相談者プロフィール
相談者の情報
堀内雅人さん(仮)、43歳、埼玉県越谷市在住。
食品卸売会社の営業課長として21年間勤務していたが、上司のパワハラが原因でうつ病を発症し、2024年11月から休職中。
現在の収入は傷病手当金の月額約18万円のみ。
妻の美咲さん(仮・41歳)はドラッグストアでパート勤務、月収約9万円。
長女の結菜さん(仮・14歳)は中学3年生で高校受験を控えており、長男の陸くん(仮・10歳)は小学4年生。
物件・ローンの情報
2015年に新築建売の一戸建て(木造2階建て・4LDK)を3,680万円で購入。
住宅ローンはフラット35(35年固定・金利1.54%)で、月々の返済額は約11万3,000円。
相談時点でのローン残債は約2,680万円。2025年4月から返済が滞り、相談時点で3ヶ月分を滞納している状態。
ご相談の内容
堀内さんがこの家を購入したのは33歳のとき、長女が4歳、長男が生まれたばかりの頃でした。家族4人がゆったり暮らせる家を、という思いで住宅展示場をいくつもまわり、妻の美咲さんと相談して決めた家でした。当時は営業職として安定した収入があり、返済計画にも無理はないはずでした。
状況が変わり始めたのは2023年の春です。営業部に新しい部長が着任し、堀内さんに対して会議での名指しの叱責、部下の前での人格否定、休日の業務連絡など、高圧的な言動が約1年半にわたって続きました。堀内さんは「管理職だから耐えなければ」と思い、家族にも詳しくは話しませんでした。しかし2024年の夏頃から、朝の出勤時に動悸がする、通勤電車の中で涙が出る、夜中の3時に目が覚めてそのまま朝を迎える、といった症状が現れ始めました。半年で体重が7キロ落ちました。
2024年10月、通勤途中の駅ホームで過呼吸を起こして救急搬送されたことをきっかけに心療内科を受診し、「中等度のうつ病」と診断されました。医師の指示で同年11月から休職に入りましたが、ここから経済的な問題が本格化します。傷病手当金は月額約18万円。妻のパート収入約9万円と合わせても月27万円で、住宅ローン11万3,000円を含む生活費を賄うと毎月3〜5万円の赤字です。約180万円あった貯蓄は半年でほぼ半減しました。
2025年4月、初めて住宅ローンの引き落としが残高不足で落ちませんでした。銀行から届いた通知を見たとき、堀内さんは台所に立ったまましばらく動けなかったと言います。翌月も返済できず、6月には3ヶ月の滞納に。銀行からの通知には「期限の利益の喪失」「保証会社への移管」といった文言が並ぶようになりました。
堀内さんは滞納の事実を1ヶ月間、妻に隠していました。しかし家計簿をつけている美咲さんは口座の動きから気づいており、ある晩「ローン、払えてないんでしょう」と切り出しました。堀内さんがしばらく黙ったあと「ごめん」とだけ言うと、美咲さんは「一緒に考えよう」と返しました。堀内さんはその言葉に救われた一方で、家族を守れていない自分への情けなさを強く感じたそうです。受験を控えた長女には経済状況を知らせておらず、堀内さんは「あの子の受験だけは絶対に影響させたくない」と繰り返していました。
スマートフォンで「住宅ローン 払えない」「競売とは」などと検索する日が続きましたが、うつ病の影響で集中力が落ちており、情報を整理することが難しい状態でした。「滞納したらすぐ競売にかけられる」「ローンが残っている家は売れない」という誤った思い込みもあり、「もう手遅れではないか」という焦りばかりが募っていました。最終的に、美咲さんが自分で任意売却について調べ、「競売になる前にできることがあるかもしれない。一度専門の相談機関に話を聞いてみよう」と提案したことが、相談のきっかけとなりました。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回の面談では、堀内さんご夫婦に現在の収支状況やローンの契約内容、今後の生活の希望を丁寧に伺いました。堀内さんはうつ病の治療中ということもあり、説明は一度にすべてを詰め込まず、複数回に分けてお伝えするよう配慮しました。
