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父の遺した賃貸アパートを相続。経営継続すべきか売却すべきか、判断がつかず悩み続けた日々

相続

相談者様のプロフィール

小林恵子さん(仮)、52歳、神奈川県藤沢市在住。
医療機器メーカーの経理事務として27年勤務、年収480万円。
夫(55歳・IT企業営業)、長男(26歳・独立)、長女(23歳・実家暮らし)の4人家族。
3ヶ月前に父が他界し、千葉県松戸市にある築35年の木造アパート(8戸、入居率62.5%)を相続することに。
母(76歳)は松戸で一人暮らし、弟(48歳)は大阪在住。

ご相談の内容

父の突然の他界後、実家の片付けで賃貸アパートの存在を知りました。父は几帳面な性格で、入居者ごとのファイルや修繕履歴を丁寧に記録していました。その姿に胸が締め付けられる思いでしたが、同時に「これを私が引き継げるのか」という不安が湧き上がりました。

四十九日を過ぎ、母と弟を交えた相続協議で、母は「もう管理できないから恵子に任せたい」と言い、弟も「姉さんが継ぐなら異論はない」と。ただ、弟からは「売却して現金で分けるのもあり」とも言われ、方向性が定まりませんでした。

休日に夫と現地を訪れると、外壁の塗装は剥げ、空室の一室には雨漏りの跡がありました。夫から「これ、かなりお金かかるよ」と言われ、帰りの車中で言葉が出ませんでした。入居者の方に「今後どうなるんでしょうか」と心配された際、「ちゃんと対応します」と答えたものの、その責任の重さに押しつぶされそうでした。

仕事の昼休みにスマホで情報を集めましたが、「不労所得で豊かな生活」という明るい情報から「古いアパートは負動産」という不安を煽るものまでバラバラで、何を信じていいかわからなくなりました。父の確定申告資料を見ると、年間収入約360万円に対し、手取りは200万円程度。さらに入居者からエアコン故障の連絡があり、修理業者に「大家が変わったなら契約し直し」と言われ、急に現実的な責任を実感しました。

家族会議では夫から「管理会社に任せるか売却が現実的」、長男から「俺は将来継ぐの無理」、長女からは「お母さんがやりたいならサポートする」と意見が分かれました。結論は出ず、夜中に目が覚めて眠れない日が続きました。母からの「無理しなくていいのよ」という優しい電話も、かえって決断を迫られている気がして辛くなりました。

会社の同僚から「親の不動産で悩んだとき、専門家に相談して楽になった」と聞き、週末の夜にスマホで相談窓口を探しました。問い合わせフォームに指が止まりましたが、「今動かなければ、ずっと悩み続ける」と思い、送信ボタンを押しました。

相談所からのご提案・解決までの流れ

まず、恵子さんの状況を詳しくヒアリングし、アパートの収益性と物件状態、そして恵子さんご自身のライフスタイルを総合的に分析しました。現地調査を行い、建物診断の専門家とともにアパートの状態を確認。外壁塗装、屋根防水、空室のリフォームなど、必要な修繕費用を約450万円と算定しました。

一方で、立地や周辺の賃貸需要を調査した結果、適切な修繕とリフォームを行えば、入居率を85%程度まで改善できる見込みがあることが判明しました。管理会社複数社からも提案を受け、委託管理費用や対応範囲を比較検討しました。

恵子さんのフルタイム勤務と松戸までの距離を考慮し、信頼できる管理会社への全面委託をご提案。さらに、修繕資金については、アパートローンを活用することで自己資金を大きく減らさずに対応できる方法を提示しました。

同時に、売却した場合のシミュレーションも実施。築35年の物件で、売却価格は約3,500万円が見込まれましたが、仲介手数料や測量費用などを差し引くと、母と弟への分配後、恵子さんの手元に残るのは約1,100万円でした。

恵子さんは数週間かけて家族と何度も話し合い、最終的に「3年間は経営を続けてみる」ことを決断されました。その間に経営の実態を把握し、3年後に改めて継続か売却かを判断するという段階的なアプローチです。

具体的には、まず緊急性の高い屋根防水と空室1室のリフォームに約200万円を投資。アパートローンで150万円を借り入れ、残り50万円を自己資金で対応しました。管理会社との契約では、入居者募集から日常管理、クレーム対応までを委託し、恵子さんは月1回の収支報告確認と重要な判断のみを担う体制を構築しました。

相続手続きについては、母には居住権の配慮として月々の収益から一定額を仕送りする形とし、弟には他の預貯金資産を多めに配分することで納得してもらい、円満に相続登記を完了させました。税理士とも連携し、確定申告のサポート体制も整えました。

相談者の声

最初は情報が多すぎて混乱していましたが、専門家の方に現地まで来ていただき、建物の状態を一つ一つ確認しながら説明してもらえたことで、ようやく現実的な判断ができるようになりました。

特に助かったのは、継続と売却の両方のシミュレーションを出してもらえたこと。数字で比較できたことで、夫も「3年間やってみるのは悪くない」と納得してくれました。管理会社選びも、複数社を比較検討できるよう手配してくださり、自分に合った会社を選べました。

相談前は「管理会社に任せれば何もしなくていい」と思っていましたが、それは誤解で、大家としての最終判断は自分が行う必要があることを理解しました。ただ、日常的な対応を任せられることで、フルタイム勤務との両立が可能だとわかり、安心しました。

経営開始から半年が経ち、リフォームした部屋にも入居者が決まりました。月に一度、管理会社からの報告を見るのが少し楽しみになっています。父が大切にしてきたものを、今は私なりのやり方で守っている実感があります。母も「お父さんも喜んでいると思うわ」と言ってくれました。

担当者のコメント

相続した不動産の扱いは、感情と経済性の両面から判断が難しく、多くの方が恵子さんと同じように悩まれます。特に賃貸物件は「経営」という側面があるため、相続人の生活スタイルやスキルとのマッチングが重要になります。

恵子さんのケースでは、すぐに継続か売却かを決めるのではなく、「まず3年間やってみる」という段階的なアプローチを提案しました。これにより、実際の経営を経験した上で最終判断ができ、後悔のない選択につながります。

また、相続は家族全体の問題です。母上様や弟様への配慮を含めた相続設計により、円満に手続きを進められたことも成功の要因でした。管理会社の選定では、単に手数料の安さではなく、対応の丁寧さやレポートの質など、恵子さんが安心して任せられる相手かどうかを重視しました。

賃貸不動産の相続でお悩みの方は、感情だけでも数字だけでもなく、両方を統合した判断が必要です。一人で抱え込まず、専門家とともに最適な道を探していきましょう。