
「この家は夫の名義だから、もしも離婚したら私は出て行かないといけないの?」「夫に先立たれたら、この家に住み続けられる?」といった不安をお持ちではありませんか?
たとえ家が夫名義であっても、妻には法律で認められた権利があります。婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は「共有財産」と見なされ、収入の有無に関わらず妻にも権利が発生するのです。
この記事では、離婚や相続など、様々なケースにおける妻の権利について分かりやすく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、正しい知識を身につけ、万が一の際に備えましょう。
【結論】夫名義の家でも妻の権利は法律で守られています

家の名義が夫単独でも、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産は「共有財産」と見なされ、妻にも権利が認められています。
専業主婦として家事や育児に専念していた場合でも、その貢献は夫の仕事をサポートし、財産形成に寄与したものとして正当に評価されます。つまり、収入がなかったからといって権利がないわけではないのです。
なぜ妻に権利があるの?「共有財産」の考え方
夫婦の財産には「共有財産」と「特有財産」があります。共有財産とは、結婚してから夫婦が協力して築いた財産のことです。
たとえ夫の名義で購入した家でも、妻が家事や育児を担当することで夫が安心して働けたのであれば、その家は夫婦の共同の努力によって手に入れたものと考えられます。法律はこうした「内助の功」を正当に評価し、妻の権利を保護しているのです。
一方、特有財産は結婚前から個人が持っていた財産や、結婚後に相続・贈与で得た個人の財産を指します。
家の権利が問題になる主な3つのケース
夫名義の家について妻の権利が問題となるのは、主に以下の3つのケースです。
1. 離婚するとき(財産分与)
夫婦関係が破綻し、財産を分け合う必要が生じた場合
2. 夫が亡くなったとき(相続)
配偶者として相続権を行使する場合
3. 住宅ローンが残っている場合
の資産価値とローン残高の関係によって権利が複雑になる場合
それぞれのケースで妻が持つ権利や注意点は異なります。次章から詳しく見ていきましょう。
ケース1:離婚するときの妻の権利【財産分与】
離婚時には「財産分与」として、夫婦が結婚期間中に築いた財産を分け合います。家が夫名義であっても、妻には財産分与を受ける権利があります。
財産分与は離婚の原因が誰にあるかに関係なく、夫婦が協力して築いた財産を公平に分配する制度です。たとえ妻が不倫をして離婚に至った場合でも、財産分与の権利は失われません。
財産分与の基本「2分の1ルール」とは?専業主婦でも対象
財産分与では、原則として夫婦の共有財産を2分の1ずつ分け合います。これを「2分の1ルール」と呼びます。
重要なのは、この割合が収入の有無に左右されないということです。夫が年収600万円、妻が専業主婦で収入0円だったとしても、財産分与の割合は原則として1:1となります。
たとえば、結婚後に3,000万円の家を購入した場合、妻には1,500万円相当の権利があることになります。ただし、夫が特殊な技能や資格を持つ医師や弁護士などの場合、2分の1を超える分与が認められるケースもあります。
離婚後、夫名義の家に妻が住み続ける4つの方法
家を手放したくない場合、以下の方法で住み続けることが可能です。
1. 財産分与で家そのものをもらう 家の価値が3,000万円で妻の取り分が1,500万円の場合、差額の1,500万円を夫に支払うことで家を完全に自分のものにできます。これを「代償分割」と言います。
2. 賃貸契約として家賃を支払って住む 夫が家の所有権を保持し、妻が賃借人として家賃を支払って住み続ける方法です。
3. 使用貸借として一定期間住む 子どもが成人するまでなど、期間を限定して無償で住み続ける取り決めを行います。
4. 共有名義にして住み続ける 家を夫婦の共有財産として名義変更し、妻が居住を続ける方法もあります。
家を売却して現金で分ける方法
住み続けることにこだわらず、家を売却して現金で分割する方法もあります。この方法のメリットは、権利関係が明確になり、お互いが完全に独立できることです。
一方、デメリットとしては、子どもの学校の都合や愛着のある家を手放さなければならない点、売却にかかる諸費用(仲介手数料や登記費用など)が発生する点が挙げられます。
売却代金が3,000万円で諸費用が200万円かかった場合、残りの2,800万円を1,400万円ずつ分け合うことになります。
特有財産とは?夫が結婚前に購入した家の場合
夫が独身時代に購入した家は「特有財産」に該当し、原則として財産分与の対象外となります。
ただし、結婚後に夫婦でリフォーム費用を負担したり、妻が住宅ローンの返済に協力したりした場合は、その貢献分について財産分与が認められる可能性があります。
たとえば、結婚前に夫が2,000万円で購入した家に、結婚後500万円をかけてリフォームした場合、リフォーム部分については妻にも権利が発生する可能性があります。
ケース2:夫が亡くなったときの妻の権利【相続】

