相談者様のプロフィール
相談者の情報
小林健太郎さん(仮)、41歳、埼玉県所沢市在住。
元IT関連個人事業主(システム開発・保守)、事業歴12年、最盛期年収850万円。
妻・美穂さん(38歳)、長女・あかりさん(中学2年生・14歳)、長男・ゆうたくん(小学5年生・11歳)の4人家族。
物件・ローンの情報
2017年に購入した築8年の戸建て(4LDK)。住宅ローン残債3,200万円、月額返済12万円。事業好調時に頭金500万円で購入。
ご相談の内容
小林さんは長年、IT関連の個人事業主として順調に事業を展開していました。しかし2022年春、主要取引先の大手企業がDX推進により内製化を進め、外部委託を大幅に削減したことで売上が前年比60%減となりました。新規営業に奔走しましたが、コロナ禍での企業の投資抑制と価格競争で思うような成果は出ませんでした。
妻の美穂さんがパート勤務を始めましたが、月8万円の収入では住宅ローン月額12万円と子供2人の教育費を賄うには不十分でした。貯金を切り崩しながらの生活が続き、2023年冬についに住宅ローンを2ヶ月滞納してしまいます。
「一時的な問題だから」と妻には軽く説明していましたが、滞納が5ヶ月となった2024年春、もはや隠しきれずに家計の実情を打ち明けました。美穂さんから「なぜもっと早く相談してくれなかったの」と涙ながらに問い詰められ、小林さんは深い自責の念に駆られました。
代位弁済の通知が届いた時、小林さんは毎晩家族が寝静まった後に「住宅ローン 払えない」「競売 回避方法」で検索を繰り返すようになりました。娘のあかりさんが「お父さん、最近元気ないね」と心配してくれる言葉がかえって胸に刺さり、息子のゆうたくんの中学受験も控える中「子供たちの将来まで潰してしまう」という焦燥感が日に日に強くなっていきました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回相談で、小林さんの事業状況と今後の収入見込みを詳しく伺いました。IT業界での実績と人脈を活かせば再起は十分可能と判断し、任意売却により住宅ローンの負担を軽減して新たなスタートを切ることをご提案しました。
債権者との交渉では、小林さんの事業再建への意欲と具体的な計画を丁寧に説明し、任意売却への同意を得ることができました。売却活動では、築浅の4LDK戸建てという好条件を活かし、ファミリー層を中心に積極的にアピールしました。
複数の購入希望者が現れる中、最も高い価格を提示した買主様との交渉を進め、2,650万円での売却が成立しました。残債550万円は月3万円の分割返済とし、小林さんの収入状況に応じて柔軟に対応できる条件で合意に至りました。
引越し先についても当協会のパートナー不動産会社を通じて、子供たちの学区を変えずに済む賃貸住宅をご紹介し、スムーズな転居を実現しました。
相談者の声

正直、最初は任意売却について半信半疑でした。借金が残るなら意味がないのではと思っていましたし、不動産会社に安く買い叩かれるのではという不安もありました。でも実際は、競売になるよりもはるかに高い価格で売却でき、残債も現実的な金額まで圧縮できました。
一番心配していたのは子供たちのことでした。転校させるのは可哀想だと思っていましたが、学区内での引越しができ、あかりもゆうたも「新しい家も悪くないね」と前向きに受け入れてくれました。妻との関係も、問題が解決したことで以前の信頼関係を取り戻すことができています。
現在は新規事業の立ち上げに向けて準備中で、以前のような大きなプレッシャーを感じることなく、着実に歩みを進められています。あの時勇気を出して相談して本当に良かったと思います。
担当者のコメント

小林さんのケースは、個人事業主の方が直面する典型的な課題でした。売上の変動リスクが高い業種だからこそ、問題が深刻化する前の早期相談が重要です。
今回特に心がけたのは、小林さんの事業再建への可能性を債権者に理解していただくことでした。過去の実績と人脈、そして何より本人の強い再起への意志を丁寧に説明することで、柔軟な返済条件を引き出すことができました。
個人事業主の方は収入の不安定さから住宅ローンの問題を一人で抱え込みがちですが、専門機関に相談することで必ず解決の道筋が見えてきます。大切なのは問題を先送りせず、早めに行動を起こすことです。
