従業員8名の町工場、後継者不在で廃業を検討。事業承継の専門相談で従業員の雇用を守りながらM&Aによる事業継続を実現

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相談者様のプロフィール

田中健一さん(仮)、52歳、千葉県船橋市在住。
精密部品加工業を営む町工場の二代目社長で、年収は約650万円。妻(49歳・パート勤務)、長男(24歳・IT企業勤務)、長女(21歳・大学4年生)、父(78歳・入院中)の5人家族。
家業に入って28年、社長就任から15年。従業員8名、年商約4,500万円の小規模事業を経営している。

ご相談の内容

健一さんは父の代から続く町工場を15年間経営してきましたが、ここ2年間で経営環境が急速に悪化しました。主要取引先の海外移転により受注量が3割減少し、同時期に古い加工機械の故障で200万円の修理費用が発生。さらに決定的だったのは、長男から将来の独立意向を聞かされ、事業承継の道が閉ざされたことでした。

妻からは体調を気遣う言葉をかけられるものの、従業員や取引先への責任を考えると廃業の決断ができずにいました。特に、ベテラン職人の佐藤さんから退職の申し出を受けた時は、他の従業員への影響も懸念され、夜中に目が覚めることが増えました。夕食中も無言になることが多くなり、工場の機械音が聞こえない静寂に寂しさを感じるようになりました。

インターネットで事業承継や廃業について調べましたが、M&A仲介会社のサイトを見ても「こんな小さな会社を買ってくれるところがあるのか」と半信半疑でした。税理士からは早期決断を促されていましたが、具体的な手順や従業員への対応については明確な回答が得られず、専門的な相談先を探していました。心の奥では「廃業以外の選択肢はないか」という希望を捨てきれずにいました。

相談所からのご提案・解決までの流れ

ご相談を受けた際、まず健一さんの事業内容と財務状況を詳細に分析しました。精密加工技術と長年の取引先との信頼関係は十分な価値があることをお伝えし、廃業以外の選択肢として小規模M&Aの可能性を提案しました。

事業評価では、工場設備と土地建物の資産価値、従業員の技術力、取引先との関係性を総合的に査定し、適正な企業価値を算出しました。同時に、同業他社や関連業界で事業拡大を検討している企業をリストアップし、マッチング活動を開始しました。

交渉過程では、健一さんの最も重要な条件である「従業員の雇用維持」を最優先に進めました。買い手企業との面談では、技術継承の重要性と職人たちの経験値をアピールし、雇用条件についても詳細に協議しました。最終的に、同じ県内で精密部品事業の拡大を目指していた中堅製造業が買い手となり、全従業員の雇用継続と健一さんの技術顧問としての残留が決定しました。

相談者の声

最初は小さな町工場にM&Aなんて現実的ではないと思っていました。父から受け継いだ会社を自分の代で終わらせることへの罪悪感と、従業員への責任で眠れない日が続いていましたが、相談所の方が事業の価値を客観的に評価してくださったことで希望が見えました。

買い手企業との面談では、うちの職人たちの技術力を高く評価していただき、むしろ事業拡大の戦力として期待されていることが分かりました。従業員全員が新しい環境で働き続けられることが決まった時は、本当にほっとしました。廃業しか選択肢がないと思い込んでいた自分の視野の狭さを反省しています。

担当者のコメント

健一さんは従業員思いの経営者で、最後まで雇用の維持を最優先に考えておられました。小規模事業のM&Aでは、財務面だけでなく、技術力や人材の価値を正しく評価することが重要です。今回のケースでは、長年培われた精密加工技術と職人の経験が買い手企業の事業展開にとって貴重な資産となりました。

後継者問題で悩まれている中小企業の経営者の方には、廃業を検討する前に事業承継の専門家にご相談いただくことをお勧めします。思わぬ解決策が見つかる可能性があります。

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