任意売却後の残債はどうなる?支払い義務や減額交渉、4つの対処法を徹底解説
2025.07.17

任意売却を検討している、または既に任意売却を行ったものの、残った借金への対処方法が分からずに悩んでいませんか?
「任意売却をしても住宅ローンが残ってしまった」「毎月の返済額を減らしたい」「この先どうしていけばいいか分からない」そんな不安を抱えている方は少なくありません。
任意売却後の残債は確かに支払い義務が残りますが、放置するのは絶対にNGです。しかし、適切な対処法を知れば、必ず解決策が見つかります。この記事では、任意売却後の残債について、支払い義務の詳細から具体的な4つの対処法まで分かりやすく解説します。
【最初に結論】任意売却で残る借金(残債)は放置NG!でも解決策は必ずあります

任意売却を行っても住宅ローンなどの借金が残ってしまう場合、その残債は「なくならない」というのが現実です。
ただし、残債が発生しても、金融機関との交渉によって月々の返済額を大幅に減額することが可能です。実際に多くの方が、月5千円から3万円程度の無理のない範囲で返済を続けています。
また、支払いが困難な場合には自己破産や個人再生といった法的手続きを利用することで、借金の減額や免除を受けることもできます。
なぜ?任意売却で住宅ローンなどの残債が発生する仕組み
任意売却後に残債が発生する理由を理解するために、まず任意売却の基本的な仕組みから見ていきましょう。
任意売却と競売の違いとは?
任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者(金融機関)の同意を得て不動産を売却する手続きです。競売と異なり、売主が主体的に売却活動を行えるため、より市場価格に近い金額で売却できる可能性が高くなります。
競売の場合、一般的に市場価格の7割程度でしか売却できませんが、任意売却であれば市場価格の8割から9割での売却が期待できます。この差は残債の金額に直接影響するため、任意売却を選択することで残債を大幅に圧縮できる可能性があります。
さらに、任意売却では売却時期や条件を ある程度コントロールできるため、より有利な条件での売却を目指すことができます。
あなたはどっち?アンダーローンとオーバーローン
残債が発生するかどうかは、不動産の売却価格とローン残高の関係によって決まります。
不動産の売却価格がローン残高を上回っている場合(アンダーローン)、売却代金でローンを完済でき、残債は発生しません。例えば、ローン残高が2000万円で不動産が2500万円で売却できれば、500万円の余剰金が生まれます。
一方、ローン残高が不動産の売却価格を上回っている場合(オーバーローン)、売却代金だけではローンを完済できず、残債が発生します。ローン残高が3000万円で不動産が2200万円でしか売却できなければ、800万円の残債が残ることになります。
任意売却で残債が発生する具体的なケース
残債が発生する典型的なケースを具体例で見てみましょう。
Aさんは5年前に3500万円の住宅ローンを組んでマンションを購入しました。しかし、転職による収入減少で返済が困難になり、任意売却を検討することになりました。
現在のローン残高は3100万円ですが、不動産会社の査定によると、マンションの売却予想価格は2400万円です。この場合、売却後に700万円の残債が発生することになります。
このように、購入時からの不動産価格の下落や、ローン元本の減少スピードが遅いことが重なると、オーバーローンの状態となり、任意売却後に残債が発生するケースが多く見られます。
任意売却後の残債、支払い義務と時効について

