任意売却で連帯保証人に迷惑はかかる?影響を最小限にするにはどうすればよいか
2025.07.31

住宅ローンの返済が困難になり任意売却を考えたとき、多くの方が真っ先に心配するのが「連帯保証人に迷惑がかかるのではないか」という点です。
特に、親族や友人、離婚した元配偶者が連帯保証人になっている場合、その影響の大きさと対処法について不安を抱くのは当然のことでしょう。
本コラムでは、その不安を解消するために、任意売却が連帯保証人に与える影響、競売との違い、そして迷惑を最小限に抑えるための具体的な対処法を分かりやすく解説します。
【結論】任意売却は連帯保証人に影響が及ぶのは避けられない。しかし放置はもっと危険

任意売却を検討されている方の結論から申し上げると、任意売却は連帯保証人に影響を及ぼします。しかし、問題を放置してしまうと、より深刻な状況を招く可能性が高くなります。
重要なのは、「影響を完全に避ける」ことではなく、「影響を最小限に抑える」ことです。適切な対処を行うことで、連帯保証人の負担を軽減し、信頼関係を維持することは十分可能です。
任意売却で避けられない連帯保証人への影響とは?
任意売却をしても住宅ローンの残債(残りのローン)が残る場合、その返済義務は連帯保証人に及びます。これが最も大きな影響です。
例えば、3000万円の住宅ローンが残っている物件が2500万円で任意売却された場合、500万円の残債について連帯保証人が返済義務を負うことになります。債権者は主債務者と連帯保証人の両方、またはどちらか一方に対して返済を求めることができるのです。
なぜ「競売」よりも「任意売却」が推奨されるのか
任意売却は競売に比べて、市場価格に近い金額で売却できる可能性が高いです。高く売れれば残債が減り、結果的に連帯保証人の負担を軽くすることができます。
競売では市場価格の6~7割程度での売却となることが多いのに対し、任意売却では8~9割程度での売却が期待できます。この差額が、連帯保証人の負担軽減に直結するため、任意売却が推奨されるのです。
まずは知っておきたい「連帯保証人」の重い責任

連帯保証人の法的な立場を正確に理解することは、任意売却における影響を把握する上で不可欠です。多くの方が「保証人」と「連帯保証人」の違いを十分に理解していないため、実際の責任の重さを過小評価している場合があります。
「保証人」と「連帯保証人」の決定的な違い
連帯保証人には、通常の保証人にある「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がありません。つまり、債権者から請求があれば、主債務者より先に返済を求められても断れない、非常に重い責任を負っています。
催告の抗弁権とは「まず主債務者に請求してください」と言える権利で、検索の抗弁権とは「主債務者の財産を先に差し押さえてください」と言える権利です。連帯保証人はこれらの権利を持たないため、債権者の都合で真っ先に返済を迫られる可能性があります。
連帯保証人が負う3つの具体的な義務
連帯保証人が負う義務は主に3つあります。
残債の支払い義務では、主債務者と同等の返済義務を負います。例えば、住宅ローンの残債が1000万円あれば、連帯保証人も1000万円の返済義務を負うことになります。
一括返済の義務では、債権者から一括での返済を求められる可能性があります。分割での返済を希望しても、債権者が同意しなければ一括返済を求められます。
遅延損害金の支払い義務では、返済が遅れた場合のペナルティも支払う義務があります。通常、年利14.6%程度の遅延損害金が発生し、これも連帯保証人の負担となります。
任意売却で連帯保証人に起こりうること【具体例】

任意売却が連帯保証人に与える影響を具体的に理解することで、対策の必要性がより明確になります。「迷惑がかかる」という漠然とした不安ではなく、実際に何が起こりうるのかを知ることで、適切な準備と対応が可能になります。
以下に挙げる影響は、すべて実際に起こりうる事象であり、事前の対策によって軽減できるものばかりです。
影響1:残債の一括請求と給与・財産の差し押さえ
債権者は連帯保証人に対し、残ったローンの一括返済を請求できます。応じられない場合は、給与や預金、不動産といった財産を差し押さえられるリスクがあります。
具体例として、500万円の残債がある場合、連帯保証人の給与の4分の1(手取り額の4分の1)が継続的に差し押さえられる可能性があります。月収30万円の場合、約7.5万円が毎月差し押さえられることになり、生活に大きな影響を与えます。
影響2:信用情報への事故登録(いわゆるブラックリスト状態)
主債務者がローンを滞納した時点で、連帯保証人の信用情報にも影響が及ぶ可能性があります。任意売却後の残債を分割で支払う場合でも、その事実が登録されることがあります。
信用情報に事故登録されると、新たな借入れやクレジットカードの作成、住宅ローンの審査などが困難になります。この状態は通常5年間続くため、連帯保証人の将来的な資金調達に長期間影響を与えることになります。
影響3:精神的な負担と人間関係の悪化
金銭的な問題以上に、連帯保証人にお願いごとや報告をする精神的な負担は大きいものです。対応を誤ると、大切な人との信頼関係を損なう可能性があります。
特に親族間では、金銭問題が家族関係に深刻な亀裂を生むことがあります。また、友人関係においても、経済的な負担を強いることで、長年築いてきた信頼関係が一瞬で崩れてしまうケースも珍しくありません。
連帯保証人への迷惑を最小限に!今すぐやるべき3つの対処法

