任意売却のリスクとは|任意売却にともなうリスクとその回避策
2025.09.05

住宅ローンの返済が困難になり、任意売却を検討されている方にとって、「本当に任意売却で大丈夫なのか」「どんなリスクがあるのか」という不安は尽きないものです。
確かに任意売却にはいくつかのデメリットやリスクが存在しますが、それらを正しく理解し、適切な対策を講じることで、多くのリスクは回避または軽減できます。
この記事では、任意売却に関する10のデメリット・リスクを包み隠さずお伝えするとともに、それらを回避するための具体的な方法をご紹介します。
まずは基本から|任意売却と競売の決定的な違い

任意売却を検討する前に、まずは基本的な仕組みを理解することが重要です。特に競売との違いを明確にすることで、なぜ任意売却が選ばれるのかが見えてきます。
任意売却とは?住宅ローン滞納後の売却手続き
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に、債権者(金融機関)の同意を得て不動産を売却する手続きのことです。
通常の不動産売却とは異なり、売却代金がローン残高を下回る「オーバーローン」状態でも売却が可能になります。売却によって得られた代金は住宅ローンの返済に充てられ、残った債務については債権者と返済方法を協議することになります。
手続きは債務者自身が主体となって進めるため、売却時期や条件についてある程度の裁量権を持つことができます。
なぜ競売は避けるべき?価格・プライバシー・手続き面での比較
競売は裁判所が主導する強制的な売却手続きで、任意売却と比較すると以下のような違いがあります。
売却価格の面では、競売は市場価格の6~7割程度になることが多く、任意売却では8~9割程度での売却が期待できます。また、競売では入札情報が公開されるため、近隣住民に事情を知られてしまう可能性が高くなります。
手続きの進行については、競売では裁判所のスケジュールに従うしかありませんが、任意売却では債権者との協議により、ある程度の調整が可能です。引っ越し時期や費用についても、任意売却の方が交渉の余地があります。
【知らないと危険】任意売却に伴う10のデメリットとリスク

任意売却は住宅ローン問題の解決策として有効ですが、決してメリットばかりではありません。事前にリスクを把握しておくことで、より慎重な判断ができるようになります。
① 信用情報への影響(ブラックリスト)とその後の生活
任意売却を行うということは、住宅ローンを約定通りに返済できなかったことを意味するため、信用情報機関に「事故情報」として記録されます。
この情報は5~7年間保管され、その間は新たな借り入れやクレジットカードの作成が困難になります。携帯電話の分割購入や賃貸住宅の契約時に保証会社を利用する場合にも影響が出る可能性があります。
ただし、この影響は競売でも同様に発生するため、任意売却特有のデメリットではありません。むしろ、早期に債務整理を行うことで、信用回復への道のりを短縮できる場合もあります。
② 連帯保証人への影響と迷惑をかけないための対処法
住宅ローンに連帯保証人がいる場合、任意売却後の残債務について連帯保証人にも返済義務が発生します。
連帯保証人の信用情報にも影響が及ぶ可能性があり、主債務者と同様に新たな借り入れが困難になることがあります。特に親族が連帯保証人になっている場合、家族関係に深刻な影響を与える可能性があります。
このリスクを軽減するためには、任意売却を検討する段階で連帯保証人に事情を正直に説明し、今後の対応について相談することが重要です。場合によっては、連帯保証人も含めた債務整理を検討する必要があります。
③ 必ず売れるとは限らない「売却不成立」のリスク
任意売却は通常の不動産売却と同様に、買い手が見つからなければ成立しません。特に以下のような条件が重なると、売却が困難になる場合があります。
売却期間の制限とタイムリミット
任意売却には期限があり、通常は3~6ヶ月程度で買い手を見つける必要があります。この期間内に売却できなければ、競売手続きが進行してしまいます。
立地条件が悪い物件や、建物の状態が著しく悪い物件では、この期間内での売却が困難になることがあります。また、債権者が設定する最低売却価格が市場価格より高すぎる場合も、買い手が見つからない原因となります。
債権者の同意が得られないケース