任意売却後の残債について、多くの方が抱く疑問や誤解について正確な情報をお伝えします。
残債の支払い義務はなくならない
任意売却を行っても、残債の支払い義務が自動的になくなることはありません。任意売却は不動産の売却手続きであり、債務免除ではないからです。
売却によって住宅ローンの一部が回収されても、残った部分については引き続き借主に返済義務があります。これは法的な義務であり、債権者(金融機関)は正当な権利として残債の返済を求めることができます。
ただし、残債が残ったからといって、必ずしも従来と同じ返済条件で支払い続ける必要はありません。多くの場合、債権者との交渉によって返済条件を変更することが可能です。
【重要】残債の返済は金融機関(債権者)との交渉で決まる
残債の返済方法や金額は、債権者が一方的に決めるものではありません。債務者の現在の収入状況や生活状況を考慮して、現実的な返済計画を話し合いで決めることが一般的です。
金融機関にとっても、債務者が返済不能になって自己破産されるより、少額でも継続的に返済してもらう方が回収額を最大化できます。そのため、多くの場合、月々5千円から3万円程度の範囲で、債務者の支払い能力に応じた返済額が設定されます。
交渉の際は、家計の収支状況を詳細に提示し、無理のない返済額を具体的に提案することが重要です。感情的になったり、一方的な要求をしたりするのではなく、建設的な話し合いを心がけましょう。
借金にも時効がある?残債の時効は現実的ではない理由
借金には時効が存在し、一定期間が経過すると返済義務がなくなる場合があります。個人が金融機関から借りた債務の時効期間は5年です。
しかし、時効を期待するのは現実的ではありません。時効が成立するには、債権者が5年間全く債権を行使しない(督促や請求をしない)ことが必要ですが、実際には定期的に督促状が送られてくるため、時効は中断されてしまいます。
また、債権者が裁判を起こした場合、時効は中断され、時効期間の進行がリセットされます。さらに、時効が成立しても、債務者が時効を主張する「時効の援用」という手続きを行わなければ、時効の効力は発生しません。
このように、時効による解決は極めて困難であり、その間に遅延損害金が膨らんで状況が悪化する可能性が高いため、積極的な解決策を検討することが重要です。
任意売却後の残債、どう対処する?状況別の4つの選択肢

残債への対処法は、あなたの収入状況や他の借金の有無によって最適な方法が異なります。ここでは4つの主要な選択肢を詳しく解説します。
①【基本】金融機関と交渉し分割で返済する
最も多くの方が選択する方法が、債権者との交渉による分割返済です。この方法は、ある程度の収入があり、長期的な返済が可能な方に適しています。
月々の返済額の相場は5千円から3万円程度で、債務者の収入状況に応じて決められます。例えば、月収25万円の方であれば月1万円程度、月収15万円の方であれば月5千円程度が一般的な設定額です。
交渉を成功させるポイントは、家計状況を正確に把握し、無理のない返済計画を提示することです。家計簿をつけて収支を明確にし、生活費を差し引いた上で返済可能な金額を算出しましょう。
また、返済意思があることを明確に示すことも重要です。過去の返済実績や現在の就労状況を説明し、継続的な返済が可能であることをアピールしましょう。
②【支払不能な場合】自己破産で支払い義務を免除してもらう
残債が高額で分割返済も困難な場合、自己破産による解決を検討することになります。自己破産は、支払い不能な状態にある債務者が、裁判所に申立てを行い、すべての借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。
メリット | デメリット |
---|---|
借金が全額免除される | 信用情報に5~10年間記録が残る |
督促や取り立てが停止する | 一定の財産が処分される |
精神的な負担が軽減される | 一定期間、新たな借入れが困難 |
生活の再建が可能になる | 職業制限がある(士業等) |
自己破産を検討すべき目安は、残債が年収の3倍以上ある場合や、他の借金も含めて総額が500万円を超える場合です。ただし、浪費やギャンブルが原因の借金は免責不許可事由に該当する可能性があるため、専門家に相談することが重要です。
③【他の借金もある場合】個人再生で借金を大幅に減額する
住宅ローン以外にも複数の借金がある場合、個人再生が有効な選択肢となります。個人再生は、借金総額を大幅に減額し、3年間で分割返済する手続きです。
個人再生の最大の特徴は、住宅ローン特則を利用することで、住宅を手放さずに借金を整理できる場合があることです。ただし、これは住宅ローンが残っている場合に限られ、任意売却後の残債には適用されません。
借金の減額幅は債務総額によって決まり、100万円から500万円の場合は100万円、500万円を超える場合は5分の1まで減額される可能性があります。例えば、600万円の借金があった場合、120万円まで減額され、これを3年間で分割返済することになります。
個人再生は自己破産と比べて財産の処分が不要で、職業制限もないため、生活への影響を最小限に抑えながら借金問題を解決できます。
④【話し合いで解決】特定調停を利用する
特定調停は、裁判所が仲介役となって債権者と債務者が返済条件について話し合う手続きです。調停委員が中立的な立場で話し合いを進めるため、当事者同士では解決が困難な場合でも、合意に達する可能性が高くなります。
特定調停の最大のメリットは、弁護士に依頼しなくても利用できるため、費用を大幅に抑えられることです。申立て費用は1件あたり500円と、手続き費用も非常に安価です。
調停では、債務者の収入状況や生活状況を詳しく聴取した上で、現実的な返済計画を作成します。利息制限法に基づく引き直し計算により、過払い金が発生している場合は債務が減額される可能性もあります。
ただし、調停はあくまで話し合いの場であり、債権者が合意しなければ成立しません。また、調停成立後に返済を怠ると、給与差押えなどの強制執行を受ける可能性があります。
【Q&A】任意売却の残債でよくある質問

