相談者のプロフィール
【相談者の情報】
古川誠一さん(仮)、48歳、埼玉県川口市在住。
建設会社に22年勤務する現場監督で、現在の年収は420万円(5年前は580万円)。
妻の由紀さん(46歳)はスーパーのパート勤務で月収約8万円。
長男(20歳・専門学校2年生)、長女(16歳・高校1年生)の4人家族。
【物件・ローンの情報】
2006年に購入した一戸建て(川口市内・築19年・4LDK)
住宅ローン残債は約2,150万円で、月々の返済額は約97,000円。
カードローンの残債も約120万円ある。
ご相談の内容
長男が生まれた年に購入したこの家は、家族で物件を見て回り、気に入って決めた場所でした。22年間、同じ会社で真面目に現場監督として働き続けてきた古川さんにとって、マイホームの購入は一つの区切りでもありました。
転機は2019年の部署異動でした。会社の部門縮小に伴い、現場管理から内勤事務に移されたことで年収が一気に約160万円落ちました。「一時的なものだろう」と思っていたものの、異動は3年以上続き、その間に長男の専門学校進学が重なりました。入学費用と引越し費用を合わせて50万円ほどカードローンで補填したのが、家計が崩れ始めたきっかけでした。
2022年に現場復帰を果たしましたが、40代後半では以前ほどの残業はこなせず、年収は回復しきれませんでした。住宅ローン・カードローン・長男への月3万円の仕送り・長女の高校の費用が毎月重なり、家計は常にギリギリの状態が続きました。
決定的だったのは3ヶ月ほど前のことです。住宅ローンの引き落とし日に口座残高が4万円しかなく、返済ができませんでした。給与日まで数日待って何とか振り込みましたが、「来月はもっと無理かもしれない」という感覚が拭えませんでした。その翌週、職場の同僚が自己破産したという話を聞き、他人事とは思えなくなりました。
妻の由紀さんには「ちょっとキツい」とは伝えていましたが、口座残高の実態やカードローンの残高は話せていませんでした。義母の介護もある妻にこれ以上負担をかけたくない、という思いからでした。夜中に目が覚め、スマートフォンで「住宅ローン 払えない」「任意売却 デメリット」「競売 流れ」と検索する日が続きました。妻には「トイレ」と言って布団を出ていました。
長女に「お父さん最近元気ないね」と言われたとき、うまく返事ができませんでした。
任意売却についてはネットで調べていましたが、「競売と同じように近所に知られるのでは」「相談するだけで銀行に通報されるのでは」「業者は怪しいところが多い」といった不安が先立ち、なかなか動けませんでした。「まだ正式に滞納はしていないから、相談するのは早すぎるかもしれない」という迷いも、3ヶ月間の先延ばしにつながっていました。
ご提案内容・解決までの流れ
初回のご相談では、まず家計全体の状況を整理することから始めました。住宅ローンだけでなくカードローンの残債も含めた収支の実態を把握した上で、任意売却の仕組みと競売との違いを丁寧にご説明しました。
古川さんが抱えていた「相談するだけで銀行に知られる」という不安については、相談所への問い合わせが金融機関に通知されることはないことをお伝えし、まず安心していただくことを優先しました。また、任意売却は自己破産とは異なる手続きであること、競売とは違い売却の事実が近隣に知られにくいことも説明しました。
物件の査定を進めたところ、売却可能額は1,750万円前後と見込まれ、住宅ローン残債2,150万円との差額として約400万円の残債が残る見通しとなりました。この点についても事前に正直にお伝えし、残債の分割返済については債権者と交渉する方針を取りました。残債は一括返済を求められることなく、生活状況に応じた無理のない返済計画として合意を得ることができました。
売却活動中は、長女さんの高校生活への影響を最小限にすることを意識し、内覧の日時調整や売却活動の進め方に配慮しました。長女さんの高校卒業まで現在の家にいたいというご要望もありましたが、家計の状況を踏まえると居住継続が難しいと判断し、引き渡し時期については買主側とも交渉しながら、長女さんの学校生活への影響が出にくいタイミングを確保しました。
転居先については、同じ学区内で探すことを優先し、月々の家賃負担が住宅ローンより抑えられる賃貸物件を紹介しました。由紀さんも含めたご夫婦での面談を経て、家族全員で状況を共有した上で手続きを進めることができました。
相談者の声

正直に言うと、相談する前の3ヶ月間が一番しんどかったです。毎晩スマートフォンで調べながら、どの情報が正しいのかもわからないまま不安だけが積み重なっていました。「まだ滞納していないから早い」と自分に言い聞かせていたのは、単純に現実を先延ばしにしたかっただけだと、今は思います。
任意売却は競売と同じようなものだと思っていたので、相談したら近所に知られてしまうのではないかと心配していました。実際は全然違うと教えてもらって、そこで少し気持ちが楽になりました。
妻への説明が一番怖かったです。カードローンの残高も含めて全部話したとき、責めるような言葉は一言もなくて、「早く相談してくれてよかった」と言われたのは今でも覚えています。自分一人で抱えていた時間が、家族にとっても私にとっても一番無駄だったと感じています。
家は手放しましたが、長女の学校は変わらずに済みましたし、月々の支出も以前より落ち着いています。「自分の家をまた持てるかどうか」はまだわかりませんが、毎晩眠れるようになっただけで、今は十分です。
担当者のコメント

古川さんは、22年間真面目に働き続けてきた方で、家族に対しての責任感がとても強い方でした。だからこそ、現状を一人で抱え込んでしまい、相談までに時間がかかったのだと思います。
印象的だったのは、奥様への説明を一緒に行った場面です。それまで詳細を伝えられていなかったご夫婦が、同じ情報を共有した上で「どうするか」を話し合えるようになったことで、手続き全体がスムーズに動き始めました。任意売却の手続きは、ご本人だけでなく、ご家族全員が状況を理解していることが、解決への大きな力になります。
今回のケースで特に注意したのは、売却後の残債についてです。売却すれば終わりではなく、残った債務をどう処理するかまで含めてご説明し、債権者との交渉にも同席しました。住宅ローンの返済が苦しくなってきたと感じた時点で、正式な滞納になる前でもご相談いただけます。早い段階であればあるほど、取れる選択肢は広がります。
