任意売却と競売の違いとは?メリット・デメリットから費用、流れまで解説!

2025.07.14

  • 任意売却
任意売却と競売の違いとは?メリット・デメリットから費用、流れまで解説!

住宅ローンの返済が困難になり、「このままでは家を失ってしまう」という不安を抱えていませんか?毎月の支払いが重荷となり、将来への見通しが立たない状況は、精神的にも大きな負担となります。

「競売」と聞くと、詳しくはわからないけれど「無理やり家を追い出される」といった怖いイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。

このコラムでは、「競売」と競売を避けるための「任意売却」について、それぞれのメリット・デメリット、費用や手続きの流れなどををわかりやすくご紹介します。

まず結論:任意売却と競売の最大の違いは「あなたの意思」が反映されるかどうか

任意売却と競売の根本的な違いは、売却プロセスにおいてあなたの意思がどの程度反映されるかという点にあります。

売却の主導権について、任意売却では債権者の同意を得た上で、あなた自身が不動産会社と協力して売却活動を進められます。一方、競売は裁判所が主導する強制的な手続きで、所有者の意思は一切考慮されません。

売却価格の面では、任意売却が市場価格の7~9割程度で売却できるのに対し、競売では市場価格の5~7割程度と大幅に安くなってしまいます。この価格差は残債の額に直結するため、経済的な影響は非常に大きいといえるでしょう。

プライバシーの観点でも大きな差があります。任意売却は通常の不動産売買と同様に進められるため、近隣に事情を知られる心配がありません。

しかし競売では、競売にかけられている物件として、インターネット上で情報公開され、誰でも閲覧可能な状態になってしまいます。

一目でわかる!任意売却と競売の8つの違い比較表

以下の表で、任意売却と競売の主要な違いを確認してみましょう。

比較項目任意売却競売
売却価格市場価格の7~9割市場価格の5~7割
売却の主導権所有者が主導(債権者同意必要)裁判所が主導
プライバシー守られる物件情報が公開される
費用の負担売却代金から控除(持ち出し0円)遅延損害金等の負担あり
残債の返済方法分割返済の交渉可能一括返済が原則
解決までの期間3~6ヶ月程度6ヶ月~1年程度
引越しのタイミング相談・調整可能強制執行により決定
売却後の交渉残債返済等の交渉可能交渉の余地なし

この表からも分かるように、任意売却の方が所有者にとって有利な条件が多く揃っています。ただし、任意売却を選択するためには、債権者の同意や適切なタイミングでの行動が必要となります。

任意売却とは?市場価格に近い売却を目指す方法

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者(金融機関)の同意を得て、市場価格に近い金額で不動産を売却する方法です。「任意」という名前の通り、所有者の意思に基づいて進められる売却手続きといえます。

通常の不動産売買と同様に、不動産会社に仲介を依頼し、購入希望者を探して売却を進めます。ただし、売却代金でローン残債を完済できない場合でも、債権者が抵当権の抹消に同意してくれるという点が大きな特徴です。

売却後に残った債務については、債権者と返済方法について協議を行い、現実的な返済計画を立てることができます。このように、任意売却は債務者の生活再建を重視した解決方法として位置づけられています。

任意売却の3つのメリット

競売より高く売れる可能性が高いことが、任意売却の最大のメリットです。市場価格の7~9割程度での売却が期待でき、競売と比較して数百万円の差が生まれることも珍しくありません。この価格差により、残債を大幅に圧縮できる可能性があります。

プライバシーを守りながら売却できる点も重要な利点です。通常の不動産売買と同じ流れで進められるため、近隣住民や知人に住宅ローンの滞納を知られる心配がありません。売却理由についても、転勤や住み替えなど、一般的な理由として説明することが可能です。

引越しの時期や残債の返済計画を交渉できることで、生活の立て直しがスムーズに進められます。売却完了後の引越し時期について買主と相談したり、残債の返済について債権者と現実的な計画を立てたりすることができるため、精神的な負担も軽減されるでしょう。

任意売却の2つのデメリット

信用情報に事故情報が登録されることは避けられません(一般的にはこれがブラックリスト入り、などと呼ばれています)。
住宅ローンを滞納した時点で信用情報機関に事故情報が記録され、約5~7年間は新たな借入やクレジットカードの作成が困難になります。ただし、これは競売でも同様に発生する問題です。

