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離婚後、一人で住宅ローンを抱えて3年。養育費も途絶え、マンションを手放す決断をするまで

相談者のプロフィール

【相談者の情報】
野口さおりさん(仮)、41歳、東京都足立区在住。
クリニックで医療事務として正社員勤務、年収は295万円。
3年前に離婚し、長女(12歳・中学1年生)、次女(8歳・小学3年生)の3人で暮らしている。
元夫から月4万円の養育費を受け取る取り決めがあったが、2ヶ月前から支払いが止まっている。

【物件・ローンの情報】
2015年に夫婦で購入した3LDKのマンション(足立区内・築14年)。
離婚時に単独名義に借り換え、現在の住宅ローン残債は約2,380万円。
月々のローン返済額は約88,000円、管理費・修繕積立金を含めると月合計約105,000円の負担となっている。

ご相談の内容

このマンションは、長女が小学校に上がる前に夫婦で選んで購入した物件でした。離婚が成立した2021年、さおりさんは「子どもたちの生活環境を変えたくない」という理由から、住宅ローンを自分一人の名義に借り換えてでも、この家に住み続けることを選びました。

離婚直後は養育費4万円と自分の給与を合わせて、なんとか生活を維持していました。しかし2年ほど前から養育費の振り込みが遅れがちになり、2ヶ月前から完全に止まりました。催促のメッセージを送っても「今月は厳しい」という返答が続いており、強制執行の手続きについては調べてはいるものの、まだ動けていませんでした。

家計は毎月3〜5万円の赤字で、貯金を切り崩している状態でした。貯金残高は約40万円まで減っており、このまま養育費が入らなければ半年以内に底をつく計算でした。

決定的だったのは、長女の中学入学にかかった費用(制服・体操着・部活道具など合計約8万円)を支払った翌月、マンションの管理費と修繕積立金の合計17,000円を支払えず、翌月に持ち越してしまったことでした。住宅ローン本体はまだ滞納していませんでしたが、「次はローンそのものが払えなくなる」という感覚が、初めてはっきりと出てきました。

長女はこの頃、「部活、お金かかるなら入らなくてもいい」と言いました。さおりさんは「大丈夫だよ」と答えましたが、12歳の子がそういう気遣いをしなければならない状況になっていることが、相談を決意させた一因でもありました。

ネットで「マンション 売却 ローン残債より高い」「アンダーローン 売却」などを調べ、自分の物件が売却額で残債を上回る可能性があることは把握していました。ただ「任意売却」という言葉は、残債が売却額を超えるケースの手法だと理解しており、自分には関係ないと思っていました。どこに相談すればよいのか、不動産会社に直接行けばよいのか、それとも別の窓口があるのか、整理できないまま時間が経っていました。

実家の母には「戻っておいで」と言われていましたが、子どもたちの学校のことを考えるとすぐには動けず、現在の家計状況は話していませんでした。「自分で決めた離婚だから、自分でなんとかしなければ」という意識が、周囲への相談を遠ざけていました。

ご提案内容・解決までの流れ

初回の相談では、まず住宅ローンの残債・物件の推定売却額・毎月の収支の三点を整理することから始めました。さおりさんのケースでは推定売却額が残債を上回るアンダーローンの状態であったため、任意売却ではなく通常の不動産売却で残債を完済できる見通しが立ちました。この点をまず明確にお伝えし、「売ることで借金が増えるわけではない」という事実を確認していただきました。

売却にかかる仲介手数料などの諸費用を差し引いても、手元に一定の資金が残る試算をお示ししたところ、さおりさんは「売ることを、損だとばかり思っていた」とおっしゃっていました。

次に、売却後の生活費の試算を行いました。足立区内で同じ学区の賃貸物件を探した場合、月々の家賃は65,000〜75,000円程度が相場であり、現在のローン・管理費合計105,000円と比べて月3〜4万円の負担が減る計算になります。この数字を見て、さおりさんは「売った後の方が毎月楽になる」という見通しを初めて持てたとおっしゃっていました。

養育費の不払い問題については、相談所の対応範囲を超えるため、法テラスへの相談を案内しました。家庭裁判所での取り決めがある場合、強制執行(給与の差し押さえ等)が可能であることをお伝えし、住宅の問題と養育費の問題を切り分けて対処する方針を確認しました。

売却活動では、長女が中学1年生であることを踏まえ、できるだけ年度内に新居へ移れるよう、スケジュールを調整しました。引き渡し時期については買主側とも交渉し、長女・次女ともに学校を転校せずに済む同じ学区内の賃貸物件への転居が実現しました。売却によって得た資金は、転居費用と当面の生活費の一部に充てることができました。

相談者の声

相談する前は、どこに連絡すればいいのかすらわかっていませんでした。不動産会社に行くべきなのか、銀行に相談すべきなのか、それとも別の専門家なのか、調べるほど混乱していました。

一番思い違いをしていたのは、「売ると損をする」という感覚です。ローンが残っている間に売るのは損だという思い込みがあって、自分には売却という選択肢はないのだと思っていました。でも実際には、売ったほうが毎月の支出が3万円以上減るという話を聞いて、頭の中が整理されました。

養育費の問題は別の窓口を紹介してもらいました。住宅のことと養育費のことが頭の中でひとまとめになっていて、どちらから手をつければいいかわからなくなっていたので、「分けて考えましょう」と言ってもらえたのは助かりました。

子どもたちの学校が変わらずに済んだことが、一番ほっとしました。長女は新しい部活にも入れました。あのとき「お金かかるなら入らなくていい」と言っていた子が、今は普通に部活の話をしています。それだけで、動いてよかったと思っています。

担当者のコメント

野口さんは、離婚後3年間、周囲に状況を話すことなく一人で抱えてこられた方でした。「自分で決めたことだから」という責任感の強さが、相談を遠ざけていたのだと思います。

今回のケースで重要だったのは、最初に「任意売却ではなく通常売却で対応できる」という事実をはっきりお伝えすることでした。さおりさんは「任意売却」「競売」といった言葉に対して漠然とした不安を持っていましたが、ご自身のケースではそのいずれにも該当しないことを確認していただくことで、話し合いが具体的に進み始めました。

住宅の問題は、養育費の不払いや生活費の不足といった別の問題と絡み合って、全体像が見えにくくなることがよくあります。一つひとつを分けて整理することが、解決への近道になります。住宅ローンの支払いが苦しくなってきたと感じた時点で、まず現状を整理するだけでも構いませんので、早めにご相談ください。