相談者様のプロフィール
小林誠さん(仮)、48歳、埼玉県川口市在住。
IT企業のシステムエンジニアで、年収は約520万円。会社勤続23年。
妻(47歳・専業主婦、元看護師)、長男(22歳・大学4年生)、次男(19歳・専門学校1年生)、義母(73歳・要介護2)の5人家族。
【物件・ローンの情報】
2010年に購入した築15年の戸建て住宅(4LDK)。
住宅ローン残債は約1,680万円。月々の返済は約8.5万円。
現在の市場相場は1,300万円前後。 カードローン残債は3社で計150万円。
ご相談内容
誠さんは、IT企業で23年間勤務してきた真面目な会社員です。3年前、妻の母である節子さんが認知症と診断され、同居することになりました。妻の兄弟は海外赴任中で頼れず、小林家で引き取る以外に選択肢がありませんでした。
義母の介護が始まると、妻の真由美さんの生活は一変しました。元看護師でしたが、身内の介護は想像以上に大変で、夜間の徘徊対応や環境変化への対応に追われました。デイサービス利用料やおむつ代、医療費で月5〜6万円の負担が増え、義母の年金だけではまかなえず、誠さんの給与から補填することになりました。
さらに、長男は県外大学への仕送りで月10万円、次男は専門学校進学で年間120万円の学費が必要でした。介護費用と教育費が重なり、もともとギリギリだった家計は完全に赤字に転じました。
2023年秋、真由美さんが過労とストレスで倒れ、適応障害と診断されました。1ヶ月の療養が必要となり、その間の義母のショートステイ利用料は月12万円。誠さんは有給休暇を使い、在宅勤務を増やして対応しましたが、家計はさらに圧迫されました。
2024年2月、初めて住宅ローンの引き落としができませんでした。会社の財形貯蓄を解約して3月分は何とか支払いましたが、4月、5月と再び滞納。カードローンも3社から計150万円まで膨らんでいました。銀行から内容証明郵便が届いたとき、誠さんは自分の手が震えていることに気づきました。
妻には見せまいと郵便物を隠し、会社帰りにファミレスで一人、途方に暮れる日々が続きました。次男は家の雰囲気の変化を感じ取り、家にはほとんど寄りつかなくなりました。専門学校の授業にも遅刻や欠席が目立ち始めました。
2024年9月のある夜、誠さんは意を決して妻に全てを打ち明けました。真由美さんは最初、言葉を失いましたが、しばらくして「そんなに一人で抱え込んでいたの」と涙を流しました。二人は夜遅くまで話し合い、「家を失うことは悲しいけど、家族がバラバラになるよりはマシ」という結論に至りました。翌朝、誠さんは任意売却の相談所に電話をかけました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回のご相談では、誠さんご夫婦の現状を詳しく伺いました。誠さんは緊張で表情が硬く、何度も「すみません」と謝っていました。まず任意売却の仕組みと競売との違い、そして「会社に知られることはない」「家族全員がブラックリストに載るわけではない」という誤解を丁寧に解消しました。特に誠さんが心配されていた残債の一括返済については、現実的な分割返済の交渉が可能であることをお伝えしました。
次に、義母の介護と住まいの問題を切り離して考えることを提案しました。地域包括支援センターと連携し、義母が利用できる特別養護老人ホームや介護施設の情報を収集しました。幸い、川口市内の施設で空きが出る見込みがあり、入所申請の手続きを進めることができました。
家計全体の見直しも行いました。カードローン3社の残債150万円については、債務整理の専門家とも連携し、返済計画を再構築しました。長男は就職が決まっており、来春からは仕送りが不要になること、次男の学費についても奨学金の追加申請ができることが分かり、将来的な家計改善の見通しが立ちました。
債権者である銀行との交渉では、誠さんの事情を丁寧に説明し、任意売却への理解を得ました。売却活動は約4ヶ月間行い、相場に近い1,280万円で買い手が見つかりました。残債約400万円については、月々3万円の10年分割返済で合意することができました。
売却後の住まいについては、同じ川口市内で家賃8.5万円の3LDK賃貸マンションを紹介しました。義母は施設入所が決まり、次男も通学可能な範囲です。引っ越しのタイミングや費用の工面も含めて、無理のない生活再建プランを一緒に組み立てました。
相談者の声

相談するまでは、任意売却は自己破産の一歩手前だと思っていました。会社に知られたらどうしようという不安もあり、なかなか相談できませんでした。でも、実際に話を聞いてみると、そういった誤解がすべて解消されて、現実的な解決策があることが分かりました。
一番心配していたのは、義母の介護をどうするかということでした。家を売ったら義母の居場所がなくなるのではないか、妻の負担がさらに増えるのではないかと思っていました。でも、担当者の方が地域包括支援センターとも連携してくださり、義母が安心して過ごせる施設を見つけることができました。妻も「お母さんは専門的なケアを受けられる方が幸せだと思う」と言ってくれました。
家は手放すことになりましたが、住宅ローンとカードローンの重圧から解放されて、家族の表情が明るくなりました。次男も最近は家にいる時間が増え、以前のように話をするようになりました。妻も少しずつ元気を取り戻しています。もっと早く相談していれば、家族にこんなに心配をかけずに済んだと思います。一人で抱え込まず、専門家に相談することの大切さを痛感しました。
担当者のコメント

誠さんは非常に責任感が強く、家族思いの方でした。義母の介護も教育費も、全て自分一人で何とかしなければと思い込んでしまい、結果的に状況を悪化させてしまいました。初回のご相談では「自分の管理が甘かったせいで」と何度も自分を責める言葉を口にされていたのが印象的でした。
今回のケースで大切にしたのは、問題を一つずつ切り分けて、優先順位をつけて解決することでした。住宅ローンの問題と義母の介護の問題は、実は別々に対処できることをお伝えし、それぞれに適切な解決策を提案しました。また、地域の福祉サービスや公的支援制度の活用も重要でした。
介護と住宅ローンの両立は、高齢化社会において多くの方が直面する問題です。一人で抱え込まず、早めに専門家に相談することで、家族を守りながら解決する道が必ず見つかります。誠さんご夫婦が最終的に笑顔で新生活をスタートされたとき、私たちも本当にほっとしました。どんな状況でも、あきらめずにご相談ください。必ず解決の道はあります。
