相談者様のプロフィール
宮本 恵子さん(仮)、49歳、女性。埼玉県さいたま市緑区にお住まい。
医療事務のパートとして週2日勤務。年収は約160万円。勤務歴は6年ですが、介護が重なってから勤務日数を大幅に減らしました。
夫(52歳・建設会社の現場監督)、義父(80歳・認知症で同居)との3人暮らし。長男(22歳)はすでに独立しています。
2007年に購入した一戸建て(さいたま市緑区)にお住まいで、住宅ローン残債は約1,950万円、月々の返済額は約9万8,000円です。
ご相談の内容
宮本さんが任意売却相談所の門を叩いたのは、義父の認知症が進行してから3年が経ったころのことでした。
義父は3年前に軽度の認知症と診断されました。当初はデイサービスを週2回利用することで生活リズムを保つことができており、恵子さんも医療事務のパートを続けることができていました。しかし昨年から状況が変わりました。夜中に突然起き出して玄関から外へ出ようとする、浴室で転倒しかける、食事の時間を繰り返し忘れてしまう——そうした出来事が重なり、目が離せない時間帯が増えていきました。
「仕事に出ている間ずっと、義父のことが頭から離れなかった。デイサービスがない日は特にそうで、ヘルパーさんにお願いしてもなんとなく心配で」と恵子さんは言います。結局、週3日だったパートを週1〜2日に減らすことにしました。それによって月収がおよそ5万円減少しました。
夫は現場監督の仕事で帰宅が遅く、介護の大部分は恵子さんが担っています。夫に家計の状況を詳しく話したことは一度もありませんでした。「心配させたくなかった。それに、自分がなんとかするべきだと思っていた」と恵子さんは振り返ります。通帳の残高が毎月減っていくのを一人で確認しながら、「あと1年か2年は持つかもしれないけど、その先が見えない」という状態が続きました。
任意売却という言葉はスマートフォンの検索で知りました。ただ、「住宅ローンを払えない人向けの話で、うちはまだそこまでではない」という認識があり、なかなか相談に踏み切れませんでした。滞納が始まってからでないと動けないものだと思い込んでいたのです。また、「相談すること自体が恥ずかしい」という感覚もあり、問い合わせフォームを何度か開いては閉じる、という日々が数ヶ月続きました。
転機は夫との会話でした。ある夜、久しぶりに早く帰宅した夫が「なんか最近顔色が悪いけど大丈夫か」と聞いてきたとき、恵子さんは思わず「貯金がもう少ない」と打ち明けました。夫は「そうか、じゃあ一回ちゃんと相談してみよう」と即座に答えました。その言葉で、ようやく動く気持ちになったそうです。
相談所からのご提案・解決までの流れ
ご相談を受けた際、まず現状の家計収支と住宅ローンの残債、物件の市場価値を確認しました。住宅ローン残債は約1,950万円で、市場での査定額はおよそ2,100万円程度と見込まれました。売却によってローンを完済できる可能性がある状況であったため、通常の任意売却(残債を返済して手元に差額が残る形)よりも、まずは普通の不動産売却として進める選択肢もお伝えしました。
しかし、宮本さんご夫婦の最大の課題は義父の介護との両立であり、転居先の確保や引越しそのものが大きな負担になることが懸念されました。義父の状態を考えると、急激な環境の変化はリスクを伴います。そこで、売却後に賃貸として同じ自宅に住み続けられるリースバックの活用をご提案しました。
具体的には以下の流れで進めました。
まず、物件を投資家向けに売却し、売却代金でローンを完済しました。残債を上回る売却価格が実現したため、差額の一部を引越し資金や今後の介護費用として手元に残すことができました。売却後は同じ物件を賃貸契約に切り替え、月々の家賃は7万円台前半の設定となりました。住宅ローンの返済額(約9万8,000円)と比較して、月あたり約2万円以上の支出削減につながりました。
手続きの期間は約3ヶ月でした。義父のデイサービスの日程に合わせて打ち合わせ日程を設定し、夫が立ち会えない場合は恵子さんだけでも対応できるよう書類の説明を丁寧に行いました。金融機関との交渉は相談所が代行し、宮本さんご夫婦が直接やりとりする必要はほとんどありませんでした。
義父については、この機会にケアマネージャーと相談し、デイサービスの利用回数を増やすとともに、夜間対応のある訪問介護サービスを併用する体制を整えました。介護負担の分散という面でも、この一連の手続きが一つの区切りになりました。
相談者の声

義父の介護でいっぱいいっぱいになっていたときは、ローンのことを考える余裕すらありませんでした。ただ、通帳の数字を見るたびに胸が締め付けられるような感覚はずっとありました。
相談する前は、滞納が始まってからでないと動けないものだと思っていました。でも実際には、滞納が起きる前の段階で相談したほうが選択肢が多いことを初めて知りました。もっと早く来ればよかったと思いましたが、担当の方が「早く来てくれてよかった」と言ってくださったのを聞いて、少し気持ちが楽になりました。
同じ家に住み続けられることが一番ありがたかったです。義父は環境の変化に敏感なので、引越しをしなくて済んだことは、家族全員にとって大きかった。夫も「これでよかった」と言っていました。
今は月々の支払いが少し減ったぶん、介護サービスに費用を回せるようになりました。自分一人で抱えていた時間が長すぎたと思っています。もっと早く誰かに話せばよかった。
担当者のコメント

宮本さんが相談に来られたとき、まず印象的だったのは「うちはまだ大丈夫だと思っていた」というお言葉でした。貯蓄を取り崩しながらローンを支払い続けている状態は、すでに限界に向かいつつある状態です。しかし、滞納という目に見えるサインが出るまで「相談できる段階ではない」と思い込まれている方は少なくありません。
介護を抱えているご家庭では、本人の意向や体調の変化が手続きに影響することがあります。今回のように、義父の生活リズムや認知症の状態を考慮しながら進めた事例では、スケジュール調整と丁寧な説明が特に重要になります。家族それぞれの事情に合わせて柔軟に対応することが、最終的な解決につながります。
介護と住宅ローンの両方で悩んでいる方は、ぜひ早い段階でご相談ください。選択肢は、動き始めるタイミングによって大きく変わります。
