相談者プロフィール
相談者の情報
黒沢健一さん(仮)、47歳、埼玉県春日部市在住。
介護老人保健施設の介護福祉士として12年勤務。
年収約380万円(腰痛による夜勤減少前は420万円)。
妻(45歳・パート勤務)、長女(19歳・私立大学1年生)、長男(16歳・高校2年生)、母(74歳・軽度認知症の兆候あり)の5人暮らし。
物件・ローンの情報
2007年に新築で購入した木造2階建て一戸建て(築18年)。
購入価格3,280万円、住宅ローン残債約1,850万円。
月々の返済額は約9万2,000円。
現在の推定市場価値は1,400万円〜1,500万円程度で、約350万円〜450万円のオーバーローン状態。
ご相談の内容
健一さんは29歳のとき、結婚を機に春日部市内に一戸建てを購入しました。当時は製造業の工場で正社員として働いており、ローン返済に大きな問題はありませんでした。しかし35歳のとき、工場の事業縮小でリストラ対象となり退職。「手に職をつけたい」という思いから介護業界に転職し、働きながら介護福祉士の資格を取得しました。夜勤もこなすことで収入を回復させ、家計を支えてきました。
状況が変わり始めたのは2020年頃からです。父が脳梗塞で倒れて半年後に他界し、一人になった母を呼び寄せて同居を始めました。翌年には長女が私立大学に進学し、入学金や教材費で貯金の大半を使い果たしました。さらに2022年、健一さん自身が椎間板ヘルニアと診断され、夜勤の回数を月8回から4回に減らさざるを得なくなりました。年収は380万円程度まで下がり、毎月の収支は赤字に転落しました。
赤字分はクレジットカードのリボ払いで補填するようになり、気づけばリボ残高は80万円を超えていました。2024年5月、長女の奨学金の継続手続きをきっかけに、妻に家計の実態を打ち明けることになりました。リボ払いの残高を知った妻は言葉を失い、その夜は2人とも一言も口をきけませんでした。7月には住宅ローンの支払いが1ヶ月遅れ、銀行から届いた督促のハガキを見て、健一さんは手が震えました。9月には2回目の滞納となり、銀行から「3ヶ月滞納すると一括返済を求めることになる」と告げられました。
布団に入っても目が冴える夜が続きました。「来月のローンは払えるのか」「子どもたちの学校は続けさせてやれるのか」「母をどうすればいいのか」と考えが止まらず、明け方にようやくうとうとして、気づくと出勤時間になっている。そんな日が週に何度もありました。食欲もなくなり、昼食を抜くことが増えました。
ある夜、妻から「このままだとどうなるの」と聞かれ、「分からない。でも、このままじゃまずい」と正直に答えました。妻は少し泣いて、「私ももっと働く。でも、何か方法を探そう」と言ってくれました。それが相談を決意するきっかけになりました。「任意売却」という言葉は、職場の休憩室で同僚が親戚の話をしているのを聞いて初めて知りました。相談窓口に電話をかける前、スマートフォンの画面を5分くらい見つめていました。「本当に電話していいのか」「怒られないか」という不安がありましたが、「このまま何もしなければ、もっと悪くなる」という気持ちが勝ち、電話をかけました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
最初の面談で、健一さんは「できれば長男が高校を卒業するまで、あと1年半だけでも今の家に住み続けたい」という希望を話してくれました。しかし現実の収支状況を整理すると、リボ払いの返済も含めた月々の支出は収入を大きく上回っており、このまま住み続けることは困難でした。まずはこの現実を丁寧に説明し、任意売却によって生活を立て直す道を提案しました。
次に、債権者である銀行との交渉を開始しました。滞納が2ヶ月の段階で相談に来られたことが幸いし、競売に移行する前に任意売却の了承を得ることができました。売却活動では、駅からのアクセスや周辺の生活環境の良さをアピールし、子育て世代をターゲットに販売を進めました。約3ヶ月の販売活動の結果、1,480万円で買い手が見つかりました。
残債約370万円については、銀行と交渉の上、月々1万5,000円の分割返済で合意を得ました。健一さんの収入や生活状況を丁寧に説明し、無理のない返済計画を認めてもらうことができました。また、売却代金の中から引っ越し費用として30万円を確保できるよう交渉しました。
新居は春日部市内の3DKの賃貸アパートを紹介しました。母の通院先である病院にも近く、環境の変化を最小限に抑えることができました。家賃は月6万8,000円で、住宅ローンの返済額より約2万4,000円下がりました。リボ払いの残債80万円についても、弁護士と連携して任意整理を行い、利息をカットした上で月々の返済額を抑える手続きを進めました。
相談者の声

正直に言うと、相談する前は「任意売却をしたら、すぐに家を追い出される」「残債が何百万も残ったら自己破産しかない」と思い込んでいました。インターネットでいろいろ調べましたが、情報が多すぎて何が正しいのか分からなくなっていました。
電話で初めて話したとき、責められるんじゃないかと緊張していました。でも、担当の方は淡々と、でも丁寧に話を聞いてくれました。「まだ間に合いますよ」という言葉を聞いたとき、少しだけ肩の力が抜けたのを覚えています。
子どもたちには引っ越しの1ヶ月前に話しました。長男は最初、「なんで」と怒ったような顔をしていましたが、妻が「お父さんは家族のために頑張ってきたんだよ」と説明してくれて、最後には「分かった」と言ってくれました。長女は「私も奨学金を増やすから」と言ってくれましたが、それは断りました。子どもに負担をかけるのは本意ではありません。
母は新しいアパートに移ってから、最初の1週間くらいは少し落ち着かない様子でしたが、病院が近くなったこともあって、今は以前より通院がしやすくなりました。「前より広くないけど、みんないるから安心だ」と言ってくれたとき、少しホッとしました。
今は月々の支出が減り、毎月赤字になることはなくなりました。まだ残債の返済は続いていますが、「返せる」という見通しが立っているのは大きいです。相談するまで、毎晩天井を見つめて眠れない日が続いていましたが、今はちゃんと眠れています。あのとき、勇気を出して電話してよかったと思っています。
担当者のコメント

黒沢さんは、ご相談に来られたとき、言葉を選びながら慎重にお話しされる方でした。12年間、介護の現場で働き続けてきた責任感の強さが伝わってきましたし、同時に「家族に迷惑をかけたくない」という思いを強く抱えていらっしゃいました。
今回の案件で工夫した点は、お母様の生活環境への配慮です。軽度とはいえ認知症の兆候があるとのことでしたので、新居選びでは、できるだけ今の生活圏から離れず、かかりつけの病院に通いやすい場所を優先しました。結果として、以前より通院しやすくなったとのことで、安心しました。
住宅ローンの滞納は、早い段階でご相談いただくほど選択肢が広がります。黒沢さんの場合、滞納が2ヶ月の時点でご相談いただけたことで、競売を回避し、残債の分割返済についても柔軟な条件を引き出すことができました。「相談するのは恥ずかしい」「まだ何とかなる」と思って先延ばしにされる方も多いのですが、状況は待ってくれません。困ったときは、早めにご連絡いただければと思います。