Q. 連帯保証人にも請求はいきますか?
はい、主債務者(借主)が返済できなくなった場合、連帯保証人に請求がいきます。連帯保証人は主債務者と同等の返済義務を負っているため、残債についても支払い責任があります。
連帯保証人がいる場合、任意売却を検討する段階で必ず事前に相談することが重要です。突然請求が来て関係が悪化することを避けるため、現在の状況や今後の見通しを正直に説明し、理解を得るよう努めましょう。
連帯保証人も返済が困難な場合は、一緒に債務整理を検討することもあります。連帯保証人だけが破産し、主債務者は分割返済を続けるといった選択肢もあるため、それぞれの状況に応じた最適な解決策を専門家と相談することが大切です。
Q. 残債の交渉は自分でできますか?専門家に頼むべき?
残債の交渉は法的には自分で行うことも可能ですが、専門家に依頼することをお勧めします。
金融機関との交渉では、債権回収に関する法律知識や、適切な返済計画の作成スキルが必要です。また、交渉の際の書類作成や、相手方との話し合いでは、感情的にならずに冷静に対応することが重要ですが、当事者では難しい場合があります。
弁護士や司法書士、任意売却を専門とする不動産会社などの専門家に依頼することで、より有利な条件での交渉が期待できます。また、精神的な負担も大幅に軽減されるため、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
費用はかかりますが、交渉の結果として返済額が大幅に減額される場合、長期的には費用対効果が高い選択となることが多いです。
Q. 無理のない返済額は、どうやって決まるのですか?
無理のない返済額は、あなたの家計の収支状況を詳しく分析して決定されます。まず、月収から税金や社会保険料を差し引いた手取り収入を算出し、そこから生活に必要な支出を差し引いた残額が返済原資となります。
生活費には、食費、住居費、光熱費、通信費、教育費、医療費、交通費などの必要最低限の支出が含まれます。家計簿をつけて3か月程度の支出実績を把握することで、より正確な返済可能額を算出できます。
一般的には、手取り収入の10%以下に抑えることが望ましいとされています。例えば、手取り収入が20万円の場合、返済額は2万円以下が目安となります。
また、将来の収入変動や緊急時の支出に備えて、ある程度の余裕を持った返済計画を立てることが重要です。無理な返済計画は結果的に破綻する可能性が高いため、現実的な範囲で設定することが大切です。
まとめ:任意売却後の残債は一人で悩まず、まずは専門家へ相談を
任意売却後の残債問題は、確かに深刻な悩みですが、適切な対処法を知れば必ず解決できます。重要なのは、問題を放置せずに早期に行動を起こすことです。
残債の支払い義務は残りますが、金融機関との交渉により月々の返済額を大幅に減額することが可能です。また、返済が困難な場合は自己破産や個人再生といった法的手続きを利用することで、借金問題を根本的に解決できます。
どの方法があなたに最適かは、収入状況や他の借金の有無、家族構成など、様々な要因によって決まります。一人で判断するのは困難なため、弁護士や司法書士、任意売却を専門とする不動産会社などの専門家に相談することをお勧めします。
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