任意売却を進めるためには、すべての債権者(住宅ローンの債権者、税金の滞納がある場合は自治体など)の同意が必要です。
複数の債権者がいる場合、それぞれの利害が一致せず、同意が得られないことがあります。特に後順位の抵当権者がいる場合、売却代金の配分について合意形成が困難になるケースが見られます。
④ 売却価格が市場より安くなる可能性
任意売却では、通常の不動産取引よりも売却価格が低くなる傾向があります。
売却期間に制限があることや、売主の事情が急を要することを買主が察知すると、価格交渉で不利になる場合があります。また、内覧時に住宅ローンの滞納事実を隠すことは困難で、そのことが価格に影響することもあります。
ただし、競売と比較すれば依然として高値での売却が期待できるため、相対的にはメリットがあると考えられます。市場価格の8~9割程度での売却を目標に、現実的な価格設定を行うことが重要です。
⑤ 残債が残る可能性と返済義務
任意売却で最も重要な点は、売却後も債務が完全に消滅するわけではないことです。
売却代金がローン残高を下回る場合、その差額は「残債務」として返済義務が継続します。この残債務は無担保債権となりますが、法的な返済義務は残り続けます。
債権者との交渉により、月々の返済額を生活状況に応じて調整してもらうことは可能ですが、完全に返済を免れることはできません。場合によっては、個人再生や自己破産といった法的整理の検討が必要になることもあります。
⑥ 引っ越し費用が自己負担になるケース
任意売却では引っ越し費用の捻出が課題になることがあります。
競売の場合は強制執行による立ち退きとなりますが、任意売却では自主的な引っ越しが前提となります。引っ越し費用や新居の敷金・礼金などの初期費用は、原則として自己負担となります。
ただし、債権者との交渉により、売却代金から一定額の引っ越し費用を控除してもらえる場合もあります。この交渉は任意売却の専門家に依頼することで、成功の可能性が高まります。
⑦ 悪質な業者に依頼してしまうリスク
任意売却市場には、債務者の弱みにつけ込む悪質な業者も存在します。
高額な手数料を要求したり、実際には任意売却の実績がほとんどない業者が参入していることがあります。中には、債務者に不利な条件での売却を強引に進めたり、売却後の生活についてまったく配慮しない業者も見られます。
このようなリスクを避けるためには、複数の業者に相談し、対応内容や提案を比較検討することが重要です。また、任意売却の実績や専門資格の有無についても確認が必要です。
⑧ プライバシーに関するリスク(内覧など)
任意売却では購入希望者による内覧が必要になるため、住宅ローンの滞納事実を完全に隠すことは困難です。
内覧時に購入希望者から事情について質問される可能性があり、近隣住民に知られるリスクも完全には排除できません。また、不動産業者による現地調査や広告活動により、売却活動が周囲に察知される場合もあります。
ただし、競売と比較すれば格段にプライバシーは保護されるため、相対的なメリットは大きいと言えます。
⑨ 手続きの精神的・時間的負担
任意売却の手続きは複雑で、債務者にとって大きな負担となることがあります。
債権者との交渉、不動産業者との打ち合わせ、書類の準備など、多くの時間と労力を要します。また、住み慣れた家を手放すことによる精神的なストレスも無視できません。
特に、家族がいる場合は子どもの転校や配偶者の理解を得ることなど、様々な調整が必要になります。これらの負担を軽減するためには、信頼できる専門家のサポートを受けることが重要です。
⑩ 【離婚時など】共有者・元配偶者とのトラブル
夫婦共有名義の不動産を任意売却する場合、元配偶者との間でトラブルが発生することがあります。
離婚と任意売却が重なる場合、財産分与の問題も絡んで手続きが複雑になります。元配偶者が任意売却に同意しない場合や、売却代金の配分について合意が得られない場合は、手続きが長期化する可能性があります。
このような問題を避けるためには、離婚協議の段階で不動産の処分方法について十分に話し合い、書面で合意しておくことが重要です。
デメリットだけじゃない!任意売却を選ぶべき5つのメリット

リスクばかりを見ていては適切な判断ができません。任意売却には競売と比較して明確なメリットも存在します。
① 競売よりも高値で売却できる可能性