夫が亡くなった場合、妻は「配偶者」として法定相続人となり、家を含む夫の財産を相続する権利があります。
2020年4月から施行された民法改正により「配偶者居住権」という新しい制度が創設され、妻の居住権がより手厚く保護されるようになりました。これにより、住み慣れた家に住み続けながら、他の相続財産も受け取りやすくなっています。
妻は常に法定相続人!相続できる割合は?
妻は他の相続人の有無に関わらず、常に法定相続人となります。法定相続分は以下のとおりです。
| 相続人の構成 | 妻の法定相続分 | その他の相続人の法定相続分 |
|---|---|---|
| 妻と子 | 1/2 | 子が1/2(複数いる場合は均等分割) |
| 妻と親 | 2/3 | 親が1/3(両親がいる場合は均等分割) |
| 妻と兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹が1/4(複数いる場合は均等分割) |
| 妻のみ | 1/1(全部) | なし |
たとえば、夫の遺産が4,000万円で子どもが2人いる場合、妻は2,000万円、子どもはそれぞれ1,000万円ずつを相続することになります。
住み慣れた家を守る「配偶者居住権」とは?
配偶者居住権とは、夫名義の家に妻が住んでいた場合、夫の死後も妻がその家に住み続けられる権利のことです。
従来の制度では、家を相続すると他の財産(現金や預貯金)を十分に受け取れないケースがありました。しかし、配偶者居住権を設定することで、家の「所有権」と「居住権」を分離できるようになり、妻は住む権利を確保しながら他の財産も受け取りやすくなりました。
たとえば、3,000万円の家がある場合、配偶者居住権を1,500万円、所有権を1,500万円に分けることで、妻は居住権を取得し、子どもは所有権を取得するといった柔軟な相続が可能になります。
遺言書がある場合の注意点「遺留分」
夫が「愛人に全財産を譲る」といった不公平な遺言を残していた場合でも、妻には「遺留分」という最低限の相続権が法律で保障されています。
妻の遺留分は、子どもがいる場合は遺産の4分の1、子どもがいない場合は2分の1です。遺言の内容に不服がある場合は、遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の相続分を確保できます。
ただし、遺留分侵害額請求には「相続開始を知った日から1年以内」という時効があるため、早めの対応が重要です。
【要注意】住宅ローンが残っている夫名義の家の権利

多くの家庭では住宅ローンを利用して家を購入しているため、離婚や相続の際にはローン残高も考慮する必要があります。
重要なのは、家の現在価値(時価)とローン残高の関係です。家の価値がローン残高を上回る場合を「アンダーローン」、下回る場合を「オーバーローン」と呼び、それぞれで妻の権利が異なります。
家の価値 > ローン残高(アンダーローン)の場合
家の時価3,000万円、ローン残高1,000万円の場合、実質的な資産価値は2,000万円となります。
離婚時の財産分与では、この2,000万円を基準に分割することになります。妻の取り分は原則として1,000万円です。
ただし、家に住み続けたい場合は、家の名義を取得する代わりに、夫に対して以下の金額を支払う必要があります。
支払額の計算例:
- 家の価値:3,000万円
- 妻の負担:ローン残高1,000万円+夫への代償金1,000万円=2,000万円
家の価値 < ローン残高(オーバーローン)の場合
家の時価2,000万円、ローン残高3,000万円の場合、実質的な資産価値はマイナス1,000万円となります。
この場合、家は財産分与の対象とはならず、原則として妻に権利は発生しません。むしろ、妻が連帯保証人になっている場合は、債務を負担するリスクがあります。
オーバーローンの状況では、任意売却を検討することが解決策の一つです。任意売却とは、金融機関の同意を得て市場価格で家を売却し、残った債務については返済条件を見直す手続きです。
夫名義の家についてよくある質問(Q&A)

Q. 別居中ですが、夫に家を勝手に売却されないか心配です
A. 別居中であっても、夫が独断で家を売却しようとした場合、「処分禁止の仮処分」という法的手続きを申し立てることができます。
この手続きにより、離婚成立まで家の売却を法的に阻止することが可能です。ただし、申し立てには一定の条件と費用がかかるため、まずは弁護士に相談することをお勧めします。別居が始まったら早めに専門家に相談し、適切な対応策を検討しましょう。
Q. 内縁の妻(事実婚)の場合、権利はありますか?
A. 内縁関係では法律上の配偶者ではないため、相続権はありません。しかし、財産分与については法律婚と同様に認められる可能性があります。
内縁関係が長期間継続し、夫婦同様の生活実態があった場合、家庭裁判所が財産分与を認めるケースがあります。ただし、内縁関係の立証が必要になるため、同居の事実や生活費の負担状況などの証拠を準備しておくことが重要です。
Q. 夫の親の土地に夫名義の家を建てた場合はどうなりますか?
A. 土地と建物で所有者が異なる場合、権利関係が複雑になります。建物部分については夫婦の共有財産として財産分与の対象となりますが、土地については義父母の財産のため、妻に権利はありません。
ただし、土地の使用権(借地権など)がある場合は、その権利も財産として評価される可能性があります。また、建物を取得しても土地の使用権がなければ現実的に住み続けることが困難な場合もあるため、専門的な判断が必要です。
まとめ:夫名義の家の権利で悩んだら、一人で抱え込まず専門家へ相談を
夫名義の家であっても、妻には法律で認められた権利があります。重要なポイントを以下にまとめます。
- 離婚時:財産分与により原則2分の1の権利がある
- 相続時:法定相続人として確実に権利がある(配偶者居住権も活用できる)
- 住宅ローン:アンダーローンかオーバーローンかで権利が大きく変わる
- 専業主婦:収入がなくても内助の功として正当に評価される
ただし、個別の事情によって最適な解決策は異なります。家の取得時期、ローンの有無、他の相続人の存在など、様々な要因が権利に影響を与えるためです。
離婚や相続について不安を感じている場合、まずは一人で悩まず、弁護士や司法書士、不動産の専門家に相談することが最善の道です。早めの相談により、より多くの選択肢を検討でき、有利な解決につながる可能性が高まります。

