【専門家が解説】逮捕されたら住宅ローンはどうなる?返済義務と家を守るには

2025.08.28

  • 任意売却
【専門家が解説】逮捕されたら住宅ローンはどうなる?返済義務と家を守るには

ご家族が逮捕された、あるいはご自身が万が一の状況になった場合、「住宅ローンはどうなるのか」「このまま家に住み続けられるのか」と、計り知れない不安を感じていることでしょう。

この記事では、逮捕という非常事態に直面した際の住宅ローンに関する疑問や不安を解消します。まずは落ち着いて、現状を把握し、取るべき行動を一緒に確認していきましょう。

この記事を読めば、家を守るために今何をすべきかが分かります。

結論:逮捕されても住宅ローンの返済義務はなくならない

まず最も重要なことをお伝えします。たとえ逮捕・勾留されたとしても、住宅ローンの返済義務が免除されることはありません。これは、刑事事件と個人の民事契約(ローン契約)が法的に全く別の問題として扱われるためです。

例えば、会社員のAさんが容疑で逮捕されたとしても、住宅ローン契約そのものには何の影響もなく、毎月の返済日は変わらずやってきます。

金融機関は逮捕の事実をすぐには把握しない

逮捕されたからといって、すぐに金融機関にその事実が伝わるわけではありません。金融機関が問題として認識するのは、主に返済が滞った時点からです。

そのため、パニックにならず、まずは冷静に状況を整理することが重要でしょう。銀行は警察と連携しているわけではないため、返済さえ続いていれば逮捕の事実を知られることはほぼありません。

住宅ローンを滞納するとどうなる?最悪のケース「競売」までの流れ

逮捕によって収入が途絶え、住宅ローンの返済が滞ってしまった場合、家はどうなるのでしょうか。

金融機関は段階的に対応を進めていきます。滞納期間に応じて起こることを時系列で解説しましょう。

1~2ヶ月の滞納:督促状・催告書が届く

この段階では、電話や郵便で金融機関から返済を促す連絡が入ります。まだこの時点であれば、遅延損害金を支払うことで解決できるケースがほとんどです。

具体的には年14.6%程度の遅延損害金が発生しますが、元本に比べればそれほど大きな負担ではありません。この段階での対応が最も重要になります。

3~6ヶ月の滞納:「期限の利益の喪失」と一括返済請求

滞納が続くと、「期限の利益の喪失」という通知が届きます。これは「分割で返済する権利を失ったため、残りのローンを全て一括で支払ってください」という非常に重い通知です。

例えば、2,000万円のローン残高がある場合、この通知が届けば2,000万円を一括で支払わなければなりません。一般的に、ここから状況は深刻化していきます。

6ヶ月以降:保証会社による代位弁済と「競売」

一括返済ができない場合、保証会社があなたに代わって金融機関にローン残額を支払います(代位弁済)。その後、保証会社はあなたに対して一括返済を求めます。

最終的には裁判所に申し立て、家は強制的に「競売」にかけられてしまうのです。競売では市場価格の5~7割程度でしか売れないため、大きな損失を被ることになります。

家を守るために!逮捕されたときに取るべき3つの対処法

競売という最悪の事態を避けるために、打てる手はあります。

重要なのは、できるだけ早く行動を起こすことです。時間が経つほど選択肢は狭まっていくため、迅速な対応が求められます。

対処法1:まずは正直に金融機関へ相談する

最も大切な初動です。返済が滞る前に、現在の状況を正直に金融機関へ相談しましょう。

返済期間の延長(リスケジュール)など、返済プランの見直しに応じてもらえる可能性があります。例えば、月々10万円の返済を一時的に5万円にしてもらったり、元本据え置きで利息のみの支払いに変更してもらったりする方法があるのです。

対処法2:家族が協力して返済を続ける

配偶者や親族など、協力してくれる方がいれば、一時的に返済を肩代わりしてもらう方法です。

誰がどのように返済していくのか、家族内でしっかりと話し合う必要があります。ただし、長期間の肩代わりは家族関係に負担をかける可能性もあるため、慎重な検討が必要でしょう。

対処法3:競売を避けるための「任意売却」を検討する

任意売却はどうしても返済の継続が難しい場合の、非常に有効な手段です。

競売にかけられる前に、自らの意思で家を売却し、その売却代金をローン返済に充てる方法になります。後述するように、競売に比べて圧倒的にメリットが多い選択肢といえるでしょう。

