任意売却と自己破産の違いとは?メリット・デメリットを徹底比較|あなたに合う選択肢がわかる
2025.08.28

住宅ローンの返済が厳しくなり、毎月の支払いに不安を感じている方は少なくありません。「このまま払い続けられるだろうか」「もし払えなくなったらどうなるのか」といった心配を抱えながら過ごされているのではないでしょうか。
そのような状況で検討することになるのが「任意売却」と「自己破産」という2つの選択肢です。
どちらも借金問題を解決する手段ですが、手続きの内容や影響は大きく異なります。
比較項目 | 任意売却 | 自己破産 |
---|---|---|
主な目的 | 住宅を市場価格で売却し残債を減らす | 全ての借金の支払い義務を免除 |
借金の扱い | 住宅ローンの残債は残る場合がある | 税金等を除き全て免除 |
財産への影響 | 住宅のみ手放す | 高価な財産は原則処分 |
周囲への影響 | 比較的知られにくい | 官報掲載により知られる可能性 |
手続き期間 | 3ヶ月~1年程度 | 半年~1年以上 |
任意売却とは?自己破産を回避できる可能性のある手続き

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際に、債権者(金融機関)の合意を得て住宅を売却する手続きです。競売とは異なり、市場で一般的な不動産売買として進めるため、より良い条件での売却が期待できます。
この手続きの最大の特徴は、自己破産を避けながら住宅ローン問題を解決できる可能性があることです。売却代金でローンを完済できない場合でも、残った債務については債権者と分割返済の交渉を行うことができます。つまり、住宅は失うものの、その他の財産は保持でき、生活再建への道筋を描きやすくなるのです。
任意売却のメリット|市場価格に近い売却や費用の持ち出しがないことも
任意売却の最大のメリットは、競売と比較して市場価格に近い金額で売却できることです。
競売では市場価格の6~7割程度になることが多いのに対し、任意売却では8~9割程度での売却が期待できます。この差額は数百万円に及ぶこともあり、残債の圧縮に大きく貢献します。
また、売却にかかる諸費用(仲介手数料、登記費用、測量費用など)は売却代金から支払われるため、手持ち資金がなくても手続きを進められます。さらに、債権者との交渉次第では、引っ越し費用として数十万円程度を売却代金から捻出できる場合もあります。
周囲に知られにくいという点も重要なメリットです。一般的な不動産売買として進めるため、近隣や知人に住宅ローンの滞納が原因であることを知られるリスクが低くなります。
任意売却のデメリット|信用情報への影響や売却できないリスクも
任意売却を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されます。
いわゆる「ブラックリスト」に載る状態となり、5~7年程度は新たな借入やクレジットカードの作成が困難になります。
この点は自己破産と同様の影響を受けることになります。
手続きを進めるためには、全ての債権者(住宅ローンを借りている金融機関や保証会社)の同意が必要です。一社でも反対すれば任意売却は成立せず、競売に移行してしまいます。特に複数の金融機関から借入がある場合は、調整が複雑になることがあります。
また、必ず売却できる保証はないという点も理解しておく必要があります。立地や建物の状況によっては買い手が見つからず、最終的に競売になってしまうケースもあります。
自己破産とは?全ての借金の支払い義務が免除される手続き

