相談者様のプロフィール
相談者の情報
加藤裕介さん(仮)、42歳、東京都江東区豊洲在住。
IT企業の営業課長として18年勤務。会社の業績悪化により年収が680万円から450万円に減少。
妻の春菜さん(39歳)はパート勤務で年収120万円。
長女の美咲さん(13歳・中学1年生)と次女の花音さん(10歳・小学4年生)の4人家族。
物件・ローンの情報
2018年3月に購入した分譲マンション(3LDK、75平米)。
購入価格5,800万円に対し、住宅ローン残債は4,650万円。
月々の返済額は約16万円で、管理費・修繕積立金は月2.8万円。
変動金利の35年ローンを組んでいた。
クレジットカードの残債が2枚で合計80万円あり、リボ払いの利息だけで月2万円以上の負担となっていた。
ご相談の内容
裕介さんが当相談所を訪れたのは、3度目の住宅ローン延滞の直後でした。銀行から「このままでは法的措置を検討せざるを得ない」という通知が届き、もう後がないと感じたといいます。
コロナ禍以降、会社の業績は徐々に悪化していきました。2020年に年収が620万円に下がった時は「一時的なもの」と考えていましたが、2022年には基本給が削減され520万円に、そして2024年の部署再編で450万円まで下がりました。月々の手取りは約37万円ですが、住宅ローン16万円、管理費等2.8万円、クレジット返済5万円、長女の塾代5万円、生活費などを合わせると月々の支出は42万円を超えていました。
当初は妻に心配をかけまいと、クレジットカードで生活費を補填していました。しかし、リボ払いの残債は膨らむばかりで、気づいた時には80万円を超えていました。2024年3月、年収のさらなる減少が確定した夜、ついに妻に「実は貯金がほとんどない」と打ち明けました。妻は何も言わず、ただ涙を流しました。その姿を見て、自分が家族を守れていないことを痛感したといいます。
2024年6月に初めて住宅ローンを延滞し、10月には再び延滞。銀行から電話がかかってくるようになり、仕事中も携帯が鳴るたびに動悸がしたそうです。妻は「実家に戻ろうか」とつぶやき、次女からは「パパ、最近元気ないね」と言われました。夜は週に3〜4回、午前2時頃に目が覚め、残債4,650万円という数字が頭の中をグルグル回る日々が続きました。
深夜にスマホで「住宅ローン 払えない」と検索し、任意売却という選択肢を初めて知りました。競売になれば周囲に知られてしまう、自己破産すれば子供の将来に影響するのではないかという恐怖がありました。同時に「もう少し頑張れば、なんとかなるんじゃないか」という希望的観測と、「娘たちに転校させるなんて、ひどい父親だ」という罪悪感の間で揺れ動いていました。ある夜、次女が「新しいお友達ができた。ずっとこの学校にいたいな」と笑顔で話した時、胸が締め付けられましたが、同時に「このままじゃ、もっと悪いことになる」とも思ったといいます。
通勤電車の中で任意売却の相談フォームを開き、指が震えながら送信ボタンを押しました。その瞬間、涙が溢れそうになったそうです。
相談所からのご提案・解決までの流れ
初回相談では、裕介さんご夫婦の現状を詳しくお聞きしました。最も心配されていたのは、娘さんたちの転校と、周囲に知られることでした。また、任意売却をすると二度とローンが組めなくなるのではないかという不安も抱えていらっしゃいました。
まず、現在の収支状況を整理し、今後も住宅ローンを返済し続けることは現実的に困難であることを確認しました。その上で、任意売却のメリットとデメリット、競売との違い、今後の生活再建プランについて丁寧にご説明しました。特に、任意売却であれば市場価格に近い金額で売却できること、プライバシーが守られること、引っ越し時期についてもある程度の融通が利くことをお伝えしました。
次に、債権者である銀行との交渉を開始しました。現在の収入状況、家計の詳細、そして裕介さんご家族が前向きに生活再建に取り組む意思があることを丁寧に説明し、任意売却への同意を得ました。銀行側も、競売よりも任意売却の方が回収額が高くなることを理解し、協力的な姿勢を示してくださいました。