まず、堀内さんが心配されていた「すぐに競売になるのでは」という点については、現時点ではまだ保証会社への移管手続きが進み始めた段階であり、債権者との交渉次第で任意売却の時間を確保できる状況であることをご説明しました。また、「ローンが残っている家は売れない」という誤解についても、債権者の同意を得たうえで売却する任意売却の仕組みを丁寧にお伝えしたところ、ご夫婦の表情が少し和らいだのを覚えています。
ご提案したのは、自宅を任意売却したうえで、長女の結菜さんの学区内にある賃貸住宅へ住み替えるという方法です。結菜さんの高校受験への影響を最小限に抑えることは、堀内さんご夫婦の最も強い希望でした。売却活動では、駅からの距離はあるものの、周辺の住環境や学区の評判の良さを訴求し、ファミリー層をターゲットに進めました。
並行して、債権者である銀行および保証会社との交渉を進めました。堀内さんの休職事情や今後の治療・復職の見込みを説明し、任意売却への同意と、売却後に残る債務については無理のない月額での分割返済とする合意を取りつけました。また、売却代金の中から転居費用の一部を配分いただけるよう交渉し、認めていただくことができました。
最終的に、自宅は2,200万円で売却が成立しました。ローン残債2,680万円との差額である約480万円については、堀内さんの現在の収入状況を踏まえ、月額1万円からの分割返済で合意に至りました。堀内さんご一家は越谷市内の学区内にある3LDKの賃貸マンション(家賃約8万5,000円)に転居し、結菜さんは転校することなく受験勉強を続けられる環境が整いました。
相談者の声

正直なところ、最初に相談の電話をかけたのは妻で、私自身は「もうどうにもならない」と半ば諦めていました。うつの症状がひどい時期で、銀行からの通知を読んでも内容が頭に入らず、何をどうすればいいのか考えることすらできない状態でした。「滞納したら終わりだ」「競売にかけられて追い出される」と思い込んでいたので、任意売却という方法があること自体を知りませんでした。
相談所の方は、私の体調を気遣いながら、一つひとつ順番に説明してくださいました。銀行との交渉も、売却の手続きも、すべて間に入って進めてくださったので、あの当時の私でもなんとかついていくことができました。特にありがたかったのは、娘の学区のことを最優先に考えてくださったことです。娘には家の売却を伝えなければなりませんでしたが、「同じ学校に通い続けられるよ」と言えたことで、娘も落ち着いて受け入れてくれました。
今は家賃8万5,000円の賃貸マンションで暮らしています。住宅ローンの月11万3,000円に比べると月々の負担は軽くなり、毎月のやりくりが少し楽になりました。引っ越してから、あの銀行からの封筒が届かなくなったこと、それだけでも気持ちがずいぶん違います。うつの治療も続けていて、少しずつですが体調は回復に向かっています。家は小さくなりましたが、家族4人で暮らせていることが今はいちばん大事だと思っています。体調が戻ったら、もう一度働いて、子どもたちが成人するまではしっかり支えていきたいです。
担当者のコメント

堀内さんのように、職場環境の問題から体調を崩し、収入が途絶えて住宅ローンの返済が困難になるというケースは近年増えています。とくにうつ病を抱えている方の場合、情報を調べたり判断したりすること自体が大きな負担となるため、ご本人だけで解決策にたどり着くのは非常に難しい状況です。今回は奥様の美咲さんが早い段階で相談を決断してくださったことが、結果的に競売を回避する大きな要因になりました。
対応にあたっては、堀内さんの体調面への配慮を最優先としました。面談の回数や時間を無理のない範囲に調整し、重要な事項は書面にまとめてお渡しすることで、ご自宅で落ち着いて確認いただけるようにしました。また、お嬢様の高校受験が控えていたため、学区を変えずに済む転居先の確保は解決の重要な条件として、売却活動と並行して物件探しを進めました。
住宅ローンの滞納は、放置すればするほど選択肢が狭まっていきます。3ヶ月の滞納は決して早い段階とは言えませんが、堀内さんのケースでは保証会社への移管が完了する前にご相談いただけたことで、任意売却を進める時間的な余裕を確保できました。病気や失業で返済が難しくなったとき、「恥ずかしい」「まだ大丈夫」と思わず、早めにご相談いただければ、それだけ多くの選択肢をご提案できます。おひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご連絡ください。
