パワハラで引きこもりになった弟の住宅ローン滞納。家族を守るため姉が代理相談
相談者様のプロフィール
吉田美奈子さん(仮)、32歳、東京都板橋区在住。
看護師として8年勤務、年収480万円。独身で一人暮らし。弟の雄介さん(29歳)が引きこもり状態となり、代理で相談に来られました。
物件・ローンの情報(実際の所有者:弟の雄介さん)
2020年に2,800万円で購入した築12年の戸建て住宅(4LDK)。千葉県市川市。
雄介さん単独名義で35年ローン組み、現在4年目。残債約2,400万円、月々返済額約8万2千円。
両親(父65歳・母62歳)と同居中。
ご相談の内容
雄介さんは中堅IT企業でシステムエンジニアとして5年間勤務し、「両親に楽をさせてあげたい」という思いで実家近くに住宅を購入しました。しかし2023年秋から上司数人による執拗なパワーハラスメントが始まりました。「お前のコードは使い物にならない」「なんでこんな簡単なことができないんだ」といった人格否定的な発言が日常的に続き、他の同僚の前での罵倒や理不尽な残業強要が重なりました。
几帳面な雄介さんは「自分が悪いのかもしれない」と自分を責め続け、誰にも相談できずにいました。2024年2月、心身の限界に達しある朝突然会社に行けなくなり、3月末で退職。それ以降は自室に引きこもり、家族との会話を一切拒否。食事も部屋の前に置いてもらい、夜中にこっそり取るような生活が続いていました。
両親は「そっとしておけば元に戻る」と考えていましたが、5月になっても状況は変わらず、住宅ローンの支払いが困難に。看護師の美奈子さんは月2回の実家訪問で弟の異変を察知しており、ゴールデンウィーク中に父親から「雄介のローンの支払いが…」と相談されました。「このままでは家族全員が路頭に迷う」という危機感から、平日の休みを取って代理相談を決意されました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
まず雄介さんの心理状態を考慮し、段階的なアプローチを提案しました。突然の接触は症状を悪化させる可能性があるため、まずは家族を通じて「住宅の件で専門家が来ている」ことを伝え、本人の反応を見ることから始めました。
初回訪問では、雄介さんは部屋から出てきませんでしたが、ドア越しに「売却の話ではなく、まず状況を整理したい」と伝えました。2回目の訪問時、雄介さんが30分程度部屋から出てきて、簡単な挨拶を交わすことができました。この時、責めるような言葉は一切使わず、「大変だったですね」という共感の言葉から始めました。
3回目の訪問で雄介さんが状況説明に応じてくれるようになり、パワハラの実態や現在の気持ちを聞き取りました。その上で「住宅ローンの問題は解決できます。まずは安心してください」と伝え、任意売却による早期解決を提案。雄介さんも「家族に迷惑をかけたくない」という思いから同意されました。
物件査定の結果、立地条件が良好でローン残債をカバーできる価格での売却が可能と判明。販売活動中も雄介さんの心理状態に配慮し、内覧時は別室で待機していただくなど、負担を最小限に抑えました。約1ヶ月半で購入希望者が決まり、売却代金でローンを完済。引越費用と当面の生活費も確保できました。
相談者の声

弟が引きこもってから半年近く、家族で話し合っても解決策が見つからず、本当に困り果てていました。看護師として精神的なケアの知識はあっても、身内のこととなると冷静に判断できませんでした。住宅ローンの問題も初めてのことで、どこに相談すれば良いのかも分からない状態でした。
一番驚いたのは、家族が何を話しかけても部屋から出てこなかった弟が、相談員の方には心を開いてくれたことです。専門家だからこそ言える言葉や接し方があるのだと実感しました。弟も「この人になら話せる」と感じたのだと思います。
売却後は家賃6万円のアパートに家族で転居し、経済的な不安がなくなりました。弟も相談員の方に背中を押されて前職場への謝罪に行き、現在は別の会社で働いています。家族の絆も以前より深くなった気がします。一人で抱え込まず、早めに相談して本当に良かったです。
担当者のコメント

引きこもりの方への対応は非常にデリケートで、一歩間違えれば信頼関係を築くことができません。雄介さんの場合、パワハラによる心の傷が深く、他人との接触自体を拒絶されている状態でした。まずは「この人は自分を責めない」と感じてもらうことから始めました。
重要だったのは、住宅ローンの問題解決と心理的なケアを並行して進めることです。「家族に迷惑をかけている」という罪悪感が雄介さんを更に追い詰めていたため、「解決できる問題です」と明確に伝えることで、まず安心感を与えることができました。
美奈子さんの献身的なサポートも解決の大きな要因でした。代理相談という形でしたが、ご家族の状況を詳細に把握されており、弟さんへの深い愛情を感じました。困難な状況でも諦めず、専門家の力を借りることで、家族全員が新しいスタートを切ることができた事例です。
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