売却活動では、豊洲という立地の良さ、駅からの距離、周辺環境の充実をアピールしました。湾岸エリアは購入時より相場が下がっていましたが、子育て世代のファミリー層を中心に内覧希望が入りました。約3ヶ月の売却活動の末、4,350万円で購入希望者が見つかりました。
並行して、新居探しもサポートしました。裕介さんご夫婦の最優先事項は、娘さんたちの学区を変えないことでした。江東区内で、長女の中学校と次女の小学校の学区内にある賃貸物件を探し、3LDKで家賃13万円の物件を見つけました。築年数は経っていますが、リフォーム済みで清潔感があり、何より通学路が変わらないことが決め手となりました。
売却によって住宅ローン残債4,650万円のうち4,350万円を返済できましたが、300万円の残債が残りました。この残債については、債権者と交渉し、月々2万円の分割返済で合意しました。クレジットカードの残債80万円については、債務整理の専門家をご紹介し、任意整理によって月々1.5万円の返済に圧縮することができました。
引っ越しのタイミングは、学期の切れ目である3月末に設定し、娘さんたちの学校生活への影響を最小限に抑えました。また、引っ越し費用については、売却時の交渉で買主様から30万円の協力を得ることができ、新生活のスタート資金として活用していただきました。
相談者の声

相談する前は、任意売却も競売も同じようなものだと思っていました。でも、実際には全く違いました。競売だったら近所の人に知られてしまうし、引っ越し時期も選べなかったと思います。任意売却だったからこそ、娘たちの学区を変えずに済み、引っ越しも学期の切れ目に合わせられました。
一番つらかったのは、妻に本当のことを言えなかった期間です。クレジットカードで補填しているうちに、どんどん状況が悪くなっていきました。もっと早く相談していれば、ここまで追い詰められることはなかったかもしれません。
担当の方は、私たち家族の話を否定せず、じっくり聞いてくださいました。特に、娘たちの学区を変えたくないという希望を最優先に動いてくださったことに感謝しています。新しい家は前より狭いですが、家族4人で暮らすには十分です。何より、月々の支払いが住宅ローン16万円から家賃13万円になり、残債の返済2万円とクレジットの返済1.5万円を合わせても、以前より3万円以上余裕ができました。
夜も眠れるようになり、娘たちの顔をまっすぐ見られるようになりました。次女が「パパ、最近笑ってるね」と言ってくれた時、本当に救われた気持ちになりました。妻とも、少しずつ前のように話せるようになってきています。
任意売却は家を失うことですが、家族を守るための決断だったと今は思えます。
担当者のコメント

裕介さんのケースは、コロナ禍以降の収入減少に悩む方々の典型例です。真面目で責任感が強い方ほど、家族に心配をかけまいと一人で抱え込んでしまい、気づいた時には選択肢が限られてしまうことがあります。
初回相談の際、裕介さんは「自分が情けない」「家族に申し訳ない」と繰り返しおっしゃっていました。しかし、収入の減少は裕介さん個人の責任ではなく、社会経済の変化によるものです。大切なのは、現状を受け止め、家族のために最善の選択をすることです。
今回のケースでは、お嬢様方の学区を変えないことを最優先に、江東区内での賃貸物件探しに注力しました。豊洲から少し離れたエリアになりましたが、通学路は変わらず、お嬢様方も友達と離れることなく学校生活を続けられています。また、引っ越し時期を学期末に設定したことで、心理的な負担も軽減できました。
残債300万円については、月々2万円の分割返済としましたが、これは裕介さんの収入と支出を精査した上で、無理なく返済できる金額です。クレジットカードの任意整理と合わせても月々3.5万円の返済で済み、以前の住宅ローン16万円と比べれば大幅に負担が減りました。
任意売却は単なる問題解決ではなく、生活再建の第一歩です。裕介さんご家族が、これから安心して暮らせることを心から願っています。同じような状況で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、早めにご相談いただくことをお勧めします。選択肢は必ずあります。
