住宅ローンが払えないときに知っておきたい対処法と選択肢
2025.07.04

住宅ローンの支払いが困難になることは、誰にでも起こりうる問題です。収入の減少や家計の変化により、当初は無理なく返済できていたローンが重荷となるケースが増えています。
このような状況に直面したとき、適切な対処法を知っているかどうかで、その後の人生が大きく変わります。放置すれば競売という最悪の結果を招く可能性がある一方、早期に適切な行動を取れば、より良い解決策を見つけることができるでしょう。
住宅ローンが払えなくなる主な原因
住宅ローンの支払い困難は、様々な要因が複合的に作用して発生することが多く、その原因を正確に把握することが解決への第一歩となります。
収入の減少・失業
最も多い原因の一つが、収入の減少や失業による支払い能力の低下です。会社の業績悪化による給与カットやボーナス削減、リストラによる失業などが該当します。
特に近年では、経済情勢の変化により正社員でも収入が不安定になるケースが増加しています。また、転職による一時的な収入減少や、自営業者の場合は売上の急激な落ち込みなども深刻な影響を与えることがあります。
支出の増加・家計の変化
収入に変化がなくても、支出の増加により家計が圧迫されるケースも少なくありません。子どもの教育費や親の介護費用、医療費の増加などが代表的な例です。
住宅ローンを組んだ当初は想定していなかった出費が重なり、月々の返済が困難になることがあります。特に教育費については、私立学校への進学や塾費用など、予想以上に高額になることが多いのが現実です。
離婚や家族構成の変化
離婚により世帯収入が減少したり、単身での住宅ローン負担が重くなったりするケースも増えています。共働きで組んだペアローンの場合、離婚後の返済責任の所在が複雑になることもあります。
また、家族の死亡により収入の柱を失った場合や、逆に家族が増えて生活費が増加した場合なども、住宅ローンの支払いに影響を与える要因となります。
病気やケガによる就労困難
病気やケガにより働けなくなることで、収入が途絶えたり大幅に減少したりするケースです。特に自営業者や個人事業主の場合、働けない期間の収入保障が限られているため、深刻な問題となりがちです。
長期療養が必要な病気の場合、治療費の負担も加わり、家計への影響はより深刻になります。また、家族の介護が必要になり、仕事を辞めざるを得ない状況も同様の問題を引き起こします。
無理なローン設定
住宅購入時に収入に対して過大なローンを組んでしまった場合、当初から返済が困難になるリスクを抱えています。金利上昇や収入の微減でも支払いが困難になる可能性があります。
変動金利を選択した場合の金利上昇リスクや、ボーナス払いの割合が高すぎる設定なども、後々の支払い困難につながる要因となることがあります。
住宅ローンが払えなくなった場合の流れとリスク

住宅ローンの滞納が始まると、法的な手続きが段階的に進行し、最終的には住宅を失うリスクがあります。この流れを理解することで、適切なタイミングで対策を講じることができます。
滞納から督促・一括請求までの時系列
住宅ローンの滞納が始まると、(あくまで目安となりますが)以下のような流れで手続きが進行します。
滞納期間 | 金融機関の対応 | 借主への影響 |
---|---|---|
1~2ヶ月 | 電話・書面による督促 | 遅延損害金の発生 |
3~6ヶ月 | 催告書の送付 | 信用情報への記録開始 |
6ヶ月以上 | 期限の利益喪失・一括請求 | 代位弁済・競売申立て |
滞納初期の段階では、金融機関も借主との話し合いによる解決を望んでいることが多く、この時期の対応が非常に重要になります。しかし、6ヶ月を超える滞納になると、法的手続きが本格化し、選択肢が大幅に限られてしまいます。
信用情報への影響
住宅ローンの滞納は、個人信用情報機関に記録され、今後の借入れに大きな影響を与えます。一般的に3ヶ月以上の滞納で「異動情報」として記録され、この情報は完済後も一定期間残り続けます。
信用情報に傷がつくと、新たな住宅ローンやカードローン、クレジットカードの審査に通りにくくなります。また、携帯電話の分割払いや賃貸住宅の保証会社審査にも影響する可能性があります。
