母の認知症進行で実家が空き家に。維持費の負担と罪悪感の板挟みで眠れない日々が続いた。

  • 空き家

相談者様のプロフィール

田中美香さん(仮)、48歳、埼玉県川越市在住。
地元総合病院で看護師として22年勤務、年収480万円。夫・雄一さん(50歳・製造業技術職)、長女・麻衣さん(22歳・大学4年生)、次女・愛さん(19歳・短大生)の4人家族。
実家は千葉県松戸市の築45年戸建て。父親は3年前に他界、母親は昨年春から特別養護老人ホームに入所中。

ご相談の内容

美香さんの悩みは、母親の入所により空き家となった実家の処分についてでした。当初は「母がいつか帰ってくるかもしれない」という思いから、月1回の掃除や換気のために通い続けていました。しかし、母親の認知症は想像以上に進行が早く、施設のケアマネージャーからも在宅復帰は現実的ではないと告げられました。

転機となったのは今年の梅雨時期。久しぶりに実家を訪れると、1階の畳にカビが発生し、雨漏りの跡も発見しました。近所の方からは「庭の草が伸び放題で虫が出る」との苦情も寄せられ、管理の限界を感じました。年間18万円の固定資産税納付書を見たとき、夫との間で初めて深刻な話し合いが始まりました。

美香さんは毎晩、実家のことを考えて眠れない日々が続きました。「母の思い出が詰まった家を手放すのは親不孝ではないか」という罪悪感と、維持費や管理の負担への現実的な不安が交錯していました。夫は「早めに売却を検討した方がいい」と現実的でしたが、美香さんは「母が生きているのに勝手に決めていいのか」と複雑な気持ちを抱えていました。

インターネットで「特定空家」「固定資産税6倍」といった情報を目にして不安が増大し、不動産会社数社の査定でも金額にばらつきがあり、適正価格が分からず疑心暗鬼になっていました。

相談所からのご提案・解決までの流れ

まず、美香さんのお気持ちと家族の状況を丁寧にお聞きしました。空き家問題は法的・税務的な側面だけでなく、家族の感情面も大切であることをお伝えしました。母親の意思確認が困難な状況での財産管理について、成年後見制度の活用も含めて選択肢をご提示しました。

実家の現地調査を行い、建物の劣化状況や修繕の必要性を詳細に把握しました。その上で、売却、賃貸、解体など複数の選択肢についてメリット・デメリットを整理し、美香さんご家族の経済状況に最適なプランを検討しました。

不動産査定については、信頼できる複数の業者から適正な評価を取得し、現在の市場価格を正確に把握しました。また、売却時期や方法についても、税制優遇措置の活用を含めて最も有利な条件を検討しました。

母親が入所している施設とも連携し、家族の負担軽減と母親の安心できる環境作りの両立を図りました。最終的に、適正価格での売却が実現し、売却代金の一部を母親の施設費用に充てることで、長期的な安心を得ることができました。

相談者の声

最初は母に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。ネットで調べるほど不安な情報ばかり目に入り、どうしていいか分からず毎晩悩んでいました。相談所の方が母の気持ちも大切にしながら、現実的な解決策を一緒に考えてくれたのが心強かったです。成年後見制度についても詳しく教えていただき、適切な手続きを踏んで進めることができました。売却代金で母の施設費用の心配も減り、家族みんなが安心できるようになりました。もっと早く相談していれば、無駄に悩む時間を減らせたと思います。

担当者のコメント

美香さんは看護師として長年患者様に寄り添ってこられた方だけに、母親への思いやりがとても深く、ご自身を犠牲にしてでも母親のために何かしたいというお気持ちが強く伝わりました。空き家問題は単なる不動産処分ではなく、家族の歴史や感情が深く関わる問題です。法的手続きだけでなく、ご家族の心情に寄り添いながら最適解を見つけることを心がけました。高齢化社会において、このような相続・空き家問題は多くのご家族が直面する課題です。感情的になりがちな問題だからこそ、早めに専門家にご相談いただくことで、冷静で最適な判断ができると思います。

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