債権者(金融機関)の同意が必須であることも制約となります。
債権者が任意売却に応じない場合や、売却価格に納得しない場合は、任意売却を進めることができません。また、複数の債権者がいる場合は、全ての債権者から同意を得る必要があり、調整に時間がかかることもあります。

競売(けいばい)とは?裁判所が強制的に売却する手続き

競売(けいばい)は、住宅ローンの滞納が続いた場合に、債権者が裁判所に申し立てを行い、裁判所が強制的に不動産を売却する法的手続きです。所有者の意思に関係なく進められるため、「強制競売」とも呼ばれます。

裁判所が選任した執行官が物件の調査を行い、評価額を決定した後、入札により最高価格を提示した人が落札者となります。落札代金は債権者への返済に充てられ、残債がある場合は引き続き返済義務が残ります。

競売手続きは法律に基づいて粛々と進められるため、所有者が途中で異議を申し立てても手続きを止めることは困難です。そのため、競売開始決定通知が届いた時点で、迅速な対応が求められます。

競売のメリット

競売には所有者にとってのメリットはほとんどありませんが、強いて挙げるとすれば手続きを自分で行う必要がないという点があります。

裁判所が主導して全ての手続きを進めるため、所有者は特別な準備や対応を求められません。不動産会社との打ち合わせや購入希望者との交渉なども一切不要で、手続き的な負担は軽減されます。

ただし、これは裏を返せば、売却プロセスに一切関与できないということでもあります。売却価格や引渡し時期について意見を述べることもできず、結果として経済的な損失が大きくなる可能性が高いといえるでしょう。

競売の3つのデメリット

市場価格より大幅に安い価格で売却されることが競売の最大のデメリットです。一般的に市場価格の5~7割程度での落札となるため、任意売却と比較して数百万円から場合によっては1000万円以上の差が生じることもあります。この価格差は残債の額に直結するため、経済的な負担が長期間続くことになります。

物件情報が公開され、プライバシーがない点も深刻な問題です。競売物件の情報はインターネット上で公開され、住所や間取り、写真なども誰でも閲覧できる状態になります。近隣住民や知人に住宅ローンの滞納が知られてしまう可能性が高く、精神的な苦痛を伴います。

強制的に立ち退きを命じられるため、引越しの準備期間も十分に確保できません。落札後は速やかに物件を明け渡す必要があり、引越し先の確保や荷物の整理が間に合わない場合は、強制執行により荷物が処分されてしまう可能性もあります。

手続きの流れと期間の違い

任意売却と競売では、手続きの流れと所要期間が大きく異なります。どちらも住宅ローンの滞納から始まりますが、その後の展開は選択する方法によって変わってきます。

任意売却の手続きの流れと期間の目安

任意売却の手続きは以下のような流れで進められ、全体で3~6ヶ月程度の期間を要します。

任意売却の進め方をまとめた図表

1. 督促状・催告書の受け取り(滞納開始から1~3ヶ月)
住宅ローンの滞納が始まると、金融機関から督促状や催告書が送付されます。この段階で任意売却の検討を始めることが重要です。

2. 期限の利益の喪失通知(滞納開始から3~6ヶ月)
分割返済の権利を失い、残債の一括返済を求められます。この通知が届いた時点で、任意売却の準備を本格化させる必要があります。

3. 専門業者への相談・査定(1~2週間)
任意売却を専門とする不動産会社に相談し、物件の査定を受けます。同時に債権者との交渉方針を決定します。

4. 債権者との交渉・同意取得(2~4週間)
売却価格や条件について債権者と交渉し、任意売却の同意を取得します。複数の債権者がいる場合は、全ての同意が必要です。

5. 売却活動・買主探し(1~3ヶ月)
通常の不動産売買と同様に、購入希望者を探します。内覧対応や価格交渉なども行います。

6. 売買契約・決済・引渡し(1ヶ月)
買主が決まれば売買契約を締結し、決済・引渡しを行います。同時に抵当権の抹消手続きも実施されます。

競売の手続きの流れと期間の目安

続いては競売の手続きの流れです。競売手続きは法律に基づいて進められ、全体で6ヶ月~1年程度の期間を要します。ただし、裁判所が処理する事件件数が多い時期などは、1年以上かかるケースもあります。