競売・任意売却・自己破産の違い
住宅ローンが払えなくなった場合の最終的な解決方法には、主に3つの選択肢があります。
競売は裁判所が主導する強制的な売却手続きで、市場価格の6~7割程度での売却となることが多く、借主にとって最も不利な選択肢です。
任意売却は借主と金融機関の合意のもとで行う売却で、市場価格に近い金額での売却が期待できます。
自己破産は借金を法的に整理する手続きですが、住宅は失うことになり、職業制限などのデメリットもあります。
払えなくなったときに取るべき具体的な行動
住宅ローンの支払いが困難になった場合、早期の対応が解決の鍵となります。適切な順序で行動することで、より良い解決策を見つけることができるでしょう。
まずは金融機関に相談する
支払いが困難になったら、まず借入先の金融機関に相談することが最も重要です。多くの金融機関では、借主の状況に応じた相談窓口を設けており、様々な解決策を提案してくれます。
相談の際は、現在の収入状況や家計の詳細、支払い困難になった理由を正直に伝えることが大切です。金融機関も不良債権を避けたいため、借主が誠実に対応すれば、建設的な解決策を一緒に考えてくれることが多いのです。
早期の相談であれば、より多くの選択肢から最適な解決方法を選ぶことができます。
返済条件の見直し(リスケジュール)
金融機関との相談により、返済条件の見直し(リスケジュール)が可能な場合があります。具体的には、返済期間の延長による月々の返済額減額や、一定期間の元金据え置きなどの方法があります。
ボーナス払いの見直しや、変動金利から固定金利への変更なども検討できる場合があります。ただし、返済期間の延長は総返済額の増加につながるため、将来の収入見通しを慎重に検討する必要があります。
リスケジュールが認められるかどうかは、借主の信用状況や返済実績、将来の返済能力などを総合的に判断して決定されます。
団体信用生命保険や民間保険の確認
住宅ローンには通常、団体信用生命保険(団信)が付帯されており、死亡や高度障害の場合にローン残債が保険で完済される仕組みになっています。
近年では、がんや三大疾病、八大疾病などをカバーする特約付きの団信も増えており、該当する場合は保険金でローンが完済される可能性があります。また、民間の所得補償保険や医療保険に加入している場合も、給付金を受け取れる可能性があります。
保険の適用条件は複雑な場合が多いため、保険会社や代理店に詳細を確認することが重要です。
生活費の見直し・家計改善
住宅ローンの支払いを継続するために、家計全体の見直しを行うことも重要な対策の一つです。固定費の削減から始めて、段階的に支出を抑制していきます。
通信費や保険料、サブスクリプションサービスなどの見直しにより、月々数万円の節約が可能な場合もあります。また、食費や光熱費の節約、不要な物の売却なども有効な手段です。
ただし、過度な節約はストレスや健康問題を引き起こす可能性があるため、持続可能な範囲での改善を心がけることが大切です。
専門家(司法書士・弁護士・FP等)への相談
複雑な状況や法的な問題が絡む場合は、専門家への相談も視野に入れておきましょう。司法書士や弁護士は債務整理や任意売却の手続きに詳しく、ファイナンシャルプランナーは家計改善や資金計画の立案をサポートしてくれます。
不動産会社の中には、任意売却を専門に扱う業者もあり、金融機関との交渉から売却手続きまでを一貫してサポートしてくれます。専門家に相談することで、個人では気づかない解決策が見つかることもあります。
相談料が発生する場合もありますが、早期の専門家への相談により、より良い結果を得られる可能性が高まります。
以下のコラムでは住宅ローンが払えなくなった場合の救済措置と相談先をまとめていますので、こちらも参考にしてください。
任意売却・リースバック・競売の特徴と選び方

住宅を手放すことになった場合、いくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自分の状況に最も適した方法を選択することが重要です。
任意売却の流れとメリット・デメリット