任意売却の最大のメリットは、競売よりも高い価格での売却が期待できることです。
競売では市場価格の6~7割程度での落札が一般的ですが、任意売却では市場価格の8~9割程度での売却が可能な場合が多くあります。この価格差は、残債務の金額に直接影響するため、債務者にとって大きなメリットとなります。
例えば、市場価格3,000万円の物件の場合、競売では1,800~2,100万円程度ですが、任意売却では2,400~2,700万円での売却が期待できます。この差額は数百万円にもなり、その後の生活再建に大きく影響します。
② 周囲に知られずに売却を進められる
任意売却では、競売のような公告が行われないため、プライバシーを比較的保護できます。
競売の場合、裁判所のホームページや新聞などで物件情報が公開されるため、近隣住民に事情を知られてしまいます。一方、任意売却では通常の不動産売却と同様の広告活動となるため、住宅ローンの滞納事実が周囲に知られるリスクを最小限に抑えることができます。
職場や子どもの学校関係者に知られることを避けたい場合、このメリットは非常に重要です。
③ 引っ越し時期や費用を交渉できる余地がある
任意売却では、引っ越しのタイミングや費用について債権者と交渉できる可能性があります。
競売では強制執行による立ち退きとなり、退去時期を選ぶことができませんが、任意売却では買主との交渉により、引き渡し時期をある程度調整できます。また、売却代金から引っ越し費用を控除してもらえる場合もあります。
特に子どもの学期末まで待ってもらうといった配慮や、新居が見つかるまでの時間的猶予を得られることは、家族にとって大きなメリットです。
④ 残った債務の分割返済交渉が可能になる
任意売却後の残債務について、債務者の生活状況に応じた返済計画を立てることができます。
競売後の残債務処理では債権者主導となりがちですが、任意売却では債務者が主体的に交渉に参加できます。月々の返済額を収入に応じて設定したり、ボーナス時の増額返済を組み込んだりといった柔軟な対応が期待できます。
債権者としても、競売よりも多くの回収ができているため、返済条件について比較的柔軟に対応してくれる場合が多くあります。
⑤ 手持ち金ゼロでも手続きを開始できる
任意売却では、手続きに必要な費用を売却代金から控除できるため、手持ち資金がなくても開始できます。
不動産仲介手数料や登記費用、司法書士費用などは売却代金から支払われるため、債務者が事前に準備する必要がありません。これは、既に経済的に困窮している債務者にとって大きなメリットです。
ただし、すべての費用が控除できるわけではないため、事前に専門家と相談して費用の内訳を確認しておくことが重要です。
【重要】任意売却のリスクを回避し、成功に導くための5つのポイント

リスクを理解したうえで、それらを回避し任意売却を成功させるための具体的なポイントをご紹介します。
ポイント1:相談は「滞納前」か「滞納後すぐ」が鉄則
任意売却の成功率を高めるためには、早期の相談が最も重要です。
住宅ローンの返済が困難になりそうな段階、できれば滞納する前に専門家に相談することをお勧めします。滞納が長期化すると、債権者との交渉が困難になり、選択肢が狭まってしまいます。
滞納から競売開始決定通知が届くまでは約6ヶ月、その後の任意売却可能期間は約3~6ヶ月程度です。この限られた期間を有効活用するためには、可能な限り早い段階での行動開始が必要です。
ポイント2:任意売却の実績が豊富な専門家を選ぶ
任意売却は通常の不動産売却とは異なる専門知識が必要なため、実績のある専門家を選ぶことが重要です。
年間の任意売却取扱件数、成功率、平均売却期間などの具体的な実績を確認しましょう。また、債権者との交渉経験や、売却後の生活再建サポートの有無も重要な選択基準です。
宅地建物取引士や任意売却取扱主任者などの資格の有無、金融機関との連携体制についても確認が必要です。実績の乏しい業者に依頼すると、売却が失敗するリスクが高まります。
ポイント3:複数の業者へ相談し、対応と提案を比較検討する
任意売却の成功は、依頼する業者の質に大きく左右されるため、必ず複数の業者を比較検討してください。
各業者から提案される売却価格、販売戦略、手数料、サポート内容を詳細に比較しましょう。また、初回相談時の対応の丁寧さや、質問に対する回答の的確さも重要な判断材料です。