競売の流れをまとめた図表

1. 競売開始決定通知(期限の利益喪失から1~3ヶ月)
債権者が裁判所に競売の申し立てを行い、裁判所から競売開始決定通知が送付されます。

2. 現況調査・評価(通知から1~2ヶ月)
裁判所が選任した執行官と評価人が物件の調査を行い、売却基準価額を決定します。

3. 売却基準価額の決定・公告(調査から1~2ヶ月)
売却基準価額が決定され、競売物件として公告されます。この時点で物件情報が一般公開されます。

4. 入札期間(公告から1ヶ月)
約1週間の入札期間が設けられ、購入希望者が入札を行います。

5. 開札・落札者決定(入札終了から1週間)
最高価格を提示した入札者が落札者として決定されます。

6. 代金納付・所有権移転(落札から1ヶ月)
落札者が代金を納付し、所有権が移転されます。この時点で強制的に立ち退きを求められます。

任意売却と競売、費用の違いを解説

任意売却と競売では、発生する費用の種類や負担方法が大きく異なります。特に、費用の持ち出しが必要かどうかは、経済的に困窮している状況では重要な判断材料となります。

任意売却でかかる費用(持ち出しは原則0円)

任意売却では、売却に必要な費用は全て売却代金から控除されるため、原則として持ち出し費用は0円です。これは経済的に困窮している債務者にとって大きなメリットといえます。

仲介手数料は売却価格の3%+6万円(税別)が上限となり、売却代金から支払われます。例えば2000万円で売却した場合、一般的な仲介手数料は66万円(税別)となります。

登記費用として、抵当権抹消登記や所有権移転登記の費用が必要ですが、これらも売却代金から控除されます。司法書士への報酬を含めて10~20万円程度が一般的です。

その他の費用として、測量費用や建物の解体費用が必要な場合もありますが、これらについても債権者と交渉することで売却代金から控除してもらえる場合があります。

重要なのは、これらの費用について事前に債権者の同意を得ておくことです。任意売却の専門業者が債権者との交渉を代行してくれるため、費用面での心配は最小限に抑えられます。

競売でかかる費用

競売では、手続き費用の多くを所有者が負担する必要があり、経済的な負担が重くなります。

遅延損害金住宅ローンの滞納期間中、年率14%程度で加算され続けます。競売手続きが長期化するほど、この金額は膨らんでいきます。例えば、残債2000万円で1年間滞納した場合、約280万円の遅延損害金が発生します。

予納金として、債権者は競売手続きの費用を裁判所に前払いする必要がある場合があります。物件の規模にもよりますが、50~100万円程度の予納金が求められることもあります。
この予納金も最終的には債務者の債務として加算されることになります。

強制執行費用として、立ち退きに応じない場合は、荷物の搬出や処分費用を負担しなければなりません。これらの費用は数十万円から場合によっては100万円を超えることもあります。
当然、この費用も最終的には債務者の債務として加算されることになります。

さらに、競売では売却価格が安いため、残債が多く残る傾向があります。この残債についても引き続き返済義務があり、長期的な経済負担となります。

あなたはどっち?状況別に見る最適な選択

任意売却と競売のどちらを選ぶべきかは、あなたの現在の状況や優先したい条件によって決まります。以下の判断基準を参考に、最適な選択肢を見つけてください。

任意売却をおすすめするケース

少しでも高く売り、残債を減らしたいと考える方には任意売却が適しています。市場価格に近い金額での売却により、競売と比較して数百万円の差が生まれる可能性があります。この価格差は将来の返済負担に直結するため、経済的な再建を重視する場合は任意売却を選択すべきでしょう。

周囲に知られずに売却したいという方にも任意売却がおすすめです。通常の不動産売買と同様に進められるため、近隣住民や職場の同僚に住宅ローンの問題を知られる心配がありません。プライバシーを重視し、社会的な信用を維持したい場合は、任意売却が最適な選択となります。

引越しのタイミングを相談したい方にとっても、任意売却は有利です。売却完了後の引越し時期について買主と調整できるため、新居の確保や子供の転校時期に合わせた計画を立てることができます。生活の変化を最小限に抑えたい場合は、任意売却を検討してください。

競売に至ってしまうケース

ローン滞納を放置してしまった場合、選択肢が競売に限られてしまうことがあります。督促状や催告書を無視し続けると、債権者は競売手続きを開始します。競売開始決定通知が届いた後でも任意売却への変更は可能ですが、時間的な制約が厳しくなるため、早期の対応が必要です。

債権者との交渉が不調に終わった場合も、競売に至る可能性があります。任意売却には債権者の同意が必須ですが、売却価格や条件面で合意に達しない場合は、債権者が競売を選択することがあります。ただし、専門業者に依頼することで交渉成功の可能性を高めることができます。

重要なのは、競売に至る前に早めの相談を行うことです。選択肢が限られてしまう前に、専門家のアドバイスを受けることで、より良い解決策を見つけることができるでしょう。

売却後も安心するために知っておきたいこと

任意売却や競売が完了しても、多くの場合で住宅ローンの残債が残ります。売却後の生活再建を成功させるためには、残債の処理方法や利用できる支援制度について正しく理解しておくことが重要です。

残った住宅ローン(残債)はどうなる?