任意売却は、金融機関の合意を得て市場価格で住宅を売却する方法です。競売と比較して高値での売却が期待でき、売却後の残債務も少なくなる傾向があります。
メリットとして、市場価格での売却により残債務を圧縮できること、引越し時期を調整できること、近隣に事情を知られにくいことなどが挙げられます。
デメリットは、金融機関の同意が必要なこと、一定の手続き期間が必要なこと、信用情報への影響は避けられないことなどです。
任意売却の流れは、専門業者への相談、債権者との交渉、売却活動、決済・引渡しという順序で進行し、通常3~6ヶ月程度の期間を要します。
リースバックの仕組み
リースバックは、住宅を売却した後も賃貸として住み続けることができる仕組みです。住み慣れた家を離れたくない場合や、子どもの学校区を変えたくない場合などに有効な選択肢となります。
売却価格は市場価格よりも低くなることが多く、家賃も周辺相場より高めに設定される傾向があります。また、将来的に買い戻すことができる契約もありますが、買い戻し価格は売却価格より高くなるのが一般的です。
リースバック業者の選定は慎重に行う必要があり、契約条件や将来の家賃上昇リスクなどを十分に検討することが重要です。
競売のリスクと注意点
競売は裁判所が主導する強制的な売却手続きで、借主にとって最も不利な選択肢です。売却価格は市場価格の6~7割程度になることが多く、残債務が多く残る可能性があります。
競売の場合、立ち退き時期を選ぶことができず、強制執行により退去させられる可能性もあります。また、競売情報は公開されるため、近隣に事情が知られてしまうリスクもあります。
競売を避けるためには、滞納初期の段階で金融機関に相談し、任意売却などの代替手段を検討することが重要です。競売開始決定後でも任意売却は可能ですが、時間的制約が厳しくなります。
よくある質問と相談時のポイント
住宅ローンの支払い困難に関する相談では、事前の準備と適切な情報提供が解決への近道となります。よくある疑問と相談時のポイントを整理しておきましょう。
相談時に準備すべきこと
金融機関や専門家に相談する際は、以下の書類や情報を準備しておくとスムーズに進みます。
- 住宅ローンの契約書類一式
- 直近の返済予定表
- 収入証明書(給与明細、確定申告書など)
- 家計簿や支出の詳細
- 不動産の登記簿謄本
- 固定資産税評価証明書
現在の状況を正確に把握してもらうため、収入減少の理由や時期、今後の見通しなども整理しておくことが大切です。隠し事をせず、正直に状況を伝えることで、より適切なアドバイスを受けることができます。
家族への影響と対応
住宅ローンの問題は家族全体に影響を与えるため、家族間での情報共有と協力が不可欠です。特に配偶者が連帯保証人になっている場合は、法的な責任も共有することになります。
子どもがいる場合は、転校の可能性や生活環境の変化について事前に話し合っておくことが重要です。また、親族からの援助が可能かどうかも検討材料の一つとなります。
家族の理解と協力を得ることで、より現実的で持続可能な解決策を見つけることができる可能性が高まります。
生活再建のための支援策
住宅を失った後の生活再建には、様々な公的支援制度を活用することができます。住宅確保給付金や生活困窮者自立支援制度など、状況に応じて利用できる制度があります。
また、職業訓練や就職支援制度を活用して、収入の安定化を図ることも重要です。自治体の相談窓口では、総合的な生活支援に関する情報提供を受けることができます。
新たな住居の確保についても、公営住宅の申込みや民間賃貸住宅の家賃補助制度など、利用できる制度を事前に調べておくことが大切です。
まとめ:早めの行動が解決のカギ
住宅ローンの支払い困難は、誰にでも起こりうる問題ですが、早期の対応により解決の可能性は大きく高まります。滞納が始まってから6ヶ月以内の行動が、その後の選択肢を大きく左右することを理解しておくことが重要です。
まずは借入先の金融機関に相談し、返済条件の見直しや各種保険の活用を検討してください。それでも解決が困難な場合は、任意売却やリースバックなどの選択肢を専門家と相談しながら検討することが大切です。
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