自己破産は、借金の返済が不可能になった場合に、裁判所に申し立てて借金の支払い義務を免除してもらう法的手続きです。正式には「破産手続開始決定」と「免責許可決定」という2つの決定を経て、借金がゼロになります。
この手続きは、債務者の経済的更生を図ることを目的としており、生活に必要最低限の財産は手元に残すことができます。
現金99万円以下、預貯金20万円以下、生活必需品などは「自由財産」として処分されません。つまり、全てを失うわけではなく、新しい人生をスタートするための基盤は確保されているのです。
ただし、税金や養育費、悪意による不法行為の損害賠償債務など、一部の債務は免責されないため注意が必要です。
自己破産のメリット|借金をゼロにして生活を再建できる
自己破産の最大のメリットは、住宅ローンをはじめとする全ての借金の支払い義務がなくなることです。
何百万円、何千万円もの借金であっても、免責許可が下りれば法的に返済する必要がなくなります。これにより、毎月の返済に追われることなく、収入を生活費や将来への貯蓄に回すことができるようになります。
手続き中は債権者からの取り立てが停止されるため、精神的な負担も大幅に軽減されます。弁護士に依頼した場合は、依頼した時点から債権者との連絡は弁護士が窓口となり、直接的なやり取りから解放されます。
また、免責許可決定後は新たな人生設計を立てることができます。収入に見合った生活を送りながら、将来に向けて着実に資産形成を進めることが可能になります。
自己破産のデメリット|財産の処分や資格制限など
自己破産を行うと、住宅や自動車など20万円を超える価値のある財産は原則として処分されます。特に住宅については、住宅ローンが残っていなくても処分の対象となるため、住む場所を新たに確保する必要があります。
また、官報(国が発行する新聞のようなもの)に氏名や住所が掲載されるため、第三者に破産の事実を知られる可能性があります。ただし、一般の人が官報を定期的にチェックすることは稀なため、実際に知られるリスクはそれほど高くありません。
手続き中は、弁護士や司法書士、宅地建物取引士、警備員、保険外交員などの特定の職業に就くことができません。この制限は免責許可決定まで続きますが、決定後は制限が解除されます。また、破産者になると、一定期間は新たな借入やクレジットカードの利用が制限されます。
【状況で比較】任意売却と自己破産、どちらを選ぶべき?判断基準を解説

あなたの現在の状況によって、最適な選択肢は変わってきます。
ここでは、具体的なケースごとにどちらの手続きが適しているかを見ていきましょう。
「任意売却」が向いている方のケース
任意売却は、住宅ローン以外の借金が比較的少なく、住宅を手放すことで借金問題の大部分を解決できる方に適しています。
具体的には、住宅ローンの残債が3000万円あるものの、他の借金は車のローン100万円程度という場合です。住宅を2500万円で売却できれば、残債は600万円程度となり、今後の収入で返済可能な範囲に収まる可能性があります。
また、連帯保証人がいる場合も任意売却を優先的に検討すべきです。自己破産すると連帯保証人に借金の請求が向かいますが、任意売却で残債を圧縮できれば、連帯保証人への影響を最小限に抑えることができます。
転職や昇進により将来的に収入増加が見込める方や、退職金で残債を一括返済できる見通しがある方にも任意売却は有効な選択肢となります。
「自己破産」を検討すべき方のケース
自己破産は、住宅ローン以外にも多額の借金を抱えており、任意売却だけでは根本的な解決にならない方に適しています。
例えば、住宅ローンの残債が2000万円、消費者金融やクレジットカードの借金が500万円、親族からの借金が300万円ある場合です。住宅を1500万円で売却できても、残債は1300万円となり、現在の収入では返済が困難な状況が続きます。
病気や怪我により働けなくなった方や、勤務先の倒産により収入が途絶えた方も自己破産を検討する必要があります。収入の回復見込みが立たない場合、任意売却で一時的に借金を減らしても、結局は支払いが困難になってしまいます。
年齢的に新たな就職や転職が困難で、今後の収入増加が期待できない方についても、自己破産による再出発が現実的な選択となることが多いでしょう。
任意売却と自己破産を同時に進めるケースとは?
実際には、最初から自己破産を選択するのではなく、任意売却を試みた後に自己破産を行うケースも少なくありません。これは任意売却により借金を可能な限り圧縮してから、残った部分について自己破産を行う戦略的な判断です。
例えば、住宅ローンの残債が3500万円ある物件を任意売却で2800万円で売却し、残債700万円について自己破産を申し立てるケースです。この場合、最初から自己破産するよりも債権者にとってもメリットがあり、手続きがスムーズに進む場合があります。
また、任意売却の交渉過程で債権者が合意しない場合や、物件が売れない場合の「保険」として自己破産を準備しておくことも戦略の一つです。このような複合的なアプローチは、専門家のアドバイスを受けながら進めることが重要になります。
手続きの流れと期間はどう違う?専門家への相談タイミング