売却代金で住宅ローンを完済できない場合、残った債務は「残債」として返済義務が継続します。しかし、残債の返済方法については債権者と交渉することが可能です。

分割返済の交渉では、現在の収入状況に応じて月々の返済額を決定します。例えば、残債が500万円ある場合でも、月々1~3万円程度の返済に調整してもらえることがあります。債権者も一括返済が困難であることを理解しているため、現実的な返済計画に応じてくれる場合が多いのです。

返済条件の見直しとして、返済期間の延長や金利の減免を受けられる場合もあります。特に、任意売却を選択した場合は、債権者との関係が良好に保たれているため、柔軟な対応を期待できます。

債務整理の検討も選択肢の一つです。残債の額が大きく、通常の返済が困難な場合は、個人再生や自己破産などの法的手続きを検討することもできます。ただし、これらの手続きには専門的な知識が必要なため、弁護士や司法書士への相談が必要です。

任意売却と競売に関するよくある質問

Q1. 連帯保証人に迷惑はかかりますか?

A. 任意売却・競売のいずれの場合も、連帯保証人への影響は避けられません。住宅ローンを滞納した時点で、連帯保証人にも督促が行われ、残債についても連帯して返済義務を負います。

ただし、任意売却を選択することで売却価格を高くし、残債を圧縮できれば、連帯保証人の負担も軽減されます。また、残債の返済についても、主債務者と連帯保証人が協力して債権者と交渉することで、現実的な返済計画を立てることが可能です。

重要なのは、連帯保証人に対して早期に状況を説明し、協力を求めることです。隠し続けることで関係が悪化し、解決がより困難になる可能性があります。

Q2. 家族や近所に知られずに売却を進めることはできますか?

A. 任意売却であれば、家族や近所に知られずに売却を進めることは十分可能です。通常の不動産売買と同じ流れで進められるため、売却理由について詳しく説明する必要はありません。

転勤や住み替えなど、一般的な理由として説明することで、住宅ローンの問題を隠すことができます。また、内覧の際も事前に時間を調整することで、近隣住民に気づかれにくくすることも可能です。

一方、競売の場合は競売物件の情報がインターネット上で公開されるため、プライバシーを守ることは困難です。この点からも、任意売却を早期に検討することの重要性が分かります。

Q3. 任意売却の相談はいつのタイミングでするべきですか?

A. 任意売却の相談は、住宅ローンの返済が困難になった時点で、できるだけ早く行うことが重要です。理想的なタイミングは、督促状が届いた段階、遅くとも期限の利益の喪失通知が届く前です。

早期に相談することで、選択肢が多く残されており、より有利な条件での解決が期待できます。また、債権者との交渉においても、誠実な対応として評価され、協力を得やすくなります。

「まだ大丈夫」「何とかなるかもしれない」という楽観的な考えは禁物です。時間が経過するほど選択肢は狭まり、最終的に競売に至ってしまう可能性が高くなります。少しでも不安を感じたら、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ:住宅ローンの悩みは、一人で抱え込まず早めの相談が解決の鍵

任意売却と競売、両者の最大の違いはあなたの意思が反映されるかどうかという点にあり、経済的な面でもプライバシーの面でも、任意売却の方が有利な条件が揃っています。

任意売却では市場価格に近い金額での売却が期待でき、残債を大幅に圧縮できる可能性があります。また、周囲に知られることなく、引越しのタイミングも調整できるため、生活の立て直しがスムーズに進められるでしょう。一方、競売では売却価格が大幅に安くなり、プライバシーも守られず、強制的な立ち退きを求められるなど、デメリットが多く存在します。

住宅を失うことは確かに大きな人生の転機ですが、適切な対応により新しいスタートを切ることができる可能性が高まります。不安を感じる場合は、専門知識を持つ相談先に連絡してみましょう。

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