にもそれぞれの事情があることを専門家の方に整理していただき、冷静に考えることができました。寄与分という制度があることも知らず、介護の苦労が全く評価されないのかと絶望的でしたが、きちんと法的に認められる仕組みがあって安心しました。
代償金の支払いは正直厳しいですが、分割払いにしていただいたおかげで何とか工面できそうです。何より、家族関係を修復できたことが一番の収穫です。先日、典子と健二が実家に顔を出してくれて、父の仏壇に手を合わせてくれました。お金の話で険悪になった時期もありましたが、最終的に3人とも納得できる形になって本当によかったです。父もきっと安心していると思います。
担当者のコメント

相続人同士の感情的な対立が起きているケースでは、まず各相続人の立場や事情を客観的に整理することが重要です。雄一さんのように介護を担った方の貢献は「寄与分」として法的に評価されますが、その算定には専門的な知識が必要です。
今回は雄一さんの介護貢献を適切に評価し、かつ他の相続人の事情も考慮したバランスの取れた解決策を提案できました。代償分割は実家を維持しながら公平性を保てる有効な手段です。相続問題は感情的になりがちですが、法的根拠を示しながら冷静に協議することで、家族関係を保ちながら解決することが可能です。早期の専門家相談が円満解決への近道となります。
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