任意売却とは?競売との違いと知っておくべきメリット

任意売却は、家を手放すことにはなりますが、競売に比べて多くのメリットがあります。

適切な専門家のサポートを受けることで、より良い条件での売却が可能になるのです。

メリット1:市場価格に近い価格で売却できる

競売の場合、市場価格の5~7割程度でしか売れないことが一般的です。しかし、任意売却は通常の不動産売買と同じように売却活動を行うため、より高い価格で売れる可能性が高まります。

例えば、3,000万円の市場価値がある家の場合、競売では1,500~2,100万円程度にしかならないところが、任意売却なら2,500~2,800万円程度で売却できることもあるでしょう。

メリット2:プライバシーが守られる

競売になると、物件情報がインターネットや新聞で公開されてしまいます。近所の方に事情を知られてしまう可能性が高いのです。

任意売却であれば、近隣に事情を知られることなく、秘密厳守で売却を進めることが可能になります。通常の住み替えと同じような形で進められるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。

メリット3:残ったローンの分割返済も交渉可能

任意売却をしてもローンが残ってしまう場合があります。その場合も、専門家を通じて金融機関と交渉し、無理のない範囲での分割返済(月々5,000円~など)に応じてもらえるケースがほとんどです。

競売後の場合、保証会社は一括返済を強く求めてくるため、このような柔軟な対応は期待できません。任意売却ならではの大きなメリットといえます。

逮捕後の住宅ローンに関するQ&A

多くの方が抱える疑問について、Q&A形式でお答えします。

実際の相談現場でよく聞かれる質問を中心に、専門家の視点から回答いたします。

Q. 逮捕されたら団体信用生命保険(団信)はどうなりますか?

A. 逮捕や勾留は、団信の支払い事由である「死亡・高度障害」には該当しません。そのため、団信によってローンが完済されることはありません。

また、保険会社に虚偽の申告をするなど、不正に保険金を受け取ろうとする行為は詐欺罪に該当する可能性があります。正しい知識を持って対応することが重要でしょう。

Q. どこに相談すれば良いのでしょうか?

A. 状況によって相談先は異なります。返済プランの見直しであれば「金融機関」が第一の相談先です。

法律的な問題が絡む場合は「弁護士」への相談が必要になります。そして、任意売却を具体的に検討する場合は、実績の豊富な「不動産会社」や「任意売却専門のコンサルタント」への相談が有効といえるでしょう。

Q. リースバックという方法も聞きましたが、どうなのでしょうか?

A. リースバックは、家を売却した後も賃貸として住み続けることができる方法です。愛着のある家に住み続けたい場合には有効な選択肢になります。

ただし、売却価格が相場より安くなる傾向や、家賃が割高になる可能性もあるため、メリット・デメリットを専門家とよく相談する必要があるでしょう。特に長期的な資金計画をしっかりと立てることが重要です。

まとめ:一人で抱え込まず、まずは専門家へ相談を

ご家族が逮捕されるという事態は、精神的にも経済的にも非常に大きな負担となります。しかし、住宅ローンの問題は、早期に行動することで、最悪の事態を回避できる可能性が高まります。

重要なポイントは以下の3つです。

  • 逮捕されても返済義務はなくならない
  • 滞納が続くといずれ家は競売にかけられてしまう
  • 金融機関への相談や任意売却など、打てる手は存在する

何よりも大切なのは、一人で抱え込まず、専門知識を持った第三者に相談することです。今後の生活を再建するためにも、まずは無料相談などを活用し、専門家の声に耳を傾けてみてください。

適切な対応を取ることで、必ず道は開けるはずです。

この記事を書いた人
ポートレート 笹井信弘
笹井 信弘
ファイナンスや法令に関する豊富な知識と経験を活かし、資産運用や不動産に関する悩みを抱える方々の相談に親身に対応しています。相談員として一人ひとりの状況に寄り添い、最適な解決策を提案するだけでなく、より多くの方が安心して資産や不動産に向き合える社会を目指し、書籍の執筆・出版活動にも力を入れています。
主な著書:「お金の教養」完全ガイド住宅ローンが苦しくなったら読む本:任意売却の正しい知識、など

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