連帯保証人への影響を完全に避けることは困難ですが、適切な対処法を実行することで、その影響を大幅に軽減できます。
早期の実行が効果を左右するため、状況を認識した時点で速やかに取り組むことが重要です。
対処法1:【最重要】正直に状況を話し、誠実に対応する
何よりもまず、連帯保証人に現状を正直に話すことが不可欠です。隠し立てはせず、迷惑をかける可能性について謝罪し、今後の対応を一緒に相談する姿勢が信頼関係を維持する鍵です。
「なぜ話しづらいのか」という気持ちは理解できますが、後から発覚した場合の信頼失墜は取り返しがつきません。具体的には、現在の残債額、任意売却の計画、予想される残債額、そして連帯保証人への影響について、分かりやすく説明することが大切です。
対処法2:できるだけ早く専門家に相談し、任意売却を始める
返済の遅延が長引くほど、遅延損害金が増え、債権者の対応も厳しくなります。問題が発覚したらすぐに、任意売却に詳しい不動産会社や法律の専門家に相談し、最適な解決策を見つけましょう。
専門家に相談することで、債権者との交渉がスムーズに進み、より良い条件での任意売却が可能になります。また、連帯保証人への説明資料の作成や、今後の返済計画の策定においても、専門的なアドバイスを受けることができます。
対処法3:任意売却後の残債について返済計画を立てる
任意売却後、もし残債が残った場合、主債務者として「自分もこれだけは支払う」という意思と計画を示すことが重要です。その姿勢が、債権者との交渉や連帯保証人の理解を得る上で助けになります。
例えば、月3万円であっても継続的に支払う意思を示すことで、債権者は分割返済に応じやすくなります。また、連帯保証人に対しても「完全に丸投げではない」という誠意を示すことができ、関係維持に役立ちます。
任意売却と連帯保証人に関するよくある質問(Q&A)

任意売却と連帯保証人に関して、お客様から寄せられることの多い質問をまとめました。個別の状況によって対応が異なる場合もありますが、一般的な考え方や対処法について解説します。
Q1. 離婚した元配偶者が連帯保証人の場合はどうなりますか?
離婚しても連帯保証人の義務はなくなりません。連絡を取り、状況を説明して協力を得る必要があります。連絡が取れない場合でも、手続きを進める方法はありますので専門家にご相談ください。
感情的な問題が絡む場合が多いため、第三者である専門家を介在させることで、冷静な話し合いをスムーズに進められるケースもあります。また、調停や公正証書による取り決めがある場合は、それらの内容も考慮して対応する必要があります。
Q2. 連帯保証人から外してもらうことは可能ですか?
原則として、債権者(金融機関)の同意なく連帯保証人から外れることはできません。代わりに別の連帯保証人を立てるか、それに代わる担保を提供しない限り、極めて困難です。
ただし、住宅ローンの借り換えを行う際に、新しい金融機関で連帯保証人なしでの融資が可能な場合があります。この場合、実質的に連帯保証人から外れることができますが、借り換えには一定の条件があります。
Q3. 連帯保証人が自己破産した場合はどうなりますか?
連帯保証人が自己破産すると、保証義務は免責されます。その場合、返済義務はすべて主債務者に戻ってくることになります。
この場合、債権者は主債務者に対してより厳しい対応を取る可能性があります。任意売却の条件交渉も困難になることが予想されるため、連帯保証人の自己破産を検討する場合は、事前に専門家と十分な相談を行うことが重要です。
まとめ:一人で悩まず、まずは専門家と連帯保証人への相談を
任意売却における連帯保証人への影響は避けられませんが、適切な対処法を実行することで、その影響を最小限に抑えることは可能です。
最も重要なのは、問題を一人で抱え込まず、早期に専門家と連帯保証人の両方に相談することです。隠し立てや先延ばしは、状況を悪化させるだけでなく、大切な人との信頼関係も損なってしまいます。
住宅ローンの返済に不安を感じたら、一人で悩まず、今すぐ専門家にご相談ください。
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