任意売却と自己破産では、手続きの進め方や所要期間が大きく異なります。それぞれの流れを理解することで、現在の状況でどちらを選択すべきか、またいつから準備を始めるべきかの判断材料になります。
任意売却の手続きの流れと期間
任意売却の手続きは、専門家への相談から始まり、債権者との交渉、物件の査定、売却活動、契約・決済という流れで進みます。
最初の1~2ヶ月で債権者との基本的な合意を取り、物件の査定や売却価格の設定を行います。その後、3~6ヶ月程度の売却期間を設けて買い手を探します。買い手が見つかれば、契約から決済まで1~2ヶ月程度で完了します。
全体として3ヶ月から1年程度の期間を要しますが、物件の立地や価格設定、市場状況により大きく左右されます。都市部の人気エリアであれば3~4ヶ月で売却できることもありますが、地方や特殊な物件の場合は1年以上かかることもあります。
重要なのは、競売の申し立てが行われる前に手続きを開始することです。一般的に住宅ローンの滞納から競売申し立てまでは6ヶ月程度のため、滞納から3ヶ月以内には任意売却の検討を始める必要があります。
自己破産の手続きの流れと期間
自己破産は、弁護士への相談・依頼、必要書類の準備、裁判所への申し立て、破産手続開始決定、免責審尋、免責許可決定という流れで進みます。
弁護士に依頼してから申し立てまでに2~3ヶ月、申し立てから破産手続開始決定まで1~2ヶ月程度かかります。その後、財産がほとんどない場合は「同時廃止事件」として3~4ヶ月で免責許可決定となります。
一方、一定の財産がある場合は「管財事件」となり、破産管財人が選任されて財産の調査・処分が行われます。この場合は半年から1年以上の期間を要することになります。
手続き全体では、同時廃止事件で半年程度、管財事件で1年以上が目安となります。ただし、書類の準備状況や裁判所の混雑状況により期間は前後します。
任意売却と自己破産に関するよくある質問

Q1. 費用はどれくらいかかりますか?
任意売却の場合、仲介手数料(売却価格の3%+6万円)、司法書士費用、測量費用などで総額100~200万円程度かかりますが、これらは売却代金から支払われるため手持ち資金は不要です。
自己破産の場合、弁護士費用が30~50万円程度、裁判所への予納金が同時廃止事件で2~3万円、管財事件で20万円以上必要になります。法テラスの民事法律扶助制度を利用すれば、費用を分割で支払うことも可能です。
Q2. 家族や会社に知られてしまいますか?
任意売却は一般的な不動産売買として進めるため、住宅ローンの滞納が原因であることを周囲に知られるリスクは低いといえます。ただし、引っ越しは避けられないため、近隣の方には何らかの説明が必要になるでしょう。
自己破産では官報に掲載されますが、一般の人が定期的にチェックすることは稀です。会社については、給与の差し押さえなどがなければ知られる可能性は低いものの、一部の職業では資格制限があるため注意が必要です。
Q3. 信用情報(ブラックリスト)にはどう影響しますか?
任意売却、自己破産ともに信用情報機関に事故情報が登録されます。任意売却では「代位弁済」や「債務整理」として5年程度、自己破産では「破産」として5~10年程度記録が残ります。
この期間中は新たな借入やクレジットカードの作成、携帯電話の分割払いなどが困難になります。ただし、記録が消えれば通常通りの審査を受けることができるようになります。
Q4. いつ専門家に相談すれば良いですか?
住宅ローンの返済に不安を感じた時点で、できるだけ早く相談することをお勧めします。滞納が始まってからでも対応は可能ですが、選択肢が限られてしまいます。
特に住宅ローンを2~3ヶ月滞納すると期限の利益を喪失し、一括返済を求められます。この段階になると任意売却の準備期間が短くなってしまうため、返済が厳しいと感じた段階での早期相談が重要です。
まとめ:一人で悩まず、まずは専門家へ相談を
任意売却と自己破産は、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットを持つ借金解決手段です。任意売却は住宅を手放しながらも自己破産を避けられる可能性がある一方、自己破産は全ての借金をリセットして新たなスタートを切ることができます。
どちらを選択するかは、あなたの借金の総額、収入の状況、家族の状況、将来の見通しなど様々な要因を総合的に判断する必要があります。また、任意売却と自己破産を組み合わせるという選択肢もあり、専門的な知識と経験が求められる分野でもあります。
最も重要なことは、返済が困難だと感じた時点で一人で悩み続けるのではなく、できるだけ早く専門家に相談することです。弁護士や司法書士、任意売却の専門業者などは、あなたの状況に最も適した解決策を提案してくれます。早期の相談により、より多くの選択肢の中から最適な道を選ぶことができるでしょう。
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