1社だけの意見で判断すると、不利な条件で契約してしまうリスクがあります。最低でも3社程度は相談し、最も信頼できる業者を選択することが成功への近道です。
ポイント4:連帯保証人とは誠実に、そして早期に話し合う
連帯保証人がいる場合は、任意売却を検討する段階で必ず相談し、理解を得ることが重要です。
事情を隠したまま手続きを進めると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。連帯保証人にも債務整理が必要になる場合もあるため、専門家を交えた話し合いを行うことをお勧めします。
家族関係を維持するためにも、誠実で早期の相談が不可欠です。連帯保証人の理解と協力を得られれば、任意売却の成功率は大幅に向上します。
ポイント5:売却後の生活再建プランまで一緒に考えてくれる相談先を見つける
任意売却は住宅ローン問題の解決手段の一つに過ぎず、その後の生活再建が最も重要です。
売却だけでなく、残債務の返済計画、新居探し、家計の見直しなど、総合的なサポートを提供してくれる相談先を選びましょう。ファイナンシャルプランナーや生活再建アドバイザーとの連携がある業者であれば、より安心です。
単に不動産を売却するだけでなく、債務者の人生全体を考えたサポートを受けることで、任意売却後の生活を安定させることができます。
失敗しない相談先の選び方|信頼できる専門家の見極め方

任意売却の成功は、適切な相談先選びから始まります。信頼できる専門家を見極めるためのポイントを具体的にご紹介します。
相談先の候補(不動産会社、弁護士、司法書士)の役割の違い
任意売却の相談先は主に不動産会社、弁護士、司法書士に分かれ、それぞれ異なる役割を担います。
不動産会社は売却活動の実務を担当し、市場価格の査定や買主探し、債権者との売却条件交渉を行います。弁護士は法的な問題全般に対応し、債権者との交渉や債務整理の法的手続きを担当します。司法書士は登記手続きや書類作成を中心に、手続き面でのサポートを提供します。
理想的なのは、これらの専門家が連携してチームとして対応してくれる体制です。ワンストップでサービスを提供している業者を選ぶことで、手続きの効率化と成功率の向上が期待できます。
ホームページで確認すべき3つのチェック項目(実績、専門性、担当者の顔写真など)
信頼できる業者かどうかは、ホームページの内容である程度判断できます。
まず実績については、年間取扱件数や成功事例の具体的な数字が掲載されているかを確認してください。専門性については、任意売却に特化したサービス内容や、専門資格を持つスタッフの在籍状況をチェックしましょう。
担当者の顔写真や経歴が掲載されているかも重要なポイントです。顔の見える対応をしている業者は、責任を持ってサービスを提供する傾向があります。また、相談者の声や体験談が豊富に掲載されている業者は、実際に多くの案件を手がけている証拠と考えられます。
要注意!避けるべき業者の7つの特徴
以下のような特徴を持つ業者は避けることをお勧めします。
電話営業や訪問営業を積極的に行う業者、高額な手数料や成功報酬を要求する業者、契約を急かす業者は要注意です。また、債権者との交渉経験が乏しい業者、売却後のサポートが不十分な業者、他の専門家との連携がない業者も避けるべきです。
最も危険なのは、「絶対に成功する」「必ず高値で売れる」といった過度な約束をする業者です。任意売却には様々なリスクが伴うため、そのようなことを軽々しく約束する業者は信頼できません。現実的で誠実な説明をしてくれる業者を選ぶことが重要です。
まとめ:任意売却のリスクはコントロールできる。まずは専門家へ相談を
任意売却には確かに様々なリスクが存在しますが、それらは正しい知識と適切な対策により、多くの場合コントロールすることが可能です。
重要なのは、リスクを恐れて行動しないことではなく、リスクを正しく理解したうえで、最適な選択をすることです。競売と比較すれば、任意売却は明らかに債務者にとって有利な選択肢と言えます。
ただし、任意売却を成功させるためには、早期の相談と信頼できる専門家選びが不可欠です。一人で悩んでいても問題は解決しません。まずは複数の専門家に相談し、あなたの状況に最適な解決策を見つけることから始めてください。
適切なサポートを受けることで、任意売却のリスクを最小限に抑え、新しい生活への第一歩を踏み出すことができるはずです。