相談者様のプロフィール
三浦恵子さん(仮)、43歳、神奈川県藤沢市出身。
地元の調剤薬局でパート薬剤師として勤務(年収380万円)。
元夫(45歳・IT企業勤務)との間に長女(17歳・高校2年生)、次女(13歳・中学1年生)の2人の娘がいる。3年前に元夫の浮気が発覚し、2年間の別居を経て半年前に協議離婚が成立。
現在は実家(茅ヶ崎市)に身を寄せており、元夫と娘たち2人が藤沢市のマンション(築8年・残債1,800万円)に住んでいる。
物件・ローンの情報
2017年に購入した3LDKマンション。
購入価格3,500万円、頭金500万円(うち恵子さんが300万円を拠出)。
現在のローン残債は1,800万円で、月々の返済は約9万円。名義は元夫の単独名義だが、婚姻中は恵子さんも正社員として働き、生活費やローン返済を支えてきた。
ご相談の内容
恵子さんは半年前、元夫との協議離婚が成立した際、「子どもたちの環境を変えたくない」という元夫の言葉を信じ、財産分与の具体的な取り決めを書面にしないまま離婚届に判を押しました。元夫がマンションのローンを払い続け、娘たちがそのまま住み続けるという口約束だけで、財産分与は「落ち着いてから話し合おう」と先送りにされていました。
離婚から半年が経過した4月初旬、長女から「お父さんに新しい彼女ができた」とLINEで報告を受けました。動揺しながらも「元夫の人生だから」と自分に言い聞かせていた恵子さんでしたが、5月中旬、元夫から突然「秋に再婚するから、マンションを売却したい。財産分与は売却価格の2割でいい」と一方的に告げられました。
恵子さんは「娘たちの生活はどうなるのか」と聞きましたが、元夫は「上の子はもうすぐ卒業だし、下の子は一緒に来てもいい。でも実家が近いんだから引き取ればいいだろ」と無責任な返答でした。娘たちは転校を嫌がり、恵子さんのもとで暮らすことを希望していましたが、実家は狭く長期的に住むのは現実的ではありませんでした。
恵子さんは深夜までインターネットで「離婚 財産分与 後から」「元夫 家 住み続ける」などと検索しましたが、「離婚後は財産分与を請求できない」という書き込みもあれば、「2年以内なら大丈夫」という情報もあり、何が正しいのか分からなくなりました。実母に相談しても「あなたが我慢しなさい」と言われ、孤独を感じる日々でした。唯一、薬局の先輩が「ちゃんと専門家に相談した方がいい」と背中を押してくれたことで、相談を決意しました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談では、まず恵子さんの不安を一つひとつ丁寧に伺いました。離婚後半年が経過していることを心配されていましたが、財産分与請求権は離婚成立から2年以内であれば行使できることをご説明し、まだ十分に間に合うことをお伝えしました。
次に、元夫が主張する「売却価格の2割」という提案が妥当かどうかを検証しました。婚姻中、恵子さんは正社員として12年間働き、マンション購入時の頭金500万円のうち300万円を出していました。また、婚姻期間中のローン返済にも家計として貢献していたため、財産分与の割合は原則として2分の1とするのが妥当であることをご説明しました。
マンションの現在の市場価格を不動産査定により確認したところ、約3,200万円と評価されました。ローン残債1,800万円を差し引くと、財産価値は1,400万円となり、恵子さんが受け取るべき財産分与額は700万円が基準となることが分かりました。
ただし、恵子さんの最大の願いは「娘たちが転校せずに済む方法」でした。そこで、元夫との交渉において、以下の提案を行いました。第一に、娘たちが高校・中学を卒業するまでの間、マンションの売却を猶予してもらうこと。第二に、その間のローン返済について、恵子さんも一部負担する代わりに、将来の売却時には適正な財産分与を受け取ること。第三に、これらの内容を公正証書として残し、法的拘束力を持たせることでした。
元夫は当初、再婚を急ぐあまり強硬な姿勢でしたが、弁護士を通じて法的根拠を示しながら交渉を進めたところ、態度が軟化しました。最終的に、長女が高校卒業する2年後にマンションを売却し、その際に恵子さんが財産分与として650万円を受け取ること、それまでの間は元夫がローンを全額負担することで合意に至りました。また、娘たちの養育費についても、これまで曖昧だった金額を月額1人あたり5万円(計10万円)と明確にし、公正証書として残しました。
相談者の声

相談するまでは、離婚後半年も経っているから財産分与を請求するのは無理だと思い込んでいました。インターネットで調べれば調べるほど不安になり、眠れない夜が続いていました。
専門家の方に、2年以内なら請求できること、私が受け取れる金額の目安、娘たちの生活を守るための具体的な方法を教えていただき、初めて前を向くことができました。元夫との交渉も、感情的にならず法的根拠を示しながら進めていただいたおかげで、最終的には娘たちが卒業するまでマンションに住み続けられることになりました。
離婚時に「落ち着いてから話し合おう」という曖昧な約束を信じてしまったことは反省していますが、今回きちんと公正証書として残せたことで安心できました。2年後には正社員として復帰し、娘たちと新しい生活を始める準備を整えるつもりです。相談して本当に良かったです。
担当者のコメント

離婚時に財産分与を曖昧にしたまま成立させてしまうケースは少なくありません。特に、お子さんの生活環境を優先するあまり、ご自身の権利を後回しにしてしまう方が多くいらっしゃいます。
恵子さんのケースでは、離婚後半年が経過していましたが、財産分与請求権の時効は2年ですので、十分に権利を行使できる状況でした。また、マンション購入時の頭金拠出や婚姻期間中の家計への貢献を証明できたことで、適正な財産分与額を算定できました。
今回の解決のポイントは、単に金銭的な権利を主張するだけでなく、お子さんたちの生活の安定を最優先に考えた交渉を行ったことです。元配偶者との感情的な対立を避け、法的根拠と現実的な提案を組み合わせることで、双方にとって納得のいく結果を得ることができました。
離婚後の財産分与や子どもの養育環境でお悩みの方は、時間が経過する前に早めにご相談ください。書面に残していない約束でも、適切な証拠があれば権利を守ることができます。
